コイツ
ワタシは山に住むウサギ。名前は無い。
いつものように、獲物を捜していると、その日はいつもと違うことが起きた。
ワタシが山を駆け獲物を捜していると、大きい奴らが一杯来た。
いつもはワタシを見逃す癖に、今回はワタシを捕まえるつもりらしい。
ワタシとよく似た奴らがこの大きい奴らに連れられて行ったあと、連れられて行った奴らをそのあと見た事はなかった。
どうやらワタシの番が回ってきたらしい。
当然だがワタシは必死に捕まらないように逃げ回った。
獲物の1つである草を掻き分け、ねぐらの内の1つである穴に逃げ込み、大きい奴らより大きい木とかいうのを使って、必死に逃げ回った。
でも、ワタシのそんな抵抗は意味がないかのように、大きい奴らはワタシの体を掴んで、耳だけ握ってワタシを宙ぶらりんにした。
痛い。ワタシの体を支える耳元が痛い。
ワタシはワタシの体に揺られて痛みを覚えながら、大きい奴らに連れられて何処かへ連れていかれた。
連れていかれた先に居たのは、ワタシを捕まえた大きい奴らの仲間の所だった。どうやらワタシは、この大きい奴に食われる為に連れて来られたらしい。
ワタシは自分の最期を自覚した。
しかし、不思議な事が起こった。
大きい奴らはワタシを食べるどころか、ワタシを目の前のコイツの横に置くと、また何処かへと行った。
訳がわからない。
ワタシの身に何が起きたのかわからず戸惑っていると、コイツはワタシに話し掛けて来た。
「ウサギさん、触っても良いかい?」
一瞬、"ウサギさん"とはなんなのかわからなかった。
しかし、ワタシがコイツと同じ大きい奴らから"ウサギ"と呼ばれていた事を思い出した。
そして周りを見てみると、コイツの他に生きているのはワタシしか居ない事がわかった。
どうやら"ウサギさん"とはワタシの事らしい。
ワタシは触れられるのがあまり好きではない。だから同族の雄にも触らせた事はない。
しかし此処でコイツに逆らえば、食われるかもしれない。
ワタシはコイツの頭の横に移動して、ワタシと触れていられる状態にしてやった。
手を伸ばして触ろうとしてきたが、それは手で抑えた。
これがワタシとコイツの出会いだった。