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「まだ、話は終わっていないのかしら」

呟いて時計を見る。

「もう、終わっている筈なのに、なぜ、祐二さんから連絡がないの」

彩世が不安げに呟いた。

祐二の会社が倒産した数日後、彩世は倒産を知っていたが、祐二が失業を隠しているため、知らない振りをし、いくら逢いたくても、出来るだけ、就職活動の邪魔にならないように我慢しようと決めていた。

そして、慎吾との婚約を解消しなければ、祐二の愛を得られないと考えた彩世は、決着を付ける為に慎吾捜しに全力を注いだのだ。

また、捜し出した時、傍に祐二が居る前で、慎吾に婚約破棄を言い云い渡すのは、余にも無情過ぎると考え、祐二の同行を拒むことにしたのだ。

しかし、探し出せる保障がないため、捜す期限を決めた。その期限が昨日だった。

そこで、昨夜、彩世は両親に慎吾捜しを中止すると話すと、両親は祐二の失業を知っていたので、ぜひ、祐二を天見酒造に雇いたい、そして、行く末は彩世の婿にと考えていたので、天の恵みとばかり、彩世に代わって祐二に会いに行ったのだ。

だが、父親は、祐二の失業に付け込むようなに思えて真実を伝えられなかったのだ。それを祐二は、慎吾を捜しあてたと勘違いし、彩世が慎吾を選んだと解釈してしまったのだ。

そんなことを知らない彩世は、慎吾捜しを中止すれば、祐二が何故だと、電話をしてくる、その時、慎吾との婚約を解消すると伝えようとしていたのだ。

しかし、正午を過ぎても祐二から電話が来ない。彩世は待ちきれず、祐二に電話した。

「もしもし、祐二さん、彩世…」

云いかけた途端、彩世の顔が急に蒼白に変わり、待っていた携帯電話を落とすと、その目から涙が溢れ出た。

「祐二さんは、電話の相手が私と知って電源を切った!」

だが、すぐ、思いなおして、何度も電話をかけ直した、しかし、電源が切られていたのだ。

彩世は床に倒れこみ泣いた。

祐二の携帯電話が切れたのは、携帯電話が電車に押しつぶされたからだ。それを知らない彩世は泣きながら云う。

「祐二さんが怒っている、あの優しい祐二さんを私は怒らせてしまった」

取り返しができない失敗をしたと、彩世の心は千々に引き裂かれた。

「父さんに頼んだから、祐二さんが怒ったんだわ、私が直接話すべきだった。今更気付いても遅い。私は、一番大切な人を失った。それも、私の不注意から」

堪えられなくなった彩世は、粉雪の降る中、祐二と一緒に行ったループ橋の展望台方面へ、さ迷うような足取りで歩き出した。

彩世がループ橋の展望台に辿り着いたころ、祐二は桂川の河川敷に居た。展望台に立った彩世は、祐二に語りかける。

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