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残りの時間
ワタシはコイツの事を噛むことをやめた。
ワタシのせいで短くなったコイツの命が、少しでも嬉しいものになるように、ワタシはコイツの望むように動くことを頑張った。
コイツが手を伸ばして来たら、近寄って体を撫でさせた。
コイツが手をワタシの口許に持ってきたら、必死に舐めた。
コイツがワタシを抱き上げたら、必死にワタシは体を擦りつけて必死にコイツを舐め続けた。
片時も離れないようにした。
獲物は大きい奴らがコイツの為に持ってきた物の、余った部分を食べた。正直全く足りなかったが、それよりもワタシのせいで短くなったコイツの命を、少しでも嬉しいものになるように頑張った。
ドンドン空が明るい時が短くなってきて、それと一緒に寒くなってきた。
コイツと会う前は、獲物を見つけて寒いのに備えてたけど、今はそんな事よりコイツの事が大切だ。
ワタシはコイツの残りの命が嬉しいものになるように頑張った。
コイツとワタシは違うけど、残されたコイツとの時間を、ワタシはコイツの為に頑張った。