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祐二は、母に礼を言ってから、住まいを伏見区に変えたことを報告した。

「そう」

母親は祐二の苦境を感じたのか、それ以上何も話さずに電話切った。

(ありがとう、母さん、そして、父さんや兄さん妹も)

祐二が夜間作業に就いたのは、彩世と慎吾との付き合いと、職探しのためには、夜間の仕事が便利だと考えたからだ。

住所を変えたのは、収入が少なくなったからだ。

母親が電話を切ると、祐二は一眠りしようとしたが、親兄弟の心配顔が目に浮かんで眠れなくなり、職探しに出かけずにはいられなくなった。

そこで大阪へ行った。だが、年の瀬も迫った今日、社員を採用する企業はないと考えた祐二は、年末年始だけでも働けるアルバイトを捜したが、住所が遠いからと断られた。

やがて、昼飯時になった。そこで、梅田の地下食堂に行ったが、どの店も幸せそうな人たちが楽しそうに食事しているのを目にし、自分が食事するのは場違いのように思えたために、地上へ上がり、静かな喫茶店を見つけた。

店内に入った祐二が、座る席を捜していると、一人の男が席に座り新聞を読んでいた。

驚いた祐二は駆け寄り挨拶した。

「岡本さん、樫山祐二です」

男も祐二の声に驚いたように、顔を上に上げた。

「やあ、君だったか、久しぶりだね。元気にしていたんだね」

「はい、身体だけは」

岡本は、祐二を労るように云った。

「君が勤めていた商社は倒産したんだね」

「ええ、残念ですが」

「失礼だが、新しい職は見つかったかね」

岡本に嘘をつく必要もないので、素直に答えた。

「まだなんです」

恥ずかしそうに祐二が云うと。

「それは良かった」

岡本が嬉しそうに云った。

「良かった?」

祐二が不思議そうな顔をすると、

「すまん、実は、我が社の社員が一人退職したので、経験者を捜していたんだ。もし、良かったら、我が社に就職してくれないか」

「それは本当ですか!」

祐二が悲鳴にもにた喜びの声をあげた。

「君に嘘などつかないよ。すぐ、我が社に行こう」

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