表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
290/760

290.集落の危機

 翼を広げてアビスの巣を脱し、上で待っていたプチナイトメア、アレイニー達、レッサートレントと合流した。


「キキッ! キキッ!」

「ガァッ!」


 プチナイトメアが相方の頭に乗ろうとして、相方が抵抗していた。

 こいつらはどうでもいいんだけど、それよりさっきの……。


 森小人が指差していた集落の方へと目を向ける。

 遠くの木の枝に、森小人達の姿が見えた。

 俺と目が合うと、また姿を消した。


 やっぱりこれ……なんか、誘導しようとしてんじゃねぇのか俺を。

 従っていいもんなんかな。

 リトヴェアル族的にあいつら、どういう立ち位置なんだろ。

 木の魔力吸って生きてて、森の守り人って呼ばれることもあるって神の声がいってたから、敵対関係じゃねぇと思うんだけどな。


 ヒビに遭ったら一度確認してみるかな。

 後……もう一個、訊いておかなきゃいけねぇこともあるしな。

 竜神の、立ち位置について。

 本当は訊きたかねぇし、ちょい気まずくなるかも知れねぇが……気が付いちまったからには、黙っておくって訳にもいかねぇからなぁ……。

 聞いたからどうなんだって話かもしれねぇけど。


「…………」


 アロがじっと森小人が消えた、集落の先を不安げに見つめていた。

 そういや竜神の詳細については巫女であるヒビを問い詰める必要があるが、森小人についてはアロでも知ってるか。

 もう喋るのに不具合もねぇだろうし、森小人についてはアロに聞いてみるか。


「グゥオッ」


 俺が低く鳴くと、アロが俺の方を振り返った。


「畏れ神様、意図を持ったふうに姿を現すこと、滅多にないのに……」


 おお、若干舌足らずな感じはするが、普通に喋れている。

 改めてアロがここまで来られたんだと実感が……ん? 畏れ神?


 俺が顔を顰めると、アロは首を傾げた。

 どうにもここでは、森小人は畏れ神と呼ばれているらしい。


 え……あの、ちんまいのが? 

 畏れ神? 畏れ神っつうか、畏れ神ズじゃねぇの?

 あいつら何やらかしたんだ。


「大昔に先祖の人が怒りを買って、大きな土砂崩れが起きたことがあると、巫女様が……」


 俺が困惑しているのを見て、アロが説明してくれた。


 ええ……それ、本当にあいつらが原因なのか……。

 あのヒビさん、ちょっと話盛ってないないだろうか。

 竜神についても若干胡散臭いところあるし、そのまま鵜呑みにっつうのは抵抗があるというか……。


 しかし本当にんなことできるなら、うっかりあいつらの怒りを買わねぇように気をつけねぇとな。

 今までも結構、訝しげに観察されてた気がする。

 フェ、フェイクライフ……アウトじゃねぇよな?


 何はともあれ、森小人が誘導したがっているのならば、従っておこう。

 言うことを聞いてる内は怒らせることもないだろう。


 集落の方で何かが起きてんのなら気になるしな。

 ……ひょっとして、親玉潰されたアビスが混乱して集落になだれ込んだりしてねぇよな。

 んなこと起きてたら目も当てらんねぇ。


 俺は途中にある祠にアロ達を置いて、また単独で集落へと向かうことにした。

 ひょっとしてアロも集落に行きたいんじゃなかろうかと思ったが、アロはやや考える素振りを見せた後、小さく首を振った。

 まだ決心がつかないのかもしれねぇな。

 アロから行きたいと言い出すまでは、そっと様子を見ておくことにしよう。


 リトヴェアル族の集落へ向かうと、様子がおかしかった。

 妙に静かというか……まったく、人の姿がない。

 別にアビスが暴れた後がある……というわけでもない。

 地面を見回しても血の跡は見当たらなかった。


「ガァァ……?」


 相方も妙に思ったらしく、首を捻っている。


 〖気配感知〗を使ってみると、屋内には人がいることが確認できた。

 何やら、じっとしているようだ。


「グォオオオッ!」


 俺は声を上げた。

 いつもならこれでヒビが飛んでくるはずだ。

 彼女に説明してもらおう。

 乱暴に人呼んでるみたいであんまり好きじゃねぇんだが、今の集落は何かがおかしい。


 ほどなくして、手に槍を持った、二人組のリトヴェアル族が俺の許へと走ってきた。

 他の場所の警備でもしていたのかもしれない。


「ど、どうする……竜神様がお越しになってしまったぞ!」

「し、しかし、しかし……」


 ……あ、あれ、あんまり歓迎されてない?

 地味にショック……え、本当に何があったの?


 他のリトヴェアル族も屋内から出て来て俺の前に姿を現し始めたが、本当に様子がおかしい。

 誰かの肩を借りて歩いている人がいるかと思えば、他にも体調の悪そうな人達が複数人いることに気が付いた。

 それになんだが表情が暗く、疲れ切っているように見える。

 い、いつもなら俺見たら大はしゃぎしてるのに……。


 一人……中でも、体調の悪そうな男へと目を向けてみた。

 だらだらと汗を掻き、壁に凭れるようにしてどうにか立っている。

 周囲からも心配されており、下がった方がいいのではないかと言われているようだ。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

〖ロジ・ログム〗

種族:リトヴェアル

状態:毒、麻痺

Lv :27/65

HP :26/155

MP :132/132

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 ……ど、毒に麻痺?

 ひょっとして、反竜神派の奴らに何かされたのか?

 あいつらも確か、一度相方へと麻痺毒を盛ったことがあったはずだ。

 俺がマンティコアを倒したことで軟化してくれればと考えていたが……甘かったか。

 いや、そうだと決まったわけではねぇが。


 と、とにかくこうしちゃいられねぇ。

 〖ハイレスト〗を……しかし、一人や二人じゃねぇんだよな……。

 MPは……まぁ、足りないことはないだろうが。

 危ない人を一か所に集めてもらった方がいいか。

 そのためにも、まずヒビに……。


「誰か、竜神様の声が聞ける者はおらんのか! 竜神様の知恵をお借りせねば、とんでもないことになるぞよ! それにこのままでは、ワシらは見捨てられてしまうやもしれんというのに!」


 一人の老婆が、周囲の者達へヒステリックに喚き散らしている。

 え? あ、あれ、ひょっとしてヒビ、いないのか?


「一度、祭具の保管所を探ってみましょう」

「ならんわ! あそこは巫女家の女しか入ってはならんのだ! 畏れ神様の怒りを買うぞよ!」

「し、しかし、ヒビ様が亡くなられた以上……」


 ヒ、ヒビが……死んだ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつも読んでいただき、ありがとうございます!
↑の評価欄【☆☆☆☆☆】を押して応援して頂けると執筆の励みになります!





同作者の他小説、及びコミカライズ作品もよろしくお願いいたします!
コミカライズは各WEB漫画配信サイトにて、最初の数話と最新話は無料公開されております!
i203225

i203225

i203225

i203225

i203225
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ