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絶望の中でも、まだ少しでも希望を残したい佑二である。

「お食事、まだ、なんでしょう」

佑二の心を知らない彩世が明るく云った。

「その時間が無かったものでね」

「じゃあ、私がお料理するから食べてくださる?」

彩世は、佑二が失業や慎吾の消息を隠していることに気づかず、無邪気に、佑二を自室へ招こうとした。

「ありがとう。彩世さんにお弁当は美味しかったね、あんな美味しい食事を断るのは勇気がいりますが、それ以上に女性のマンションへ入るのはもっと勇気が入ります」

彩世の好意は絶対に受けられないため、それとなく断り、ウエイトレスを呼んだ。

「僕はサンドイッチ、彩世さんは?」

彩世に尋ねる。

「じゃあ、同じものを」

彩世は、失望を隠し、明るく云った。

二人の簡単な食事が終わった。佑二が何気なく腕時計を見ると、その様子をみていた彩世が、気をきかせてくれた。

「お仕事で疲れているんでしょう」

「そうなんだ」

「じゃあ、引き止めるのも悪いわね」

彩世は、寂しげに云った。

「今度は、ゆっくりと逢いましょう」

と祐二は、身を切るような切なさを抑え、さり気なく云った。

「きっとよ」

彩世は、嬉しさを顔をいっぱい表し念を押す。

頷いた祐二は立ち上がり、彩世の目を見ると、別れが哀しいのか、もう、帰るという目で見返す。

(この悲しげな顔も、友人としての別れの辛さなのか)

辛い心を抑え、車に乗った祐二は、彩世に手を振り、車を発車させた。

彩世は、その日から人が変わったように、祐二に逢ってくれと云わなくなった。

祐二は、彩世が慎吾を探し出す前に、慎吾との縁を断つことが必要だと考え、慎吾に会いにいった。

慎吾は祐二の顔を見ると、感激したのか、恥ずかしさも忘れ、目に涙を流した。

祐二は、慎吾を抱いたり、背負ったりする時、両足の筋肉が微かに動いたのを感じたため、リハビリをすれば歩けると慎吾に教えたのた。

聞いた慎吾の顔が急に生き生きと輝き

「僕は、一人で歩けるんだ!」



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