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転生したらドラゴンの卵だった~最強以外目指さねぇ~  作者: 猫子


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614/764

614.ヘカトンケイルへの対策

 俺はアロとトレントが待機している場所へと戻った。


『よくぞご無事で、主殿。……しかし、あの巨像は、駄目であったようですな』


 木霊状態のトレントが、少し顔を俯けてそう口にした。


『……ああ、急ぎてぇところだが、今の俺の体力じゃ無理だ。ヘカトンケイルに挑むには、その日はMPは完全に温存しておく必要がありそうだ』


「次は大丈夫そう、ということですか?」


 アロが首を傾げる。


『そうだな、だが、俺だけじゃ無理だ。攻撃面自体は、そこまで大したもんじゃねぇ。危険だが、次はアロとトレントにも、戦ってもらうことになりそうだ。もうちっとレベルが必要だろうがな』


「任せてくださいっ! 必ず竜神さまのお役に立ってみせます!」


 アロが意気込む。


『主殿が諦めた相手に、私などが加わったところでどうにかなるでしょうか……?』


 俺は頷いた。


『今回は、むしろトレントの独壇場になるかもしれねぇぜ』


『わっ、私が……?』


 トレントはびくりと身体を震わせ、翼で自身を示す。


『まさか、主殿……私をあの塔の頂上から、あの巨像目掛けて落とすつもりでは……?』


 俺はヘカトンケイルが守っている、頂上の見えない巨大な塔へと目を向けた。

 ……まぁ、うん、確かにあれだけの距離から落としたら、一万ダメージくらい飛ばせるかもしれねぇが、トレントも一緒に消し飛びそうだな。

 何ならヘカトンケイルに普通に回避され、トレントだけペチャンコになるビジョンが見える。


「トレントさん、竜神さまを何だと思っているの……?」


 アロがジトっとした目でトレントを睨む。


『いっ、いえアロ殿! しかし、私が活躍というと、それくらいしかないのではないかなと……!』


 ……そ、そう自分を卑下しなくても。

 確かにワールドトレントはかなりピーキーな性能だ。

 だが、だからこそ、噛み合いさえすれば、格上相手でも絶大な効果を発揮する。


『〖死神の種〗があっただろう。多分、今回はアレを使ってもらうことになる。そうじゃないと、あのデカブツは突破できそうにねぇ』


 ワールドトレントには〖死神の種〗という強力なスキルがある。


【通常スキル〖死神の種〗】

【相手に魔力を吸う種を植え付ける。】

【スキル使用者と対象が近いほど魔力を吸い上げる速度は速くなる。】

【魔力を完全に吸い上げた〖死神の種〗は急成長を始め、対象の身体を破壊する。】


 勝負を長引かせさえすれば、MPを削って相手の身体を破壊できるスキルだ。

 後半の能力は悍ましいようで、相手のMPを吸い尽くした時点で勝ちは確定しているようなものなので、正直おまけのようなものだろう。

 だが、MPの継続的な吸収というのは、それだけで充分に強力だ。


 この手のスキルは、敵の魔法力が低いほど効果は強くなる。

 そしてヘカトンケイルは、伝説級としては異様に魔法力が低い。

 その上、相手に持久戦を強要する能力がある。

 必然的に戦いは長丁場になる。


 これはヘカトンケイルのMPを削る戦いなのだ。

 トレントを上手く守りつつ戦うことができれば、〖死神の種〗はヘカトンケイルへの大きな対策になる。


『そ、そういうことでしたらお任せくだされ! このトレント、必ずややり遂げて見せますぞ!』


『トレントにはとにかく〖死神の種〗の維持を、アロには〖ダークスフィア〗の連打を放ってもらう。俺は全力でヘカトンケイルを引き付け続け、あいつの望む通りの持久戦に乗ってやるさ』


 魔法スキルはやはり効率が悪い。

 〖グラビドン〗は使わねぇ、〖ヘルゲート〗は燃費が悪すぎるので論外だ。

 外したときのMPの一方的な消耗が、ヘカトンケイル相手ではあまりに苦しい。

 魔法の大技を当てるより、〖オネイロスマレット〗で数回殴ってやった方がいい。

 ぶん殴るだけならMPは使わないで済む。


 〖竜の鏡〗は悩みどころだが、多分使わない方がいい。

 持続消耗のMPは馬鹿にならねぇ。

 高攻撃力を活かしても、ヘカトンケイル相手では一気に戦いを終わらせることはできない。


『対策はばっちりそうですな! なんだか勝てそうな気がしてきましたぞ!』


『ああ! 俺の見立てだと、レベルアップも考慮すれば、この手順で三体掛かりで挑めば、ヘカトンケイルのMPを六割は削れるんじゃねぇかと思ってる』


『おおっ! ……あれ?』


 トレントは興奮げに翼を動かした後、動きを止めて首を傾げた。


「竜神さま、残りの四割は……?」


『多分、俺達だけじゃ、どう足掻いても十割は無理だ。だが、当てがある』


「当て、ですか?」


 ヘカトンケイルに与えるダメージを底上げする方法は大きく三つある。

 一つ、ステータスを上げること。

 二つ、効率的にダメージを与える流れを確立させること。

 そして三つ、戦力を補充することだ。


『後回しにしていた、オリジンマターを狩りに行く。今の俺達なら、きっと勝てるはずだ』


 元々、手詰まりになれば、そのときはオリジンマターに再挑戦するつもりだった。

 以前よりも俺達はレベルも上がっている。

 それに、レベルからいっても、あの極端な性質からいっても、ヘカトンケイルよりオリジンマターを先に攻略するべきだろう。


 無論、ヘカトンケイルと違い、オリジンマターは超攻撃型だ。

 隙を晒せば誰かが吹っ飛ばされてもおかしくはねぇし、俺だって回復を怠れば一気に殺されちまうだろう。

 そういう意味で、ヘカトンケイル以上に危険な戦いになる。


 オリジンマターを倒せば、俺のレベルを大きく上げられる。

 ケサランパサランもいるので、アロやトレントのレベルも上げやすい。

 しかし、それだけではない。


【特性スキル〖冥凍獄〗】

【黒い光の渦に敵を取り込み、封印する。】

【対象は時の流れから見捨てられる。】

【光の奥では時間が動かないため、対象は逃げ出そうと試みること自体ができない。】


 ……オリジンマターの内部では時間の流れが止まっている、とのことだった。

 もしかしたら、ンガイの森の〖狂神〗化に対抗できる唯一の方法かもしれねぇ。

 もし仮に、ンガイの森の〖狂神〗化から逃れるためにオリジンマターに飛び込んだ過去の神聖スキル持ちがいたとすれば、俺達の力になってくれるかもしれない。


 勿論希望的観測だ。

 〖冥凍獄〗ではンガイの森の〖狂神〗化に対抗できないかもしれないし、そんなことを考えて実行した奴だっていないかもしれない。

 いたとしても、俺とは考え方が違い、戦いになることだってあり得る。


 だが、今、他に手段がないのだ。

 もしかしたら〖冥凍獄〗の中から、俺かアロの進化上限を取っ払う切っ掛けが出てきたり、なんてこともあるかもしれねぇ。


 少なくとも、今の俺達ではヘカトンケイルには絶対に勝てない。

 できることからやっていくしかない。

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― 新着の感想 ―
普通に考えたら相手の防御力突破出来ないと種を植え付けられないと思いますが、その辺りは作者の気分次第なので何とも言えない所
[一言] オリジンマスター チョコエッグ う、頭が。。。
[気になる点] 不滅の闇なんてスキル持ってて使う機会が無いなんて有り得ないのよね。オリジンマター戦で何度発動するか。 アロは主人公を何らかの形で庇って不滅の闇を限界以上に発動させて最期を迎える気がする…
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