669.アポカリプスのステータス
ディスペア達との戦闘は、蓋を開けてみればあっさりと片付いた。
トレントが〖絶望の散華〗に巻き込まれそうになってワールドトレントモードに戻って無理やり〖不死再生〗を使ってやり過ごす場面もあったが、危なげがあったのはその一幕のみであった。
今回のレベル上げで俺は【Lv:92/175】まで引き上げることができた。
アロは【Lv:109/130】から【Lv:114/130】へ、トレントは【Lv:116/130】から【Lv:119/130】へと上がっていた。
俺は果てしなく空へと伸びる、天穿つ塔を見上げた。
レベル上げも、スキルのテストもできた。
これでもう、このンガイの森に思い残すことはねぇ。
天穿つ塔を上って元の世界へと戻って……今度こそ、神の声の奴と決着を付ける。
『……そろそろ塔に戻りてぇんだが、大丈夫か? トレント』
『少し……少し待ってくだされ……主殿……』
木霊状態のトレントがぐったりと地面に横たわっている。
無理もない。
ミーア戦で〖不死再生〗を使って限界まで魔力を消耗させたばかりだったのに、結局すぐその後にディスペアの自爆から逃れるために回復したばかりのMPを使い切って〖不死再生〗を使うことになったのだから。
な、なんか締まらねぇな……トレントは。
今度こそ、この世界をずっと支配してきた神の声と決着を付けに行くってところなのに。
まあ、そこがトレントらしくてちっと落ち着くんだけどな。
『ほら……トレント。俺の魔力も吸っていいぞ』
トレントへと前足を伸ばす。
『ありがとうございますぞ……主殿』
トレントが俺の前足へと抱き着き、身体から木の根を伸ばして絡み付く。
〖根を張る〗のスキルだ。
俺は一度、自分のステータスを確認することにした。
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〖イルシア〗
種族:アポカリプス
状態:通常
Lv :92/175
HP :1068/9460
MP :215/7656
攻撃力:8177
防御力:4512
魔法力:5389
素早さ:5243
ランク:L+(伝説級上位)
神聖スキル:
〖人間道:Lv--〗〖修羅道:Lv--〗〖餓鬼道:Lv--〗
〖畜生道:Lv--〗〖地獄道:Lv--〗
特性スキル:
〖竜の鱗:Lv9〗〖神の声:Lv8〗〖グリシャ言語:Lv3〗
〖飛行:Lv8〗〖竜鱗粉:Lv8〗〖闇属性:Lv--〗
〖邪竜:Lv--〗〖HP自動回復:Lv8〗〖気配感知:Lv7〗
〖MP自動回復:Lv8〗〖英雄の意地:Lv--〗〖竜の鏡:Lv--〗
〖魔王の恩恵:Lv--〗〖恐怖の魔眼:Lv1〗〖支配:Lv1〗
〖魔力洗脳:Lv1〗〖胡蝶の夢:Lv--〗
耐性スキル:
〖物理耐性:Lv6〗〖落下耐性:Lv7〗〖飢餓耐性:Lv6〗
〖毒耐性:Lv7〗〖孤独耐性:Lv7〗〖魔法耐性:Lv6〗
〖闇属性耐性:Lv6〗〖火属性耐性:Lv6〗〖恐怖耐性:Lv5〗
〖酸素欠乏耐性:Lv6〗〖麻痺耐性:Lv7〗〖幻影無効:Lv--〗
〖即死無効:Lv--〗〖呪い無効:Lv--〗〖混乱耐性:Lv4〗
〖強光耐性:Lv3〗〖石化耐性:Lv3〗
通常スキル:
〖転がる:Lv7〗〖ステータス閲覧:Lv7〗〖灼熱の息:Lv7〗
〖ホイッスル:Lv2〗〖ドラゴンパンチ:Lv4〗〖病魔の息:Lv7〗
〖毒牙:Lv7〗〖痺れ毒爪:Lv7〗〖ドラゴンテイル:Lv4〗
〖咆哮:Lv3〗〖天落とし:Lv4〗〖地返し:Lv2〗
〖人化の術:Lv8〗〖鎌鼬:Lv7〗〖首折舞:Lv4〗
〖ハイレスト:Lv7〗〖自己再生:Lv6〗〖道連れ:Lv--〗
〖デス:Lv8〗〖魂付加:Lv6〗〖ホーリー:Lv5〗
〖念話:Lv4〗〖ワイドレスト:Lv5〗〖リグネ:Lv5〗
〖ホーリースフィア:Lv5〗〖闇払う一閃:Lv1〗〖次元爪:Lv7〗
〖ミラージュ:Lv8〗〖グラビティ:Lv8〗〖ディメンション:Lv8〗
〖ヘルゲート:Lv6〗〖グラビドン:Lv8〗〖ミラーカウンター:Lv8〗
〖アイディアルウェポン:Lv9〗〖ワームホール:Lv1〗〖カースナイト:Lv4〗
〖リンボ:Lv4〗〖ディーテ:Lv4〗〖コキュートス:Lv4〗
〖終末の音色:Lv--〗
称号スキル:
〖竜王:Lv--〗〖歩く卵:Lv--〗〖ドジ:Lv4〗
〖ただの馬鹿:Lv1〗〖インファイター:Lv4〗〖害虫キラー:Lv8〗
〖嘘吐き:Lv3〗〖回避王:Lv2〗〖チキンランナー:Lv3〗〖コックさん:Lv4〗
〖ド根性:Lv4〗〖大物喰らい:Lv5〗
〖陶芸職人:Lv4〗〖群れのボス:Lv1〗〖ラプラス干渉権限:Lv8〗
〖永遠を知る者:Lv--〗〖王蟻:Lv--〗〖勇者:LvMAX〗
〖夢幻竜:Lv--〗〖魔王:Lv6〗〖最終進化者:Lv--〗
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……マ、マジでとんでもねぇステータスだ。
攻撃力、防御力、素早さに関しては全部最大レベルのオネイロスの倍近くになっている。
この上にまだまだレベルが上がれば強くなっていくのだ。
これなら、ここに飛ばされる前は手も足も出なかった神の声の〖スピリット・サーヴァント〗……〖三つ首の飽食王バアル〗相手にだって、ちゃんと戦いになるはずだ。
バアルは歴史上最強の魔王だと、神の声はそう口にしていた。
他の三体はわからないが、少なくとも奴は伝説級上位であるはずだ。
待ってやがれ、神の声……!
神の声は、本当に勝てるような相手なのかどうか、それさえわからないような存在だ。
だが、ミーアの想いを無駄にするわけにはいかない。
奴とは、何らかの形で決着をつけないといけねぇ。
ミーアのために、仲間達のために、そしてあの世界の全ての住人達のために、何よりも俺自身のために、だ。
『うし、そろそろ出発するぞトレント……』
そのとき、天穿つ塔の方から、何か轟音が響いてきた。
ドシンドシン、ドシンドシンドシン。
どこか聞き覚えのある音だった。
ノロイの木と並ぶ、俺よりも遥かに大きな、片足の巨人が姿を現した。
黄土色の肌に、顔の上下に付いた二つの口。
中央に開いた単眼が、無邪気に俺を見つめている。
『ユミル!? このタイミングでか!?』
本当に間が悪い。
覚悟を決めたところだったのに、思いっきり水を差される形になっちまった。
疲弊しきったこの状況で、ンガイの森最強候補の化け物と取っ組み合いをするつもりにはなれない。
『クソ、なんでこのタイミングで!』
「あ! トレントさんが、〖不死再生〗を使うために一回元の姿に戻ったから……!」
『ア、アロ殿! 間が悪いことを全て私のせいにするのは止めてくだされ!』
トレントが慌てて弁明を口にする。
ただ、俺もこのタイミングでユミルが突撃してきたのは、ワールドトレントのせいでユミルに発見されたからだとしか思えない。
以前も似たような件があったように思うが、もうここまで来ると、トレントの特性スキルにユミルを誘き寄せる隠し効果でもあるのではなかろうかと疑ってしまう。
『塔の方から来てるから、一回やり過ごして遠回りするしかねぇか……?』
そこまで考えて、俺は思い直した。
もうオネイロスのときのステータスとは違うのだ。
今のアポカリプスのステータスであれば、伝説級モンスターくらい、正面から打ち倒せるはずだ。
こそこそ逃げ回ったって、ユミルにこの周辺に居座られちまったらどんどん時間を無駄にすることになる。
だったら、ここでぶっ倒して、最後のレベル上げを行って地上へ戻った方がいい。
『アロ、トレント、逃げるのは止めだ! ここであの、片足の巨人をぶっ倒すぞ!』