表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ヤマノニジ

作者: 小織 真水.

この世界にあなたの場所ありますか?

僕は最近サイトに挙がっているページを良く開く。ある都市伝説のサイトで、近くの山に関する話題だった。

『○県の○○市になる山に関する都市伝説』

珍しく詳細が書いてあったし、近くの山に関することだったから少し気になって開いたら、『人を喰らう山』『二度と戻ってこれない山』『黄泉へと通じる山』『虹ではない虹が架かる』とか色々な感じで語られている。

虹じゃない虹ってなんだよ、またでっち上げだろ。

そんなことを思いながらも気になって見てしまっていた。


周辺を山に囲まれているこの町には登山客があり、紅葉の季節にはかなりの人で賑わうそうで、季節が変わっていくと緑、赤、茶、白など変化を楽しむために一年に何回も来る客も少なくない。らしい。


僕にとって外の世界は別の世界であり、住みにくい世界であった。僕は僕の世界であった外の世界に背を向けて、内の世界の住人として何をするでもなくダラダラと生きている。


「外に出るのはいつぶりだろう…」


サイト内の会話の中に特に気になったことがあった。それは、『存在が消える』。今までいた人間がある日突然姿を消し、いつの間にか関わった全ての人間の記憶から消えるのだと言う。

それならなぜ、存在が消える、なんて言えるのだろう。存在が消えたなら消えたことすらわからないじゃないか、これは嘘だ。

でも、惹かれてしまう。


「行ってきます。そして、さよなら。」


その山は途中までは舗装されていて、町を見下ろせるくらいの高さまで登ると景色もそれなりに良いらしい。中腹に展望台らしきものがあり、そこから先は舗装されていないが獣道は続いているみたいだ。でも、先に進んでも大きな岩があり、それ以上は進めないという。

帰ってこれない、というのもただの噂でしかないのだろう。仮に帰って来れなくても存在が消えてしまったのなら、知ることの出来ないただの噂。

でも、噂話を信じはしないけど、実際に確かめて見たいという気持ちはある。


「この山を登って帰れなくなって、存在ごと消えてしまえるなら、それはそれでいい。この世界から消えてしまいたい。」


もう一つ、この山について気になる噂があった。

『成長、退化する山』

この話題についての会話を見ていたら、「成長する、」「高さが変わっている」「高くなったり、低くなったり」しているのだという。

高くなることはあっても低くなることはあるのだろうか…地震や大雨などの自然災害により削れたり、崩れたりはあるだろうけど、今までそんなに大規模な自然災害は発生していないのだから、あり得ないことだろうと思う。


噂は噂であり、事実ではない。

それがわかっていなかったから僕は、

今の僕はここにいる。


山に囲まれたこの町は田舎と呼べる。

夜中の外は街灯も少なく暗闇が広がっていて、雲がなければ星も綺麗に見える。


星が見えない夜の町はとても暗い。

死んだような建物、荒廃しきった畑、全てが枯れ落ちた山…、盲目と化したかのような目。

僕の目に映るのは真っ暗な世界。


僕はひたすら歩く。

ひたすら歩き、登る。

目的の場所だけを考えて。


ふと顔を上げると町が見える。

真っ暗ではなかった。

下から見る世界と上から見る世界の違いに僕は少し感動してしまった。


これが僕が生まれた町、育った町、生きていた町。

そして、苦しめられた町。

でも、もう後悔はない。

やりたいことはやってきたつもりでいるし、戻るつもりももうない。


この世界に僕はもういない。


この先、もう道はない。

あるのは大きな壁。

触れれば飲み込まれてしまいそうな程の異様な壁。


「この先にあるものは、天国か地獄か、それとも…」


さよなら。

声に出さず言い、壁に触れる。




その日の早朝。

彼の存在はこの世から消え去り、誰にも気づかれないまま世界は進んでいく。


死んでいた噂の山が息を吹き返した事にも気づかずに…。

読んでいただきありがとうございます。

面白くはないと思いますが、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ