第134話 お伽話はお仕舞い
「あっ、彩世さんのお父さんですか」
「はい。今日は、急に色々と相談したいことがございましたので、今、京都駅に来ています。差し支えがなかったら、少しの間、会って頂けませんか」
「いいですよ。すぐ、行きます」
祐二は車を走らせる。車のフロントガラスに、今年、初めての雪が当たって散る。
京都駅に行くと彩世の父親が改札口で待っていた。
「忙しい所、ご無理をお願いしてすみません」
父親は恐縮して云った。
「いえ、今日は日曜日なので、何の予定もありませんから、どんなことでも相談してください。そうだ、駅の外へでると、雪が降っているのでとても寒いです。この駅ビルの中でお話を伺いたいと思っています」
「ご配慮ありがとうございます」
祐二は駅ビルの中にある喫茶店へ案内した。
席に着くと、父親はますます恐縮した態度で話し出した。
「昨夜、彩世が私に云ったんです。もう、これ以上、樫山さんに慎吾くん捜しをお願いするのは心苦しいと。その話を彩世は自分の口から直接、話したいと言っていたのですが、風邪で伏せっていますので、私が代わりにきました」
(慎吾くんに会ったんだ)
祐二は自分の身体から血が抜けて行くのを感じた。
「よく分かりました」
こんな時がくることも予想していたので、冷静に答えていた。
「分かって頂き、有り難うございます」
父親の顔に安堵が広がった。
「お礼などいいんですよ」
祐二は、いつの日か、この日がくるのを覚悟していたとはいえ、涙が出そうになる。
父親は、祐二の心情に気付かずに、
「今、彩世は家で、樫山さんを巻き込んだのを後悔しているんだと思います。どうか、許してやってください」
父親は平謝りに謝った。
「許すも許さないもないです。これは、僕が云いだしたことですから」
「有り難うございます」
礼を云った後、父親は何かを云うか云うまいか迷っているようだったが、結局、何も云わなかった。
その様子を見て、祐二は、慎吾を捜し出したことを話すか話さないか迷っているのだと思ったので、佑二は彩世のことに触れないように世間話をすることにした。