第83話 戦場に響き渡るは戦いと希望の歌
鳴りやまぬ『コッラムダ! コッラムダ!』コールに、俺は壊れた機体から下りてバリスタを撃っていたらしい――今は誰よりも腕を振ったりしながらコラムダコールを熱烈に叫んでいるクロマツさんを捕まえる。
「クロマツさん、クロマツさん。何でみなさん、コラムダさんを知ってるんです?」
「あれ? セイチさん知らないんすか? 龍角さん達、移住組は違うと思いますけど、俺たちがここにいるのって、チュートリアルエリアで世話してくれたコラムダさんのお薦めだったからっすもん」
――驚愕の事実である。
あの人、人見知りなのに、このワールドのためにそんなことをしてたのか……誰のためとか何のためにとかはわからないけど。
完全に夜に世界は切り替わり――イベント戦の残り一時間を切った所で、鳴りやまぬコラムダコールに、コラムダさんは指を一本立てて横に振り、
『ちっちっちっち。もう、誰がコラムダですか!?』
……いや、あんたはどっからどう見てもコラムダさんですよ。
『私は……愛を超えて、憎しみすら超越した! スーパーコラムダさんですよ!』
「「「「「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」」」
もう何このノリ。そしてアイリスも場に乗せられて、一緒に雄たけびを上げるんじゃありません。
良い笑顔で、胸を強調するポーズをとったり、笑顔を振りまいたりするコラムダさんの後ろから――スパーンとハリセンで突っ込みを入れたのは香坂――今は赤坂 香音その人であった。
『もう、コラムダさん! 話が進まないほどにボケ倒しちゃだめでしょ!!』
『ご、ご主人様!? い、嫌だなぁ……ご主人様のために場をあっためていただけですよー』
『お笑いか!』
スパーンと言うハリセンの音に、ドッと笑いが起こる。
……ダメだ。うちのワールドの歌姫達の方向性は、この時に決まってしまったのかもしれない。
『ともかく皆さん! この結界は後二十分程しか持ちません! その間に怪我の治療、機体の修理などを済ませてください!』
香坂の呼びかけに、今が絶望的な戦いになりつつあったイベント戦だとみんなが思いだした。おお、俺もうっかり二人の漫才に飲まれてしまっていた。お、恐ろしい、これが歌姫と歌姫の精霊AIの本当の力か!?
――俺達は急いだ。小槌もドリルもフル活用して、小破、中破、大破した機体を修理していく。
パイロットのみんなも小槌くらいは持っているので、全員で機体を修理していく。
「セイチさん!」
「にゃー!」
「おう! 二人とも無事だったか!」
見覚えのある機体のハッチが開いて、こっちに何故か泣きそうな顔で声をかけてきたのは桜子だった。
「申し訳ありません! 私なんかのために……」
「え? ああ、さっきの戦いのこと? いや、どっちかが足止めしなくちゃならなかったし、それなら盾を持っている俺たちが残った方が良かっただけの話だよ」
どちらかと言うと、その戦いにアイリスを参加させざるをえなかったのがなー……
「それより機体は無事か? 後一機体分しか修復できそうにないぞ」
「あ……お願いします」
強がりを言わずに人に頼めるようになった桜子の頭を一回なでると、俺は彼女の機体に小槌を持って走りだした。
あっという間に二十分は過ぎて、俺とアイリスは自分の機体に乗り込み、歌姫が張った結界が消えて行く光景に生唾を飲み込んで覚悟を決めた。
『――これから私たちの歌で、みなさんのステータスと機体のステータスを一時的にパワーアップさせます!』
『さあ、皆さん!! ここからが稼ぎ時ですよ!? 私たちに見惚れずに、勝ってくださいですよ!!』
――そして二人のライブが始まった。
『響け――』
『響き渡れ――』
『『私たちの歌声ぇええええええええええええええ!!』』
彼女たちの力強い戦いと希望の歌が、戦場全体に響き渡った!!
「マスター! デュラハンのステータスが全て2ランクアップしました!」
「はいっ!? ……歌姫ッパネェ!!」
つまり彼女たちの歌声で、
第0世代型ハイ・ゴーレム『セイチ専用デュラハン・千花繚乱カスタム』
『筋力。ランクS+』
『耐久。ランクS+』
『瞬発力。ランクS』
『俊敏。ランクS』
『反応。ランクS+』
『器用さ。ランクS+』
『居住性。ランクS+』
『魔力。ランクA+』
『消費魔力。ランクS』
になったってこと!? いや、ほぼ最高ランクじゃないですか!?
「ふっ……ははははは……負ける気がしないな!!」
「はい、マスター!!」
「戦闘起動、いくぞぉ!!」
「了解です!!」
その変化に俺たちは――いや。この場にいるプレイヤー全員が気づいた。
戦闘起動独特の関節から漏れる魔力の粒子……それが、
「お、黄金……」
そう。まばゆくも優しい黄金色の光があふれていた。全ての機体から……ここから結構離れた北、東、西の方でもその立ち上る黄金がわかる。
『みんな、呆けてる暇は無いわよ~……突撃!!』
『『『『おうっ!!』』』』
ララナさんの号令に俺たちは城壁から、突撃を再開させたゴーレム達に向かって跳びかかっていた。
一回だけ背後を振り返る。立体映像の彼女たちは、華麗に舞い、華麗に歌っていた。二人ともろくにログインも出来ずにずっと練習していたのだろう。
――その黄金なんかより輝く二人の姿を目に焼き付けて、俺は戦場に意識を移した。
後一話……今日中に書き終わるでしょうか!? 気分はロマ〇ガ2のオープニングの詩人さんの気分です!
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それでは書き続けます!!




