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69.マハーウルフ

 俺はミリアを背に、彼女がバランスを崩さないように前屈みになって森を駆ける。

 速度を上げると彼女を振り落してしまいそうなので抑えているのだが、今の速度だとマハーウルフを振り切ることは難しそうだ。


「グルゥァッ!」「グルワァッ!」


 あいつら、五体から六体に増えてやがる。

 なんでここまで追い掛けてくるんだ?


 実力差ははっきりと示したはずだ。

 なのに上位種を連れてくるわけでもなく、似たような強さの奴を引き連れてきて……。

 なんっか腑に落ちねぇな。


 グレーウルフだってここまで馬鹿じゃねぇぞ。

 毎回襲いかかっては来るが、一体でも倒したら全力で逃げてくからなあいつら。


 あのさっき見た変な状態異常が関係してんのか?

 興奮? 混乱?

 〖ステータス閲覧:Lv5〗で確認できなかったということは、何かしらの強力なモンスターから掛けられたスキルによるものなのか?


 マハーウルフの所持していた、特性スキル〖魔法波受信〗が関係しているのかもしれない。

 厄介な親玉が控えていそうだ。

 一旦ミリアを安全なところにおいて、頭を探した方がいいかもしれねぇ。



「πίσω!」


 ミリアの声を聞いて、俺は背後に目をやる。

 マハーウルフ達が速度を上げ、俺との距離を詰めに掛かっていた。


 危ねぇ、意識が逸れていた。

 考え事は後で、とにかくこいつらをなんとかしねぇとな。


「ガァァッ!」


 しっかり捕まっとけよ!

 俺が吠えると、ミリアは俺の肩に回している手の力を強める。


 足を早めて一気にマーウルフとの距離を引き離す。

 ミリアが、俺の背にぴったりと身体をくっ付ける。


 やっぱりこの速度で走ると、ミリアが落ちそうになっちまう。

 衝撃に耐えるにも結構体力を使うはずだし、振り切れねぇなら、倒すしかねぇな。



 走っていると、小さな洞穴が見えてきた。

 あそこに入れば背後に回られることもねぇし、迎え撃つにはもってこいだ。

 俺は洞穴へと身体を向ける。


「είναι ένα αδιέξοδο……?」


 ミリアが不安げに俺の耳元で呟く。


「ガァァツ!」


 俺は元気づけるように鳴き、少しだけ速度を上げる。

 余裕をもって迎撃するためにも、一秒でも早く洞穴の中に入って体勢を整えたい。



 洞穴に入ってからは減速し、奥の行き止まりで足を止める。

 そして洞穴の隅に彼女を降ろす。


 少し暗いが、浅いためまったく目が見えないというわけではない。

 しっかり目を慣らし、奴らを迎撃しよう。


 この洞穴の広さなら、しっかり警戒さえしておけばマハーウルフに横を抜けられることはないはずだ。

 それさえなければ、ミリアが危険に晒されることはない。


「グルワァァァッ!」


 洞穴の中にマハーウルフの鳴き声が響く。

 来たか。


「ガァァァァッ!」


 俺も洞穴の中央を陣取って走り、翼を広げて低空飛行する。

 この洞穴は狭いため、俺が翼を広げたら左右にほとんど隙間がなくなる。

 ぴったりってことはないが、避けて通ることは難しいはずだ。


 右、左、真ん中。

 左右を広げた翼で巻き込み、前方を走っていた三体に体当たりをかます。


「ギャオッ!」


 悲鳴が上がり、マハーウルフが天井やら壁に激突する。

 俺はそこで急カーブを掛け、残った三体を尻尾で薙ぎ払う。

 あっという間にマハーウルフの死体が五つできあがる。


【LvMAXのため経験値を得ることができません。】


 ちょっともったいねぇ。

 さっさと進化しておけばよかったか?


 いや、でも焦って決めたら一生後悔しそうだしな……。

 危機を目前にして『ああ、もう! これでいい!』なんて決め方はちょっとあり得ないな。


 洞穴の入り口の方を見る。

 魔物の気配は特にない。


 俺は一旦、一人で洞穴の外まで出ることにした。

 周囲を見渡してみるが、マハーウルフの姿はない。

 とりあえず危機は去ったと考えて良さそうだ。

 まだマハーウルフに指示を出していた親玉が残っていそうな気がするが。


 にしても……どう考えたって妙だ。

 そこまでして俺を狙う理由もないはずだ。

 マハーウルフ全員に掛かっていた、あの妙な状態異常はいったいなんなのか。


 案外、俺のただの深読みで襲撃とは関係ないのかもしれない。

 単に仲間意識と復讐心が強いだけ、という線もあり得なくはない。



 マハーウルフの親玉を探すか、このままミリアを村へ送り届けるか。

 何らかの理由でミリアがマハーウルフの親玉から狙われているのだとすれば、このままただ返すというのは悪手かもしれない。


 ミリアの状況も把握できていないし、確認してみよう。マハーウルフについても何か心当たりがあるかもしれない。

 俺の〖グリシャ言語:Lv1〗でもわかるよう、噛み砕いて事情を説明してもらおう。



 また外を見渡し直し、敵がいないことを再確認する。

 それから俺は洞穴の中へと引き返す。


 ……とりあえず、ミリアの元へ歩きながら、進化先の確認だけ行っておくか。

 進化先の情報を把握しておけば、いざというときに咄嗟に危機を抜ける手段になるかもしれない。

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