第160部
と祐二が呟いた。
意識が朦朧としていた祐二は、一瞬、子供の頃に戻っていたのだ。
「すぐ帰れるわ、だから、死んじゃあ嫌よ」
めぐみの悲痛な声に我に帰った祐二が
「また、、めぐみさんと、、一緒に沈む夕日を見られましたね」
「明日も明後日も一緒に見たい。だから、救急車が来るから頑張ってね」
めぐみは、救急車のサイレン音に聞き耳をたてるが、何の音も聞こえてこなかった。
「頑張る、、から、、泣かないで」
めぐみを安心させるように祐二が云った。
「祐二さんが死んだら、私は生きて行けない!」
そして、めぐみは祐二の耳に口を寄せて云った。
「ご両親に連絡するから電話番号を教えてください」
祐二は、めぐみに両親の電話番号を聞かれるまで、まだ、暴漢達と戦っていた。
しかし、めぐみの言葉で、涙を流す母親の顔が浮かんだのだ。
(ごめんよ母さん。家路雲が現れても、僕は家に帰れないかもしれない)
死を感じても涙さえ見せなかった祐二は、母を思いだし、涙が溢れ出てた。
(父さん母さん、兄弟と話せるなら、、話したい、、何時までも)
祐二は心の中で叫んでいた。
(でも、僕の声を聞けば、きっと母さんは泣き出すだろう、母さんだけには、僕の苦しみの声を聞かせたくない)
祐二は我慢しょうと決意した。
そんな祐二の思いを知らないめぐみは
「もう、、電話番号も思い出せないのね、、」
動転しているめぐみは佑二の携帯電話のことを完全に忘れ、祐二を優しく抱き締めていた。
急に気付いたのか、
「ご家族に連絡をする方法がない無いわ」
と悲しんでいた。
混乱しているめぐみは路上に落ちた祐二の携帯電話のことを完全に忘れているのだ。
祐二は両親に心の中で感謝と親不孝を詫びた。
(父さん、、母さん、、そして兄さんに妹の美保、、僕はめぐみさんが殺されたり、屈辱を与えられ、人間としての自由を奪われるのを、男として黙って見逃すことが出来なかったんだ。
だから命を失っても後悔はしていません、ですが、父さんや母さんの嘆きを思うと心が痛みます。どうかこんな僕を許してください。そして、父さんや母さんに感謝したいことがあります。それは、三人兄妹を生んでくれたことで、僕は自由気ままに生きることができたからです。どうか僕が居なくなっても悲しまないでください。僕に会いたかったら、兄さんや美保を見てください。僕はそこに居ます)