偵察
一夜明け、俺は今、飛行スキルを駆使して、空からネカフェ周辺の偵察に来ている。
空から眺める周囲の地形は、まっ平らと言っていいほどで、大きな山などは見えない。
ネカフェの目の前を通る幹線道路沿いに、住宅や各種、商業施設はあれど、他は空き地や畑が多い。林になっているような部分も点在している。
「やっぱり、どこかの地方都市かな……」
そして、やはり人の気配がない。
かわりに、モンスターの姿が度々目に入ってくる。
特に、ゴブリンと思われる存在がここら辺一帯では多く目につく。四、五体でまとまって移動したり、たむろしているグループが点在している。
どうやら狩りをしているようだ。
たまたま、狩りの途中と思われるグループに行き当たり、こっそりと空から観察させてもらった。獲物は、何と他のモンスター。
それもここに来るまで見たことのないモンスターで、コボルトとワーウルフの中間のような見た目をしていた。俺はとりあえずワーボルトと呼ぶことにする。
どうやら一匹でゴミあさりをしていたワーボルト。体格はゴブリンの五割増し。動きも俊敏なワーボルトだが、ゴブリン達はそれを数の暴力を活かして巧みに狩っていた。昨日戦った時も思ったがゴブリン達は相当知能が高そうだ。
そうして偵察を続け、幹線道路沿いに大きなホームセンターが見えてきた。俺は何となくゴブリン達の装備や服がそのホームセンターが出所の気がして。嫌な予感に、偵察をやめ、ネカフェに戻ることにする。
──もう偵察に出て小一時間は経ったか。ネカフェに残してきた江奈のことも気になるしな。
そして、ネカフェに向かって飛びながら意識は自然と昨晩の江奈さんとの会話に意識が向く。
「江奈さん、まるでアクアみたいな口調だったよな……。コアに感じたアクアの残滓がもしかして……。それに、この世界。ここってやっぱり異世界なのかな」と道路に放置された車両と、その上にいるゴブリンを見下ろしながら俺は呟く。
その時だった。何かチリチリした焦燥感に似たものが脳裏を掠める。俺は急ぎ、違和感の正体を確かめようと気を引き締める。
──物思いに耽って飛んでいたのが災いしたっ
「ゴブリンの密度が増しているっ!?」俺は空から全体を俯瞰しつつ思わず悪態を洩らす。
気をつけていさえすればすぐに気がつくはずの事。ネカフェに近づくにつれ、ゴブリン達の数が増えていっていた。