表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/161

第68話

「引っ越したといっても、歩いて二分ぼどだから、淋しくないわ」

「そうか、心配していたが、案外元気そうで安心したよ」

「祐二さんが元気つけてくださるから、心配しないでね」

高梁川以来、祐二に逢っていないのに、彩世は父親を心配させないために嘘をついた。

「有り難いことだね、よくお礼をいいなさい。私もお礼を言いたいから、住所や電話番号も知らなから、それも出来ない。何とか、祐二さんに会わせてくれないものかね。彩世から頼んでくれないか」

「それは駄目よ。だって、いくら私がお願いしても会ってくれなかったのよ。佑二さんは、お礼を云われるのが嫌なのよ」

「そうか、じゃあ、お礼が云える時まで待つよ」

「そうしてください。ところで今日は私を心配して電話してくださったの」

「父さんは私を心配して電話をくれたの」

「いや、良い話を聞かそうと思ってだ」

「慎吾さんのことね」

また、祐二に見離されたと思った彩世の心は慎吾へ移り、胸が期待で切なく震える。

「昨日、得意先の人から、慎吾らしき学生が居ると報せてくれたんだ。しかし、あまり期待しないようにな」

「はい」

「得意先の人たちには、私が捜していることにしているからね」

「はい、住所は分かっているの?」

「大阪の天満だよ」

「きっと慎吾さんだわ。だって、大阪のマスコミ関係の会社に就職が内定していると話していたんもの」

「そうか。私が一緒に付いていってやりたいが、明日の日曜日は、業界の大切な会合があるから行けない。来週なら行けるのだが、その日まで、待っていられる?」

「いえ、すぐ会いたいから、明日、行くわ」

彩世の心は揺れに揺れ、決着を付ける為にも一刻も早く慎吾に会わねばならないと思った。

「そうだ、厚かましいが、祐二くんにお願いしてみたら」

父親は、女一人の危険性を察知して云ったのだ。

彩世も、一瞬、そう思うたが、

「捜して頂いても、一緒に行って頂くのは、あまりにも厚かましいので、明日、一人で行きます」

「そうだ、それがいい、良い知らせを待っているよ」

父親は言って電話を切った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ