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戦闘開始

 第一の喇叭ちゃんのモンスターカードがあるのを見て、俺は思わず動揺。

 その動揺が、手元を狂わす。

 ホッパーソードの刃先が窓ガラスにぶつかってしまう。かちっと音を立てて。


 それは常人なら聞き逃してしまうような些細な音。

 しかし、百紫芋の取り巻きは最悪なことに動物だった。当然人間より聴覚が鋭い種なんてものは、沢山あるわけで。

 運の悪いことに、取り巻きのうちの一匹、足を沢山生やした黒豹が、反応してしまう。


 すぐさまその様子に気がつく百紫芋。


喰豹(ポーター)、何事だ」


 ぐるるとうなり声をあげる、黒豹。


「よい、やれっ」と声をあげる百紫芋。


 黒豹の四対ある足のうち、前から二つ目の足が二本、掲げられたかと思えば、その足がにょろにょろと伸びる。

 俺は嫌な予感がして、咄嗟に隠れていた窓の上を離れると、急ぎ上昇する。

 そしてちょうど俺がつい先程まで隠れていた場所目掛けて、黒豹の伸びた足が左右から振るわれる。クロスするようにして、壁ごと窓が破壊される。それは鞭と言うよりも、破壊力抜群の斬撃。伸びた足先も、まるで大太刀のような形に変形している。


 俺は、からくもその攻撃から逃れていたが、壁に空いた大穴越しに見つかってしまう。

 百紫芋と呼ばれていた男と、目が合う。


 すぐさま次の斬撃を放とうとする黒豹。


「待て、喰豹!」と百紫芋の制止。喰豹と呼ばれた黒豹は伸ばし大太刀化した足を構えたまま動きを止める。


「お前が朽木竜胆だな。あの少女の仲間の。わざわざ迎えまで差し向けてやったというのにこの所業、後悔するがよい」と吐き捨てるように言ってくる。


 ──なんだなんだ? 攻撃の手を止めさせたと思ったら恨み言か? 


 俺は冬蜻蛉の居場所を誰何しようかと一瞬迷うも、逆に人質にとられたらと思い、踏み留まる。それよりは無難そうな質問をしてみる。


「確かに俺が朽木だ。そっちこそ白蜘蛛の仲間か?」


「仲間? はっ。あんな出来損ないと一緒にされるとは笑止千万! あんなクリエイティブさの欠片の無いやつと一緒にしないで欲しいものだな」と百紫芋。


 ──仲でも悪いのか?


 と、首をかしげる俺。その間にも、警戒を怠らない。特に攻撃の意思を見せていないもう一匹は要注意だと俺の勘が囁く。


 見た目は愛らしいラットのようだが……。見た目が小さすぎて、この距離だと何を仕掛けてくるか、すらよくわからない怖さがある。


「それならいい。それで……」といいかけた俺に被せるようにして、百紫芋が話す。


「御託は十分だ。もういい、やれ、喰豹!」と指示する百紫芋


 ──ええっ! そっちから話しかけてきたんだろっ! しかももういいのかよっ。


 と、俺はあまりの理不尽さに呆れながら、黒豹の振るわれた足先の大太刀を、ホッパーソードで受ける。


 重い斬撃。


 空中という踏ん張りの利かない場所もあり、勢いよく吹き飛ばされる。


「放て、喰豹!」とそこへ聞こえてくる百紫芋の叫び。


 その声に合わせ、黒豹の三対目の両足もまた変化する。

 まるで銃口のように穴があく、足先。

 そこから放たれる、何か。


 俺は、半ば無意識でホッパーソードを振るう。加速する意識のなかで、微かにとられたそれは、白い破片のよう。

 俺の振るったホッパーソードに吸い込まれるように衝突する白い破片。

 ガキンという、鈍い音。

 手のひらに伝わる衝撃。それも先程の斬撃を上回るそれ。


 連続して放たれる白い破片。

 俺は痺れそうな手を、強引に動かし、ホッパーソードを振るい続ける。

 何度も。何度も。響く鈍い音。


 加速した思考でも完全に捉えきれないそれ。徐々に増えるミス。

 この度に、かすり傷が一つ、また一つと俺の体に刻まれていく。


 ──このままだと、じり貧だ。しかし、仕込んだ切り札はまだ使えないぞ。どうしよっ!


 解決策も浮かばず、俺はひたすら飛んでくる白い破片を処理し続けた。





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