表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/161

第81話 別れを胸に

祐二と彩世が自由に電話しあい、逢おうと思えば、何時でも逢えるようになると、皮肉なもので、十一月早々、東京の友人から、慎吾の情報を得たので、彩世に電話した。

「はい、彩世です」

待っていたような彩世の返事。

「慎吾くんらしき学生の消息がわかりましたよ」

「それは、本当ですか」

祐二への愛が高まったとはいえ、慎吾の消息が分かったと聞かされると、会いたいとの思いで胸が締め付けられる。

「僕が受けた感じから、間違いないと思います。でも、期待はしないでくださいよ」

「はい」

「住所は、東京の渋谷区、松濤町のマンションです。行ける日を教えてください」

「明後日の日曜日、でも、祐二さんに予定がありましたら、次の日曜日でもいいです」

「僕には予定などないです。じゃあ、明後日、尋ねて行きましょう」

冷静を装い、事務的に彩世と逢う場所と時刻を決め電話を切ったが、祐二の心の中は、

(もし、慎吾くん、否、慎吾くんに間違いない。その慎吾くんに彩世さんが会ったときが、僕と彩世さんの別れの時だ)

彩世が慎吾を捜した時、必ず祐二は傍にいる。そして、不要の存在になるのだ。

その時、祐二はどうするかは決めている、その場から黙って姿を消す。


約束の日曜日午前八時、京都の改札口。

祐二が改札口へ行くと、彩世が白いTシャツの上に黒のカーデガン、紺のジーンズ姿で立っていった。

黒のカーデガンを脱ぎ、ヘヤーバンドを付ければ、高梁川で写生した時の姿になる。

彩世がこの服装を選んだのは、慎吾に分かりやすいためと慎吾が心変わりしていたら、その時、別れるのではなく、新見駅で慎吾を見送った時を別れたことにし、新しい人生を歩こうと考えたのだ。無論、祐二とである。

彩世の決心を知らない祐二は、彩世が目立たない服装をして来たのは、世間の目を気にしているんだと考え、出来るだけ、ただの、友人として振る舞うことにした。

「お早よう、もう、来ていたんですか」

「はい、お待ちしていました」

「昨夜は、よく眠れましたか」

「はい」

彩世は、慎吾に会えるときめきと、祐二を失うかもしれないという不安で、少しか眠れなかった。

「それは良かった」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ