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皮装の本

 俺は目に入った文章を前に、考え込む。


 精神を苛む不快感すら忘れて、何度も文字を目で追ってしまう。


(どう言うことだろ、これ。もしかして今の俺の状況と関係あったりするのか。いかにもな手書きの文章だが……)


 俺はどうしても続きが読みたくなって、ホッパーソードの剣先でそっと本をつつく。


 イドが吸われる感じはしない。


 次のページにめくれないか、剣先をページの隙間に差し込もうとする。


 全く刺さらない。


 あまり力を入れると本自体が動いてしまう。


(なんだこりゃ。さっきは全く開かず、俺のイドを吸ったらここが開いた。てことは……。)


 俺はまず、剣先で本を閉じてみる。

 表紙の下に剣先を滑り込ませ、ゆっくり持ち上げる。


 素直にいうことを聞いて、そのまま表紙は動き、本は閉じられた状態になる。


 次に、先程のページが開くか試す。

 本の小口の方から剣先を表紙のふちに当て、押し上げる。


 素直に開く。


 どうやら先程と同じページだ。


「ふむ。」


 俺は大いに悩むが、結局は好奇心に負けてしまう。

 慎重に再度剣先で本を閉じると、そっと表紙の刻印に指を当てる。

 ゆっくりなぞり始める。


 そしてすぐに、最後までなぞり終わる。

 イドの吸引に備える。


(……何も、起きない?)


 先程と同じことをしたが、一切何も起きない。


 俺は本を拾い上げて、表紙をベタベタと触ってみるが、それでも一向に何も起きない。


「なんだよー。覚悟して損した。」


 思わず軽く叫んでしまう。

 俺はそのまま先程と同じページを開いてみる。

 何度も読んだ内容。


「もし、これが目の前の骸骨さんの手記だっと仮定するなら、突然ここに来てしまった俺はプライムの因子とやらを持ってるってことだよな。それで、この扉ってのは階層移動の扉だよな。確かに襲われた風ではあるが……。」


 俺は独りごとを漏らしながら本の内容をまた読み返す。


「プライムの因子……。心当たりは装備品化のスキルぐらいだけど。ユニークでもないしな。」


 俺はステータスを開いてみる。


 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 氏名 朽木(クチキ) 竜胆(リンドウ)

 年齢 24

 性別 男

 オド 24 

 イド 4 (11)


 装備品 

 ホッパーソード (スキル イド生体変化)

 革のジャケット 

 カニさんミトン (スキル 強制酸化)

 なし

 Gの革靴 (スキル 重力軽減操作)


 スキル 装備品化′

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「イド、結構減ってる。それにステータス開くってことはやっぱりダンジョンの中なんだろうな。」


一度漏れ始めた独りごとが止まらない。


「うん?」


 俺は自身のスキルの所を二度見する。


「あれ、装備品化のスキル表示、文字の後になんかついてる、よね。アポストロフィみたいな……」


 俺はまじまじと自身のスキルを見る。


「……全然気がつかなかった。なんだこれ。もしかして装備品化のスキル、普通のものとは違うのか? 確かに、何となく変だとは思っていたんだよ。見たこともないスキルつきの装備品が出るし。一種類のモンスターの最初の一匹しかスキル発動しないし。……これ、この点みたいなの、プライムって読むのかな?」


 調べようと俺はスマホを取り出して見る。

 圏外だ。


「基地局はない階層か。」


 俺は軽く失望のため息をつく。


「この点がプライムなら、俺が帰ろうとしたから、逃がさないように扉を通ったタイミングでつれて来られたって事だよな。しかし、こんな話、聞いたことないよ。」


 俺はそこまで考え、途方にくれて座り込んでしまった。




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