第47話
否定したが、母親は分かっているのよとばかり、
「あなたは、男の人と高梁川の調査をしているらしいわね。その男性とは、どんな関係なの?」
と詰問するような口調で尋ねた。
「どんな関係?そんなことを誰から聞いたの」
「お得意さんからよ」
彩世は隠すのを諦めた。
「じゃあ隠しても駄目ね」
「やっぱり何かあるのね」
「本当は隠すつもりはないの。今晩、家族全員が揃った前で話そうと思っていたんだけど、いま母さんに話すわ」
家族全員と彩世が云ったが、家族は父親と母親の三人、母親は、一層不安な顔で彩世の顔を見ていた。
「私、好きな人が出来たの」
彩世は恥ずかしそうに顔を赤らめて云った。
「そうだと思ったわ。で、今後どうするの」
「男性の名は慎吾さん、三日後、父さんや母さんに会いに来るわ」
「交際したいと?」
「いえ、結婚の申し込みよ」
母親は、目が飛び出したかと思うほど、大きく目を開けて彩世を見て、
「えー、結婚の申し込みだって、それは駄目よ。だって、彩世はまだ学生よ。慎吾さんとか云ったわね。その人の年は?」
「来年、大学を卒業し、大阪の会社に就職すると云っていたわ」
「駄目、駄目、結婚は駄目よ。母さんは絶対に反対。父さんも許しはしねいわ」
母親はとんでもないと大声で反対をした。
拙いと思った彩世は、母親を慰めるように、
「結婚は、私が大学を卒業してからでもいいと云っていたわ」
「それなら話は分かるんだど、父さんがなんて云うか?」
と、云っている所へ父親が帰ってきた。
「父さん」
母親の呼び掛けを無視して、父親が自室に入ろうとした。
「父さん、大切な話があるの、しばらく、ここに居て」
父親は母親の要請に渋々応じた。
「なんの話だ?」
彩世に代わって、母親が話した。
「ふーん、そうか、彩世も、もうそんな年になっていたか」
聞いた父親は淋しげに、彩世から目を逸らした。