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めぐみは、一層、深刻な顔をして考えていたが、決心したように。

「分かったわ、どんな答えを出せるか分からないけど、私なりの考えをお答えします」

めぐみが、深刻な顔をするので祐二は、気持ちを楽にさせて上げたいと考え、

「驚かせてすみません。実は、その人間とは架空の人物なんです」

 笑いながら云うと、

「そうだったの」

 祐二が説明する。

「その二人は、僕が書いている小説の主人公なんです。僕は小説家ではないのですが、ある雑誌社が小説を応募しているので、一度、投稿をしようと思い小説を書いています。しかし、どうしても書けない箇所が出来たのです」

「もしかすると、私の答えが採用を左右するかも知れないのでしょう」

「そんなに心配しなくてもいいですよ。なぜなら、初めて書いた小説、決して採用されることはありません。それよりか今後の参考資料にあなたの考えが役立つと思うんです」

「そう聞いて気が楽になりました。どうぞ質問なさって」

祐二は、考えを整理してから話した。

「若い二人がある場所で出会い、すぐ恋に陥った。そして男は一週間後、女性の家へ結婚を申し込みに行くと約束して帰った。その途中事故で片足を失ったばかりでなく、残りの足までも動かなくなり、女性に会いに来れなかった」

話した後、祐二はめぐみの視線を避けるように、顔を沈み行く夕日に向けた。

めぐみは、黙って祐二が話しだすのを待つ。

「その事情を知らない女性は、自分から男に会いに行きたいと思ったが、生憎と、男の住所を知らなかったのです。それから女性は毎日、涙と共に暮らしている。男はどうしていたかといえば、事故に遭い病院で意識を取り戻した日が女性と合う約束の日だった。男は急いで女性に連絡をしょうと、女性の電話番号がある携帯電話を探したが無い。そして身体を動かした時、自分の身体に起こっている異変に気付いた男は驚愕しました。その時から、青年は人目を忍んで泣いているんです」

感情の昂りを押さえられなくなった祐二は、一息ついてから話す。

「男女が出会った日から丁度一年が経った日、女性は男と初めて会った場所へ来て、男が来るのを待っていた。その様子を男は電車の窓から見て、女性に分からないよう、ハンカチを振り、別れを告げた。何故別れを告げたかといえば、こんな身体になった自分を女性には絶対に見られたくない。いや、それ以上に、この世で一番愛する人の幸せを考えてのことだった。男の考えとは別に僕はこの男女を会わせたいと思っている。しかし、男の気持ちを無視してまでも、二人を会わせるべきだろうか。僕が聞きたいのは、女性は、変わり果てた男性を愛せますか?愛せるなら会わせたいと思っているのです」

「酷な質問ね。だって、その答えが私の人格を表すもの」

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