表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/161

第86話

「今日は、私のために、東京までお付き合いして頂いて有難うございました。でも、結果が無駄になって、本当にすみませんでした」

「今日からは、有難うや、すみませんは、云わないでください。なぜなら、僕が慎吾くん捜しを申し出たんですからね」

「分かりました。これからは、祐二さんのご好意を有り難くお受けします。あっ、また云ってしまったわ、御免なさい」

彩世は何が何だか分からなくなっていた。

「でも、お礼を言われるのは、いい気分ですね」

「まあー」

彩世は呆れていた。

「良き明日を信じて、待ちましょう」

「そうしますわ」

話している間に、東京駅に着いていた。

祐二も、彩世と初めての遠出、その間、恋人同士のように、肩を寄せ合った幸福な気持ちは、一生、忘れることが出来ない喜びだった。

のぞみ号に乗った彩世と祐二は、電車が永遠に停まらないで欲しいと思っていた。

「間もなく、京都駅です」

車内放送が、その夢を破った。

「あっと云う間に着きましたね」

祐二が名残惜しそうに云った。

「ええ」

彩世は別れが悲しくて、言葉少なく答えた。

「疲れたでしょう。車でお送りますからね」

「嬉しいわ」

やがて、彩世を乗せた祐二の車が、彩世のマンション前に書いた。

「今日は、ご苦労さんでした。また、情報が届いたら、一緒に行きましょう」

「お願いします」

淋しそう頷いた彩世は車を降りた。

「さよなら!」

手を振る彩世の顔が悲しみに覆われていた。

今日の祐二は、彩世と慎吾が出合っても、自分は関わりの無い第三者だから、何の動揺もなく、二人の出会いを冷静に見ていられると思っていたが、彩世の感極まった様子を見たときの失望感と哀しみは祐二の想像や覚悟を遥かに越えていた。

そのため、今後は立ち会うのを止そうと考えたが、もし、立会を断れば、即、彩世との別れが待っていると思うと、祐二に断るという選択肢は無かった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ