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バリケードの先には

 俺は手早くバリケードを調べる。


 乱雑に積み上げられただけ、と思いきや。よく見ると、内部の方に細い金属が見える。どうやら、チェーンで様々な家具等が固定され、バリケードが作られているようだ。


「これは、厄介だな……。うん? あれは」


 俺はバリケードの下の方を見ようと屈みこむ。


「ここに、小さな穴があるな。奥まで続いてそうだ。この大きさ……。ゴブリンサイズか、これは」


 ざっと調べた結果に、思わず顔をしかめてしまう。


 ──どうする。酸で溶かせば通るのは容易いけど、かなり物音がしそうだ。慎重にチェーンを切って、重力軽減操作をかけて一つ一つどかしていけば静かにできそうだけど、時間が掛かりすぎる。スルーして下のフロアへ行くか。いや、見張りまで居たんだ。このフロアは確認しておいた方が良い。よしっ。


 俺はカニさんミトンを構える。


 イド・エキスカベータを形成。


 限界までイドを汲み出す。俺の体に満ち、すぐに溢れそうになるイド。俺は気にせず、酸の泡の生成にイドを注ぎ込む。


 一つ二つ。そして一気に数を増していく、酸の泡。


 掲げた俺の左手のカニさんミトンの周囲から。そして今いる踊り場を埋め尽くさんばかりに、泡を展開させていく。


 黒く染まった俺の瞳からポタポタと黒いものが垂れ始める。


 ──これが、限界か……


 俺は乱暴に右手の二の腕で顔を拭うと、呟く。


「穿て」


 限界までその数を増やした酸の泡が、バリケードへと殺到する。

 泡が触れる端から、バリケードを作っていた物が溶け落ちていく。

 金属とゴム、木材の溶ける匂いが密閉空間に近い踊り場に充満する。


 辺りに響く、ジュウッという音。そして、溶け残った破片が床に叩きつけられ、騒音を奏でる。


「やっぱり、うるさくなるよね」


 壁の一部まで溶かした大量の酸の泡は、その役割を無事に果たす。目の前のバリケードには、大穴が開けていた。


 ──ここからは時間との勝負だろう、な。


 俺は覚悟を決めると飛行スキルを発動。一気に四階フロアへと飛び込む。


 そこは屋上に引き続き、駐車場のようだ。

 低い天井にぶつからないように気を付けながら、四階、駐車場フロアを飛ぶ。


 ゴブリンの気配は、ない。

 すぐに駐車場に、違和感を感じる


 ──車が、端に寄せられている?


 明らかに駐車用のラインを無視して、自動車が端に密集して置かれている。その代わり、フロアの中央が広くスペースが作られているようだ。

 俺は飛行スキルを切り、中央スペースに隣接して置かれた自動車の上へと、降り立つ。

 身を低くして中央スペースを観察する。


 そこにあるのは、数台のバン。そしてドラム缶に、椅子らしき家具。さらには鍋や食器。

 明らかに煮炊きしたような跡も見える。


 その時だった。

 一台のバンのドアが開く。

 開いたドアからそっと顔を覗かせる、何か。


 それは、不安そうな表情をした、人間の子供のものだった。



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