13.休息
ジトジトとした土の一室で俺は目を覚ます。
村から逃げて再び森まで来た俺は崖下にできた小さな洞穴で休み、自らの怪我の回復を待っていた。
俺はひとつ欠伸をし、それからステータスを確認する。
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種族:ベビードラゴン
状態:通常
Lv :23/25
HP :41/78
MP :40/72
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全回復……とまではいかないが、まぁ半分程度回復したといったところか。
まだ身体の怠さとやるせなさが抜けないが、狩りに行かねば食事もできない。
とりあえず、MPよりもHPが優先だ。
腹を満たせる獲物を狩るだけならスキルに頼る必要もないし、危ない奴と遭遇すれば逃げればいい。
ならば非常事態に備え、少しでもHPを回復させておきたい。
〖レスト〗!
スキルとしてすら認定されていない呪文を唱える。
わずかな光が俺を包み、少しだけ身体を癒してくれる。
MPが8減ったのに対し、回復したHPは2だけだった。
雀の涙ほどだが、ないよりはマシか。
繰り返し練習していれば、スキルとして習得できるかもしれない。
俺は続けてレストを五回繰り返す。
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種族:ベビードラゴン
状態:通常
Lv :23/25
HP :53/78
MP :0/72
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五回試した内、二回ほど3回復した。
うむ、こうして焦らず上げていけば、いずれは使いものになるはずだ。
今でもMP最大から撃ち続ければ20ほど回復するのだから、まったく役立たずというわけでもない。
身体を襲う倦怠感もいくらかは取り除かれた。
よし、まずは食事を得て……それから今日中にLvを最大にまで持っていきたいところだ。
また進化が待っているはずだ。
そうしていれば、いずれはリトルロックドラゴンの首にも届くはずだ。
そうなればここでの生活は保障されたも同然である。
俺が今まで見た中では、アイツが一番強い。
余裕ができたら……また、村の方にも行ってみたい。
怖がられるだけだろうか?
森に来た人間の手助けを繰り返していれば、いずれ噂になるかもしれない。
そうなればひょっとすると……。
考え事をしながら歩いていると、地を這うダークワームを見つけた。
俺を見つけ、一目散に逃げようとするダークワーム。
懐かしい。
昔はダークワームに追いかけられ、俺が必死に逃げていたものだ。
にしても珍しい。
俺が一度大群と戦ってからダークワームは一度も見なかったのに。
てっきり滅んだのかと思っていたが、またこうして会えるとは思わなかった。
村探すために結構移動したもんな。
俺はひょいと跳び、逃げるダークワームの前に回り込み、正面から顔面をぶん殴る。
「シギャ!」
【経験値を12得ました。】
【称号スキル〖歩く卵:Lv--〗により、更に経験値を12得ました。】
頭に浮かんでくるゲーム染みたウィンドウメッセージが、獲物の死を教えてくれる。
俺は小さく手を合わせてから食事に移る。
背中に喰らい付き、その肉を貪る。
ぶちゅり、ぶちゅり。
咀嚼音を聞きながら、俺もすっかりここの生活に慣れたものだと苦笑する。
腹ごしらえも終わったところで、本格的なLv上げに入るとするかな。
さっさとLvを最大にして進化してしまいたい。
ベビードラゴンは進化の枝分かれが多いという話だったはずだ。