第154部
「彩世が話すんだ」
「わたしが!」
「そうだ」
「わたし恐いの、ご両親に会うのが」
「勇気を出すんだ、彩世」
彩世は、しばらく考えていたが、縋るような目をした云う。
「すぐ、父さんが祐二さんの実家へ電話をして、祐二さんの電話番号を尋ねて下さい」
「それは駄目だ」
「何故?」
「今時、見ず知らずの者から電話番号を尋ねられても、教える人は誰もいないよ」
「そうね」
「恐いからといって、尻込み出来るほど小さな問題でない。祐二くんがくれた真心には真心で返さないとね」
「そうね、わたし間違ってわ」
「よし。父さんも手助けをするからね」
「でも、どう話せばいいの?」
「全てを正直に話す、そう、愛していたことも」
彩世が恥ずかしそうに俯いて云う。
「知っていたの」
「親だからね」
「母さんも」
「ええ」
「私一人の秘密でなかったのね」
父親が頷く。
「事情を話したら、ご両親は、祐二さんを呼び出してくださるわね」
「そうとも限らないよ」
「なぜ?」
「もし、祐二さんの父親なら、これは二人の問題だから、彩世が電話するようにと、彩世に電話を教えてくれるんじゃないかな」
「じゃあ、祐二さんのお母さんなら?」
「私が呼び出しますと、云う筈だよ」
「なぜ分かるの?」
「単純だが、我が家がそうだから」
「そうね、でも、電話では思っていることが十分に伝えられなかったら、父さんも一緒に、祐二さんの居る所へ行ってくれるでしょう」
「勿論、行くよ」