お土産
俺は、抱えたスーツケースを持ち直すと、落とさないように気を付けながら皆の待つネカフェへと降下していく。
市街地への探索は成功と失敗が半々、といった結果となった。
意気込んで探索をしたのだが、モンスターは全く見つからなかった。素人目でみた感じでは、痕跡らしきものもよくわからなかった。
動物タイプや、ゴブリンのようなモンスターであれば何らかの生物的な痕跡があるかと思ったのだが。
それらしい食事の跡や、巣なども見つけることが出来ず。
しかも、ここら辺を探索し、帰ってこなかったぷにっと達の残骸も見つけることが出来なかったのだ。
つまり、全くの手がかり無し。……失敗。
──あの市街地に何かあるのは間違いない、と思うんだけどな。
成功はもちろん、いま抱えているスーツケース。
市街地の駅ビルの中の鞄屋でお借りしたものだ。
その駅ビルは、最初に降下した所から十数分歩いた所にあった。
路上でモンスターを探して歩くうちに、たまたま目に入って中へと侵入したのだが、ここは大当たりだった。
鞄屋の他にもテナントがかなり充実していたのだ。さらには、荒らされた形跡も少なかった。そのおかげで、欠けていたうちの、かなりの物資を手に入れることが出来た。
特にその駅ビルにベビー用品と子供服のお店があったのは幸運だった。問題は唯一、サイズを聞き忘れていたこと。
空のスーツケースを横にして、俺はしばし固まってしまった。
目の前の棚には、十センチ単位でサイズ違いの子供服がずらりと並び。
うんうん唸りながら見回して、ようやく見つけた案内。喜び勇んで読んでみたら、それは年齢とサイズの対応表だった。
残念なことに、子供達の年齢も、わからず。
今ばかりはスマホが繋がらないのが、恨めしくて仕方なかった。
仕方ないので、目算でなんとなくのものを、スーツケースに詰め込めるだけ詰め込んでいく。
多分、大きい分には何とかなるだろう、と。
それに、ぷにっと達の失踪の謎が解けない限りはまた来ることになるだろうという確信もあった。
その時は必ず事前にサイズを確認しておこうと、心に誓って。
そして同じ理由で今回は靴を探すのは、パスしておいた。靴は当然のことながら、大きい分にも困るので。
その後、さらに駅ビルを上の階に進むと、百円ショップも入っていた。子供達が使うなら割れない物の方が良いだろうと、そこで食器を漁り。
そうしてすっかりパンパンになったスーツケース。その段階で、探索を諦め帰ることにした。
そこで、一つの事実が発覚する。
重いスーツケースを抱えていると、非常に飛びにくいのだ。
しかし、その苦労も報われたといえる。
目の前では子供達が我先に、俺の持ち帰ったスーツケースに群がり、服や食器を手にしている。どの子供達も生き生きしていて、ホームセンターではじめて見たときよりもかなり元気を感じられる。
きゃっきやっ、きゃっきやっと賑やかで、騒がしいくらいだ。
「そこ、喧嘩しないのっ!」体調が良いのか、起きてきた江奈さんが、服の取り合いをしている子供達を注意している。
──こういう風に喜ばれるのって、初めてかも。
そんなことを思いながら、子供達の様子をぼーと眺める俺。
「朽木、服ありがとう」とそこへ、新品のジャンパーを手にした冬蜻蛉が話しかけてきた。