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サイド 冬蜻蛉5

 僕は力の限り、駆ける。


 姿勢を前に倒し、右足の足裏が大地を蹴り離す瞬間、全身へ重力軽減操作を発動。

 蹴り出す力を全て前進するための推進力へ変換。

 体が前方へロケットのように飛び出す。


 体を支えるための力を極限まで削ることで、僕の脚力のほとんどを前へ進むために使う。


 すぐさま、重力軽減操作を限定解除。

 体にくっつきそうなぐらいまで折り畳んでいた左足が大地に接するまで体が大地に近づいた瞬間。左足の足裏が大地を捉える。


 後は、ひたすらその繰り返し。

 半ば無意識で繰り返す重力軽減操作と、僕の体捌きがシンクロする。


 ──もっと。もっと。もっと、無駄が省ける。


 脳裏に浮かぶのは、先程邂逅した第一の喇叭ちゃんと名乗る存在。

 あまりに異質で。

 あまりに危険で。


 ──あの朽木が、あんな顔をするなんて。


 第一の喇叭ちゃんと名乗る存在が、無言は承認だーとか訳のわからない事を言って飛び立って行った後、朽木の顔に浮かんだ表情を思い出す。


 ──それでも、朽木に無事、小太刀を渡せた。何も出来なかったホームセンターの時とは違うんだ。役に立てたはず。……たぶん。


 その時、背後で閃光が走る。

 僕は市街地を抜け、幹線道路をひた走っている。


 ちらっと背後を振りかえる。見えたのは立ち上るいくつもの炎の柱。

 それらはぐるぐると竜巻のように渦巻いている。


 僕はとっさに道沿いの建物の影へ飛び込むと、地面にうずくまる。

 ギリギリだった。


 僕がいた場所を含め、衝撃波のようなものが通り過ぎていく。

 アスファルトの大地を砕き、建物を破壊し、粉砕された瓦礫が飛び交う。


 僕の隠れた建物も、二階部分があっという間に吹き飛ばされ。僕の隠れた壁もあわや倒壊寸前の有り様。


 僕はいっそう縮こまる。


 数時間かはたまた数瞬か。

 気がつけば、静寂が訪れていた。


 僕は自分の体に異常がないか確認すると、そっと立ち上がる。

 もうもうと舞い上がる砂ぼこり。

 破砕された瓦礫によるものだろう。


 ぱんぱんとジャンパーに着いた砂ぼこりを払う。

 まるでその音が呼び込んだかのように。


 急に目の前を閃光が降りてくる。

 僕はとっさに顔を腕で庇う。

 その隙間から覗く目の前の空間に、第一の喇叭ちゃんと名乗る例の存在がゆっくりと降り立った。


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