表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/161

第6話

そこで、二十五歳になる誕生日、即ち、一週間前に新車を買ったのだ。

車は高級車ではないが、大げさにいえば、今日までの人生、それも、全てを犠牲にして貯めた金で買った車なのだ。

明日、第一の目的が果たせる。そして、明後日からは次の目標に向かって進むんだと、充実感に浸っていた矢先、それも一番に喜んで欲しい母親が壊そうとしているのだ。

また、故郷に住む多くの友達にも、新車に乗って帰るといってある。今更、乗って帰れないなどと、恥ずかしくて云えない。

祐二は目の前が真っ暗になった。そんな祐二の心を気づかないのか母親が云う。

「祐二が車で帰ってきたいと思う気持ちは分かるけど、母さんを助けると思って、黙って、聞き届けて」

「そんなこと、絶対に聞けないよ!」

最後の抵抗を試みた。

すると、母親が今にも泣きそうな声で、

「どうして母さんを苦しめるのよ!」

と泣き落とし先日にでた。

「母さんが無理を言うからだ。だってそうだろう。父さんや母さんが買ってくれた中古の車なら帰ってきてもいい、それなのに、僕が初めて新車を買い、乗って帰ると言うと、止めろと云う、そんなことを聞けるわけがないよ。そうだ、僕が買った車で帰るのが母さんは嫌なんだ」

「違うわ、それには大きな訳があるのよ」

「訳?」

母親が声を潜めて、

「章治さんがね」

「彼がどうかした?」

「死んだのよ」

云うと、悲しみに堪え切れず母親は泣き出した。

「ええー、いつ死んだの!」

家路雲は、親しい友と永遠の別れを祐二に知らせるためだけなのか、それとも、他にも理由があるのだろうか。

驚きと悲しみに言葉を失った祐二に、母親は悲しみを抑えて説明する。

「二日前、名古屋から車で帰る途中、鳥取と島根の県境で交通事故に遭ったのよ。それも酷い事故だったそうよ。だから、母さんは、祐二のことが心配で心配で、眠れない日が続いていたけど、今日、葬儀に参列して、一層、祐二のことが心配になってきたわ」

「なぜ、早く知らせてくれなかったんだ」

「知ったら祐二が動転し、仕事に手が付かず、事故を起こすかもしれないと思うと話せなっかった。だから、明日、祐二が帰省した時に話すのが一番よいと思ったからよ。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ