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第59話

「任せてください」

電話番号の交換を終え、祐二が握手を求めると、彩世は震える手を差し出した。

(暖かい手、なぜ、私はこの人を待ち続けられなかったの!)

と、自分を責めたが、それで、慎吾への愛が消えたわけではない。

祐二がふと、思いついたように尋ねた。

「その後、百合さんのご家族は?」

「私とユリは幼い頃から無二の親友だったけど、私は子供だったので、ユリの家庭のことまで詳しく知らなかったわ、私が高校生になったとき、私の両親から聞かされた話によると、ユリの母さんはとても偉い人だそうよ。父親が居ないのに、子供が親や他人様に頼る習慣が身に付いてしまうと、大人になってから一人で生きて行けないと考え、子供たちに自分で生きる強い心、そして、人を思いやる優しい心を育てるために、誰の援助も受けず、一生懸命に働く姿を子供たちに見せていたのよ。無論、高梁市の人たちは様々な援助を申し出たわ、私の両親もね。でも、今だに援助を受けずに頑張っているわ。昨日、久しぶりにユリの弟さんと妹さんに会ったけど、弟さんは高校二年生なのに、中学生に見えるけど、礼儀正しく、しっかりとした考えを持った優しい少年よ。妹のすみれさんは活発で、とても思いやりが深くて優しい少女になっていたわ」

「それは良かったですね」

と、云ったものの、すみれの名が気になった。

(すみれさん?もしかしたら、高梁すみれさんかもしれない)

祐二は知らないが、伯備線の通路で母子を手助けした優しい高校生は、百合の弟で、高梁すみれは、祐二が推理したように、百合の妹の高梁すみれだった。

祐二が帰ると云うと彩世が、

「もう、帰るの?両親が助けてくれたお礼を云いたいと、何時も私に云っているの、どうか、私の家に来てください」

「ごめん、僕は礼を云われるのが苦手なのです。だから、ご両親には会えません」

彩世は、祐二の決心が強いと感じた。

「残念だわ、でも、何時の日か会って下さいね」

頷いて、祐二は帰りだした。

「あっ、待ってください、車で送りますから」

と彩世が慌てて云った。

「彩世さん、僕は高梁川が大好きで愛しています。だから、川を見物しながら歩いて帰りたいのです。彩世さんは、百合さんの絵を仕上げてください」

祐二は彩世の車に乗って仲良く語り合いたい。だが、彩世に近付けば近付くほど、失恋の悲しみが大きくなるために距離を作ったのだ。



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