第18話
「同感ですね」
と佑二が同意した。
「折りあれば、京都市に、飛行場建設の計画があるのかないのか尋ねてみようと思っているんでよ」
「おそらく計画はないでしょう、なぜなら、京都は遺跡が一杯ですから」
「なるほどね」
と話している間に京都駅に着いた。
「重い荷物を持っていたので助かりました。どうも有難う」
祐二が丁寧にお礼を云った。
「どういたしまして、どうか良い旅をしてください」
佐藤は車を発車させた。
祐二が乗車券売り場へ着いた時、会社の上司に出会った。
佐藤の車に乗ったことで祐二は母親と交わした強い約束を破る事になり、祐二の運命が暗転することになる。だが、神ならぬ身の祐二には知る由もなかった。
「お早うございます」
祐二が挨拶すると、
「今から帰省かね?」
「はい」
「乗車券を買った?」
「まだです」
何気なく答えた。
「それは良かった。私は東京へ行くのだが、コーヒーが飲みたくなった。少しの間、付き合ってくれないか」
と上司は嬉しそうな顔をして誘う。
誘われた祐二は、思わず、しまった、と思ったが、上司との関係を考えると、断れないため、
「お付き合いします」
渋々同意した。
「じゃあ、少しの間、付き合ってくれ」
上司は嬉しそうに、祐二を喫茶店へ連れて行った。
喫茶店に入るなり上司は、飲み物の注文もそこそこにゴルフの腕前を誇らしげに話しだした。
どうやら、祐二を喫茶店に誘ったのは、ゴルフの自慢話を聞かせるためだった。
ゴルフの経験がない祐二だが、話し相手をするぐらいの知識はもっていたので、上司を失望させずにすんだ。
上司は少しの間と云っていたが、少しどころが予想以上の長話しを聞かされた結果、予定していた乗車時間より一時間も遅れて博多行き、のぞみ号に乗った。
その時刻、山陽新幹線岡山駅のプラットホームに、気分が萎えるような蒸し暑い空気が立ち込めてきた。