ep.XXX「静謐なデッドエンド」
異世界転生というものをご存知だろうか。
それは文字通り、死んでから異世界に転生すること。
例えば、それはただの天命だったりする。
例えば、それはただの悪運だったりする。
例えば、それは神様のイタズラだったりする。
例えば、それは神様のうっかりミスだったりする。
ともあれ、その異世界転生というものには、必ず「死」という経緯が含まれる。どんな原因であれ、必ず「死」を伴わなければそれは発生しない。なにせ、転生とは生まれ変わること。生きたまま生まれ変わることなどできないからだ。
……そうゆうことを、授業中に考えていたことをふと思い出した。ただ、異世界という存在は宇宙人の存在のように眉唾ものだ。或いは、天国や地獄のようなある種の幻想じみた概念。ないとは言えない。が、あるとも言い切れない。それが異世界というものだと、そう考えていた。
────────ただ、
もしも、自分が、どうしようもなく避けられない死に直面した時、縋り付くのは天国でも地獄でもなく、異世界へと転生することだろうなと思った。
生きているうちに何も成せなかったのだとしたら、せめて異世界でくらい何か成し遂げてから死にたいと、そう思ったからだ。まぁ、生きてきられるのが一番なのだが。
そうゆうわけで、天羽 樹は絶命する。
覚えているのは熱のような痛み、凍えるような冷たい寒気、過呼吸で体の中から失われていく酸素と、薄れていく意識。そして、真っ赤な血。そこまできて、ようやく頭が働いた。
『───────俺、なんで死ぬんだっけ?』
やがてそのまま、意識と命を喪った。