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159/161

第159部分

「違う、例え、僕が死んでも、あの男達はきっと逮捕される。逮捕されれば、もう、被害に遇う女性がなくなるんです。その為には、僕の命をいくら犠牲にしてもいいと思っています。だから、めぐみさんには何の落ち度も責任もありません。絶対に死ぬなど考えないでください」

祐二がめぐみの苦しい心情を察して云うと、めぐみは、こんな酷いめにあわされても、まだ、私のことを考えてくれるのかと泣き崩れた。

祐二は、意識が朦朧としていて、めぐみの顔がはっきり見えない。

その見えない目を大きく開いて聞く。

「怪我、ないですか」

祐二がめぐみに尋ねる。

「ええ、祐二さんのお陰よ」

苦しさに堪えながら、めぐみの身を案じてくれる祐二の優しさに、めぐみは胸が張り裂けるような悲しみに襲われた。

祐二が苦しい息遣いで云った。

「めぐみさんに、、お礼を云いたいと思っていました」

「なんでしょう?」

「小説のことです」

「あの小説、書けましたの」

「ええ、、二人は巡り会い結婚します」

「この私が祐二さんのお役に立てたのね、嬉しい」

そして、めぐみは祐二の顔を胸に抱き、神に祈るように云った。

「死なないでお願い!」

「僕は死なないよ」

云うと、最後の力を振り絞って起き上がると、展望台へ上がって行こうとする。

「動いたら駄目、病院へ行きましょう」

めぐみは、祐二を自分の車に乗せようとした。

「車はパンクされているから走れないよ。救急車が来るまで夕日を見ていたい」

祐二は展望台へ向かおうとする。

展望台までの距離は二十歩に満たないが、祐二一人では到底、到達できないだろう。

めぐみは、祐二が自分の人生を確かめようとしていると気付き、祐二の身体を後ろから支え展望台へ向かった。

着くと同時に祐二は力つきたのか身体が倒れ始める。

めぐみの力ではそれを防げず、崩れるように二人は倒れた。めぐみは、祐二が夕日をよく見えるように、祐二の上半身を起こし、背を自分の胸で抱くように座らせた。

祐二の目に、日本海に沈む夕日と夕焼けが見えた。

「帰ろう」



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