鍬のスキル検証
さくっと大地へ食い込む妖精の鍬。
土に突き立てられた鍬の刃の周りに生えていた雑草の数が、ぶわっと増える。
「おおっ、こりゃすごいかも。というか、面白い。倍加ってこういう事ね」
俺は調子に乗って、もう一度鍬を振り上げ、同じところに振り下ろす。
さくっ。
何も起きない。
「あれ? なんで──」
再び鍬を振り上げ、今度は別の所に振り下ろす。今度はよーく目を凝らしておく。
大地へ食い込む鍬。その刃を中心にうっすらとした光の魔法陣が地面に広がっていく。
「魔法陣、出てたんだ。薄くて見落としてた」
再び、雑草が増えた。
どうやら広がった魔法陣の中にあるものが増えている様子。
魔法陣の大きさは直径数十センチぐらい。
再び同じところに振り下ろす。再び魔法陣も展開される。しかし、草は増えない。
「なるほど、魔法陣は展開されているけど草が増えないのか。一度増えた物はダメって事かな。これ、草以外もいけるのか?」
好奇心にかられ、俺はネカフェから残っていた缶詰を持ってくる。
地面におく。今度は見易いように草のない場所を選ぶ。
缶詰に当てないよう気を付けながら、魔法陣の範囲に入るよう、狙いを定めて鍬を振り下ろす。
ザクッ
「あれー?」
食い込んだ刃を中心に展開された魔法陣は缶詰を無事に範囲に入れていた。しかし、増えない缶詰。なのに、缶詰の隣にあった小石が二つに増えていた。
「どういうことだ? これ」
俺は増えた小石に手を伸ばす。少し埋まっていた小石を二つとも軽く掘り起こし取り出す。
「全く一緒の形しているな。土の付き方同じだ。土……。あっ」
俺は持っていた妖精の鍬で軽く土を掘り起こし、缶詰を埋める。
その際にも魔法陣が展開されているのが何故か面白くて、笑えてくる。
まずは缶詰に完全に土を被せて、外から見えないように。
そして、鍬を振り下ろす。
「どうなったかな~」土を手で払う。
「──増えてない、な。よしっ」
俺はそのまま再び鍬を振り下ろす。展開される魔法陣。
土に半ば埋もれた缶詰が、二つになる。
「想像通りだ! 土に埋もれていて、かつ地面から飛び出ていないといけないのか。どうやら生えている物とか、そういう属性が対象みたいだ。これって生き物も行けるのか……」
俺は好奇心に駆られて、自分の足に土をかけようか、悩む。
「いやいやいや。とりあえず落ち着け、自分。──モンスターを捕まえたら試してみよう」と、俺は何とか自制心を取り戻す。
「ネカフェにあるもので、必要なもの、増やしておくか」俺はそう呟くと、ネカフェに向かった。