表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したらドラゴンの卵だった~最強以外目指さねぇ~  作者: 猫子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

693/763

693.ジリ貧

『搦手のデパートみてぇな奴め! 何が天使だ!』


 背後から飛来してくるヨルネスを俺は尻目に確認する。

 さっきの急転換から再加速は間に合わない。

 距離はどんどん狭まっていく。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

〖ヨルネス・リーアルム〗

種族:アバドン

状態:スピリット、天使の鏡

Lv :150/150(MAX)

HP :7501/9802

MP :3752/6253

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 あれだけやってまだ折り返し地点にさえ遠く到達してねぇのは悲劇という他ないが、それでもMPは着実に減ってきてはいる……。

 クソ、〖天使の鏡〗さえなければあのまま削り切ることができそうだったのに!


 せいぜい削れたのは四割程度……。

 このまま持久戦で〖天使の鏡〗による消耗を誘うのはさすがに厳しいか?


 だが、俺が苦しいのと同様に、ヨルネスも俺を倒しきるのにMPが持つかどうかは瀬戸際のはずだ。


 あの四千近いMPがなくなるまで逃げ続けるのは不可能でも、二千か千でも削ることに成功すれば、ヨルネスからしてみれば一気に苦しい状況に陥る。

 今のMPが、ヨルネスが残MPを気にせずにスキルを連打できる限界のラインではあるはずだ。

 ここからもう一歩下がれば、互いに相手のMPを削り切れる形を探る、詰め将棋状態になる。


 粘れるギリギリまで逃げに徹してみるしかねぇか。

 ヨルネスのMPが減れば〖天使の鏡〗の維持はできなくなるし、〖詠唱返し〗で魔法スキルをコピーしても満足に扱うことができなくなる。

 こっちもまだ見せてねぇスキルはいくらでもある。

 全力で逃げ切って、奴のMPを消耗させてやる。


 俺は身体を翻し、迫りくるヨルネスへと向き直った。

 俺は〖竜の鏡〗で前脚の形を変える。


『〖アイディアルウェポン〗!』


 手の形に変化した俺の前脚へと光が宿る。

 〖アイディアルウェポン〗……自身の望む武器を造り出すスキルだ。


【通常スキル〖アイディアルウェポン〗】

【自身の理想の武器を夢の世界より持ち出すことができる魔法スキル。】

【性能は魔法力とスキルレベルの高さに大きく依存する。】

【使用中は持続的に魔力を消耗する。】

【術者の手元から離れたとき、この武器は消滅する。】


 俺が望むのは、大盾だ。

 俺の巨体を丸々守れるような、そんな大きな盾が欲しい。

 手の先の光が赤く、色濃く染まり、それは質量を伴う物質へと変化する。


【〖黙示録の大盾〗:価値L+(伝説級上位)】

【〖防御力:5000〗】

【世界を終わらせる竜の体表と牙を用いて作られた大盾。】

【その悪しき魂が封じられており、攻撃した者は地獄の炎に包まれる。】


 赤黒い、巨大な盾が俺の手許に現れた。

 盾には禍々しい悪魔の顔や、髑髏が彫られている。

 アポカリプスに進化してから初めて使うが、とんでもねぇ強さの大盾だ。


『いくぞ、ヨルネス!』


 俺は大盾を突き出しながらヨルネスへと迫る。


 大盾でヨルネスの攻撃を防ぎながらぶん殴り、死角から更に爪で追撃する……そうヨルネスに思わせるのが、俺の作戦の第一段階であった。


 俺は大盾に身を隠すように身体を縮め……そのまま〖竜の鏡〗を用いて、更に身体を小さくした。

 ベビードラゴンの姿へと変化する。


 〖アイディアルウェポン〗に意味がないのはわかっている。

 ヨルネスの〖レジスト〗で掻き消されるだけだし、それで対処されればこっちのMP消耗の方が遥かに高い。


 わざわざ使ったのは、俺の意図を直前まで誤魔化すために他ならない。

 それに加えて、足場作りのためである。

 俺は〖黙示録の大盾〗の背後へと足を掛けると、そのまま勢いよく転がった。


『〖レジスト〗』


 ヨルネスの魔法で、俺の〖アイディアルウェポン〗が無効化され、〖黙示録の大盾〗が掻き消される。

 俺はベビードラゴンの姿のまま翼を広げ、〖転がる〗の加速を乗せてヨルネスの前脚の下を抜けた。

 自分の姿だ。

 死角は自分が一番よくわかっている。


 ヨルネスは反応できなかった。

 完全に、一瞬遅れて爪を振るっていた。


 してやったぜ……!

 〖竜の鏡〗で体格を変化させても、素早さは変化しない。

 〖アイディアルウェポン〗で意図を誤魔化して姿を隠し、不意打ちで〖竜の鏡〗で小さくなって〖転がる〗で最高速度を出して死角を駆け抜ける。

 危うい賭けだったが、見事に引っ掛けることができた。


 〖竜の鏡〗を〖自己再生〗の補助以外で見せたのは今のが初めてだし、〖アイディアルウェポン〗も〖転がる〗もヨルネスにとっては初見だ。

 まず反応できないだろうと思っていた。

 絶対に二度目は通らないだろうが、こうやってヨルネスの意表を突いていくしかない。


 ヨルネスのカウンターを潰せる方法を見つけたから安定して消耗させられ続けるはずだ、というのは大間違いだった。

 ヨルネスの手札は多い。

 まだ隠し玉を持っていやがるはずだ。


 だが、それは俺も同じことだ。

 こっちだって、まだまだ見せていない手札はある。


 伝説の聖女相手に、安定した消耗戦なんざ通じるわけがなかったんだ。

 一手一手が全力勝負だ。

 心で負けて温い手を出せば、一気に追い込まれる。


「グゥオオオオオオオオオオオオッ!」


 ヨルネスの咆哮が響く。

 振り向かずとも、風の動きでヨルネスがこちらを振り返って加速し始めたのがわかった。


 俺は〖竜の鏡〗を解除して元の姿へと戻る。

 ステータスのないベビードラゴンの姿で〖ルイン〗をぶっ放されたら大事だ。

 掠っただけで致命傷になる。


『追って来やがれ、ヨルネス!』


 ジリ貧だが、俺が苦しいのと同様にヨルネスも苦しいはずだ。

 〖天使の鏡〗状態のヨルネス相手に、無策で正面対決に出るのは分が悪すぎる。

 とにかく今は、焦らして焦らして、ヨルネスの消耗と隙を待つ……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつも読んでいただき、ありがとうございます!
↑の評価欄【☆☆☆☆☆】を押して応援して頂けると執筆の励みになります!





同作者の他小説、及びコミカライズ作品もよろしくお願いいたします!
コミカライズは各WEB漫画配信サイトにて、最初の数話と最新話は無料公開されております!
i203225

i203225

i203225

i203225

i203225
― 新着の感想 ―
[気になる点] 隠し玉が気になるなら鑑定で詳細見れば分かるのに何で毎回喰らってから詳細を見るのか。予想外のコンボされるにしても一つ一つのスキル詳細を知ってるのと知らないのでは対応は雲泥の差だというのに…
[良い点] 更新ありがとうございます。 [気になる点] 『搦手のデパートみてぇな奴め! 何が天使だ!』 ⇒読んでる私たち読者には意味がわかる言葉だけど、 言われてるヨルネスは前世は地球の人間だった、…
[良い点] アイディアルウェポンのランクが高くなってきてるのワクワクする ベビードラゴンが超高速で転がってるの想像して笑ってしまう [一言] 搦め手と反撃の応酬ですっごいリアリティのあるバトルだと思い…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ