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戸惑う侯爵令嬢。




ガチャリ



びくっ。

ドアの開く音がして思わず身体を震わせて身構える。自分はこれからどうなるのだろう。

今、入ってきた人物に何をされるのだろう。ベッドの上にいたから、純潔を奪われる事にだけ意識がいっていたが暴力を振るわれるかも知れない。不安と恐怖でビクビクと震える体を守るようにぎゅっと抱き締めた。



「...ルーナ、起きましたか?」



えっ?...まさか。

あまりにも聞き覚えがありすぎる低く耳触りのいい声が聞こえ咄嗟に顔を上げてしまった。部屋は電気が点いておらず体の輪郭がぼんやりと見えた。顔は見えないけれど、スラッと伸びた手足に程よく筋肉がついた引き締まった体。いや、見なくても声を聞けば誰だか分かってしまった。


「お、王太子、殿下......?」

えっ?ちょっっ、はっ?となっている内心の動揺を隠せず目がキョロキョロとさまよって何度か瞬きした後に私の名前を呼んだ、ルーカス・オールナイト、つまり私の元婚約者に焦点を合わせた。


「ぁ、あ、あの、えっと、どうしてここに、いらっしゃるんですか?」


「ふふ、どうしても何もここは私の部屋だからですよ?」


「え、えっ、殿下の部屋?え?あれ?...その、私は貴族籍を剥奪されて、だから、...」

何がなにやら訳が分からず言いたい言葉は端から逃げてしまう。


「それより、名前」


「名前?ですか?」


「呼んでくれないのですか?今さっき、私の名前呼んでいましたよね?」


「えっ、き、聞いていらしたんですか?」


「ええ。最初からという訳では無いのですが、貴方が、私に、助けを求めたのは聞いてしまいました。」


駄目でしたか?と小首を傾げる殿下に、私は口をパクパクとさせ何も言えずにいる。そんな私の顔をじっと見たあと、殿下はこちらに向けて歩いて来た。

そして、ベッドの縁に手をやると解除と、唱えた。そうするとふんわりと今さっき私が割ろうと四苦八苦していた防御壁は消えていった。

ぼんやりとその様子を見ていると、とても綺麗な指が私の顎をそっと持ち上げた。


「あぁ、目が腫れています。後で冷やすものを持ってくるのできちんと冷やしてくださいね。」

と、いい。私に顔を近づけてきた。思わず、目をギュッと瞑ると、右目と左目の瞼になんだかふんわりとした感触がきて、驚いて目をカッと開いた。

開くと殿下の黒曜石の様な綺麗な瞳と目が合って、優しく微笑まれた。

「貴方を傷つけるつもりはなかったのですが、しっかり話せず申し訳ありません。」


「えっと、わ、わたくしと、殿下は、」


「ルーナ、殿下ではなくルーカスと呼んでください。」


「えっ、ぁ、はい。その私とル、ルーカス様は婚約破棄、したのですよ、ね?」


「...、そうですね。話を、しましょうか。ですが、まず、謝らせて下さい。」


「貴方を傷つけてしまい申し訳ありません。」と言って頭を下げた。

「ぁ、あの、でん、ルーカス様。顔を上げてください!その、何か理由があったのですよね?」


ルーカス様はそうですね。と言って頭を上げてから魔法で明かりを灯して失礼しますと言いベッドの上の私の隣に座ると説明してくれた。




かくかくしかじか



.........なるほど、要約するとヒロインの、ルーカス様に近付いていたリリアーナ・アクトン伯爵令嬢が他国と繋がっておりそれに危機感を覚えた陛下が、伯爵令嬢の罪を明らかにする為に動いていた。そして他国の兵やら暗殺者やらから未来の王妃(私)を守るために一時的な処置としてこのような事をした、らしい。


ですので、あの場には私と陛下とルーナとフィッツロイ侯爵、それにあの女しかいなかったでしょう?と続けたルーカス様に


あの場に私以外に女の人なんて居たか?と思い

「...あの女?」と問えば。


「アクトン伯爵令嬢の事です。」

と仰って、ニッコリ嗤った。

違う、聞きたいのはそこじゃない。てゆうか話的にそうだろうなとは思っていたけどリリアーナ様と殿下は恋仲なのでは無かったのか...?てゆうか、どこに居たの?全く気付かなかったわと、つらつら考えていたいたが

そう言えばと思い尋ねる

「つまり、私はその…」


「安心してください。貴方はルーナ・フィッツロイ侯爵令嬢、ですよ。」


その言葉を聞いて無意識に詰めていた息をはいた。


......良かった。家族に捨てられたわけではなかったのだとホッとする。


「...良、かった、です。もう、ひ、1人になった、のかと、思っていた...ので」

今さっきまで悲しみと不安、それに絶望感から出ていた涙は殿下、ルーカス様の登場の驚きで止まっていたけれど今度は安堵から、涙腺が緩みぽろぽろと涙が零れ落ちる。


ルーカス様は私の顔に手をそっと近付けると優しく、丁寧に私の目から零れ落ちる涙を拭ってくれた。


でも、拭われる端から出てくる涙は自分の意志では止められず、それでも優しく拭ってくれる手になんとも言えない感情が湧いてきて大号泣してしまった。


泣きじゃくる私をルーカス様は手を止めそっと抱き締めて、もう、大丈夫ですよ。と囁いて背中を撫でてくれた。

もう、訳の分からなくなっていた私はルーカス様に縋り、抱きついて声を上げて泣いた。歯止めがきかなくなった涙がルーカス様のシャツを濡らしていく



泣くに泣いて、少し落ち着いてきた気持ちと涙。そして、はた、と気付く。

どうしよう、この状況...。

と、ちょっと冷静になった頭で考える。そうしている間もルーカス様の手は私の背中優しく撫でて落ち着かせようとしてくれていた。申し訳なく感じるも心地良い温かさとルーカス様の優しさにもう少しだけこのままでいよう、そうしよう。と考える、そう、これは、ご褒美いや、何も知らされずにいた私への贖罪的なやつなのだ、と自分の中で勝手に完結し納得して、暫く堪能しようとルーカス様の胸に顔を擦り付けた。

...ふへへ。

いい匂いする...。



「ルーナ?」

びくっ。

「ひゃい、すみません!」


自分の下心がバレたのかと焦り顔をバッと離して思わず謝る。

そんな私をくすくす愛しいものを見るような目で見ながら笑ったルーカス様に恥ずかしくなり顔がかぁーと赤くなる。

その様子を見て、何故か私の頬に手を添える殿下。

きょとん顔のわたし。


ルーカス様の綺麗な顔に見惚れて、ぼへーとしていると顔が近づいてきて唇にチュッとされた。





えっ?






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