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懇願するように云った。

「無論だ、よろこんで出席させてもらうよ」

優子も嬉しそうに、祐二に向かってお辞儀をした。

「所で、明日の予定は?」

英樹が尋ねた。

「何も無いよ」

祐二が答えると、英樹は、また、明日、泳ぎに行こうと云って、車を発車した。

友と別れた祐二が、理髪店へ入ると、店主が誰にでも聞こえないないよう小声で、

「祐二くん、これで何回目かね」

云って、くすりと笑った。それを無視するように、祐二が恍ける。

「何のこと」

この店主は、祐二が生まれた時から高校まで祐二の頭を刈っていたのだ。

店主はそれ以上追求せず、話を変えた。

「お前の兄、保君は偉いね」

「どこが」

「また恍ける。兄貴は、若いのに国会議員に当選したんだぞ」

店主は、一人でうんうんと独り合点していた。

「僕は僕ですよ」

店主は、また忠告した。

「兄貴に心配をかけないよう、早く結婚しろよ」

「おじさんは、兄貴が来ると、必ず、早く結婚しろと云っていたんだってね。他府県に住む僕には通用しないよ」

「そう云って強情は張っている、必ず後悔するぞ」

この店主は、兎に角お説教が好きだった。それを知ってる祐二は、何を云われても気にならない。というより慣れていたのだ。

「忠告ありがとう」

一応、礼を云うと、店主が、

「さあ出来たぞ、兄貴も男前だが、祐二はそれ以上だ」

祐二を持ち上げた。

「おじさんは、何時、見ても元気そうですね」

「見かけだけだよ。間もなく七十だから、先が短いよ」

と禿げた頭を撫でた。

祐二は、店主に礼をして理髪店を出た。

家への帰り道、祐二の脳裏には、英樹と優子の幸せそうな顔が浮かぶ。

(みんな幸せなんだ)

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