表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

102/174

ブラフ

 飛び退いた俺の目の前を通りすぎる、液体。

 漂う、鼻をつく異臭。


 その臭いに、体が強張る。

 見ると、地面に転がっているのは、蓋のあいたペットボトル。物陰からゴブリンの一体が投げたのだろうか。

 中の液体が、ぴちゃっぴちゃっと、あいた口から漏れだしている。


「嘘だろっ! おいっ」思わず漏れる悪態。視界の端にはゴブリン達が座っていた場所にいまだ火のついたままの焚き火。


 俺はとっさに耳を抑えながら身を伏せる。


 ……何も起きない。


「──騙されたっ!?」


 ガバッと身を起こした俺の、すぐそばまで近づいていたゴブリン達。

 手にした工具を振り上げ、こちらを見下ろす醜悪な面構え。

 俺は思いっきり横へ転がりながら、振り下ろされてくる工具の初撃をかわす。

 同時に飛行スキルを発動。

 前方に飛びながら、手にしたホッパーソードを、撫で切るようにして一番近くにいたゴブリンの腹部にそわせる。

 鍬で俺の頭を耕そうとしていたそのゴブリンの腹へ吸い込まれていくホッパーソード。

 目の前に迫るガソリンメーターに、反転して着地。


 残ったゴブリン達へ視線を向ける。

 鍬を持っていたゴブリンが黒い煙に変化している。


 それを驚いたように見ている鎌持ちとノコギリ持ちのゴブリン。

 その隙に、射線の取れるノコギリ持ちへ、酸の泡を発射。

 同時に飛行スキル全開で、地を這うほど低空を、ゴブリンの方へ進む。

 一瞬で、目の前にはきらめくノコギリの刃。酸の泡が鎌持ちゴブリンの頭を溶かすのを尻目に、地面に軽くタッチ。反動で、軌道をそらす。振り下ろされてくるノコギリをかわす。

 そのまま上昇。

 ホッパーソードをノコギリ持ちゴブリンの首に引っ掛ける。

 首を、引きちぎりようにして、切り裂く。


 上空で反転。


「最初のバールのゴブリンは……」


 足を失ったゴブリンが両手をつき、残った片足で這うように江奈の方へ進んでいた。


「っ!」思わずカニさんミトンから酸の泡を発射。最後に残ったゴブリンの頭も溶け落ちる。


 俺は慎重に地面に転がるペットボトルへと近づく。そっとつまみ上げ臭いを嗅ぐ。


「これは、水かっ!」


 最初に感じたガソリンの臭いはどうやら別に、少量撒いた物のようだ。


 ──臭いで勘違いさせて、水入りのペットボトルを投げたのか。爆発させたら自分達にも被害が及ぶことを理解し、さらに人間の心理にまで考慮した策を使ってきた?


 俺はおののきながらゴブリン達の死骸へ近づく。完全に息の根は止まっている。

 俺は、今は考えても仕方ないかと、気分を強引に切り替える。


 装備品化スキルが発動した鍬持ちゴブリンの脇へ。

 そこにはゴブリンの来ていた服と持っていた鍬。さらに何故かもう一つ、別の鍬が落ちていた。


「この鍬が装備品? ふーん。とりあえず江奈さんの方へ行くかっ」


 俺は新しい装備品らしき鍬を掴むと、そのまま江奈さんの方へと急いだ。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ