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第45話

彩世は車内から弁当を持って歩き出した。慎吾がついて行くと、清らかな水が流れている小さな滝があり、その横に二、三人が座れる程の広場に緑のシートが敷かれ、爽やかな滝の音が聞こえて来る。

彩世はシート上に、籐で編まれた籠を置いた。

「どうぞ、お座り下さい」

慎吾が神妙な顔をして座り、彩世が、籠から料理を出しシート上に並べ終わると、慎吾が急に立ち上がり姿勢を正して

「彩世さん」

彩世は何事かと立ち上がり、慎吾の顔を見つめた。

「僕と結婚してください」

と、日焼けした顔を真っ赤にして云った。

突然の事で彩世は、頭が混乱して答えられない。

「嫌ですか?」

慎吾が不安げに尋ねた。

昨日から彩世は、慎吾から愛の言葉を待っていた。しかし、何も云ってくれないので、悲しい思いをしていた。しかし、云われた言葉は、それ以上の嬉しい言葉だったので、彩世は、何と答えたら良いか分からず、黙っていると、

「嫌ですか?」

と再度、尋ねた。

彩世は、強く首を振った。

「では、承知してくれるんですね」

「はい」

やっと、彩世は声を出せた。

「よかった。僕は来年大学を卒業します。そして、大阪のマスコミ関係の会社に就職することが決まっています。もし、彩世さんに異存が無かったら、出来るだけ早く結婚式を挙げたいと思います。どうかお返事をください」

「慎吾さんにお任せします」

彩世の声は喜びに震えていた。

「じゃあ、僕は実家へ帰り、このことを両親に報告し、三日後には彩世さんのご両親に会いにいきます」

「お待ちしております」

「僕はなんて幸せな人間なんだ」

「私もよ」

彩世と慎吾は互いに見つめ合う。

「そうだ、彩世さんにお願いしたいことがあるんですが」

「何でしょう?」

「僕は一度、彩世さんが河原で写生する姿を電車の窓から見たいと思っています。出来るなら、彩世さんのご両親に会いに来る日に、あの河原で写生していてくれませんか」

「三日後ね?」

彩世が確かめると慎吾が確約するように、

「そうです」

と強く云った。

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