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翌日、佑二は彩世や慎吾のことを忘れようと、英樹と数人の幼友達と古浦海水浴で泳ぎ、宍道湖湖畔で会食をして家に戻ると、彩世から電話、
「何か急用でも」
佑二は不用意に聞いてしまった。
「お母様のご容態を聞きたくて」
(何?、母の容態ってなんだろう?)
祐二の脳裏に、遅かったと、怒る元気な母親の顔が浮かんだ。一瞬、彩世が云う意味が分からなかったが、やっと思いだした。
(しまった、あの時、咄嗟に母が病気などと嘘を付いていた)
彩世は、祐二がすぐに答えられないのは、よほど病気が悪いと思ったのか、
「やっぱり、病状が良くないのね」
祐二は慌てて否定する。
「一時は心配しましたが、もう元気になりました」
「そうなの、それを聞いて安心しました」
彩世が疑っている様子がないので祐二はほっとした。
「祐二さんは、お母様の病気が治らないのに京都へ戻れます?」
彩世が気兼ねして尋ねた。
「戻りますよ。そして、彩世さんに逢いに行きます」
「よかった」
彩世は心底嬉しそうに云った。
「明日の十三時ごろ、高梁駅に着く電車に乗ります」
彩世と打ち合わせを終えた所へ父親が来た。
「昨夜の様子から、聴いても無駄と思うが、見合いの結果はどうだった」
どうやら、両親は、祐二の心情(断られた)を察して、祐二が冷静になるまで、結果を聴かないようにしていたのだ。
「何のこと」
祐二がとぼける。