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第78話 戦闘起動。終了

 バトルロイヤルを提案された時に気づいておくべきだったな……

 三対一。別に卑怯だなんて思わない。そりゃあ、スペックの差、経験の差、その他諸々を埋めるためには有効かつ当たり前な戦略だ。


 ……なんて思うわけ無いでしょうが!! ちくしょー! 三対一なんて卑怯にもほどがある! 日本人は騎士道精神にあふれた立派な民族だと思っていたのに!!

 だが、そんなことを外部スピーカーで叫ぶまでもない。


 一人残らず叩きつぶす!! 逃げる? とんでもない! ここまで私を怒らせたおバカさんはあなたたちが初めてですよ?


「すーはー……アイリス」

「はい」

「勝つぞ」

「……はいっ!!」


 一気にペダルを踏み込むっ!! 機体が一瞬の停滞の後、一気に加速を始める!! こりもせず、飽きもせずに突進だ!

 数の力は偉大だ。あの姉神達ですら、多対一の時は手加減をやめるらしいし……そのせいで、地獄を見た奴がいったい何人いたんだろうか?


 俺もそんな姉たちを見習って、手加減を止める。そんなものしてたかって? そりゃあもちろんしてたさ。

 ――加速する機体。身構える二機。


 二人が初手を譲ってくることは何となくわかる。罪悪感の問題だろう。そりゃあ、誰だって勝つためとはいえ三対一――しかも自分が長のギルドの人間が多く見ている中でそんな手は使いたくなかっただろう。


 ただララナさんの性格的に勝ちたいと言うのはわかるし、実験でさんざんやられたクロマツさんが俺にひと泡吹かせたいのもわかる。龍角さんは……二人に乗せられたか、当たり前の戦術として受け入れたのか。


 ――ともかく罪悪感が残っているうちに――初手を譲ってくれてるうちにやって置くべきことがある。

 それは、もちろん――


「跳べ! ハイ・ゴーレム!!」

「燃え上がります!!」


 二機の直前で機体をジャンプさせる!


『同じ手は――』

『――通用しないっす!!』


 事前に情報を得ていれば、さすがに経験が少なくとも精霊AIに頭上をガードさせるポーズくらいはとらせられるようだ。

 ――うん。わかってた。


『!? 機体が――』

『――反転していない!?』


 そう。今回は相手の両肩なんか狙っていない。そんなまどろっこしい真似はもうやめだ。

 本当は相手を踏み台にして名場面を再現したい所だったのだが、それが『初手』とみなされてはいけない。


 初手は……!!


『くっ!? 俺か!』

「仕留めさせていただきます!!」


 応急処置がちょうど終わった所なのか、戦闘起動に戻った龍角さんのデュラハンに俺は直進していたのだ。

 当たり前である。多対一の状況で、一の側がやるべきことは第一に逃げる。第二に戦うとしたら、数を減らすことである。


 地面に着地、そしてそのまま体当たりするように龍角さんへの機体へと肉薄する!


『このっ!!』


 龍角さんが俺の突進を止めるように両手をかざす――が、応急処置が済んだだけの腕の動きは緩慢だ。

 その両手をこちらの両手ではじいて……!


「キック!!」

「はい!!」


 俺たちは蹴った。加速の勢いをほぼそのままに。勢いよく。俺のイメージのままに。コクピットを。

 バキィイイイン!!

 

 ガラスが勢い良く割れる音。やはりただのガラスと言う設定じゃないのか、前が見れなくなるほどにひび割れただけだ。


 ガッ、ドゴォオオオン!!

 と激しい音を立てて地面にぶつかり、そこから一回転してさらに地面に落ちた機体。

 さらに俺は追撃を――つまりはコクピットを踏みつぶそうとして、


『ま、まいった!!』


 と言う龍角さんの敗北宣言にその足を止めさせた。

 ギュイン――と機体を勢いよく、背後で茫然とこちらを見ていた二人へと向ける。


『あ、えっと……セイチ君? いえ、セイチさん?』

『あは、あはははは……あのセイチさん?』


 二人の呼びかけはあえて無視して機体をゆっくりとそちらに歩かせる。

 ――そう俺は手加減していたのだ。本気で勝つ気なら、狙いづらい肩の関節を狙うぐらいだったら、弱点丸出しのコクピットに両手を組んだ重い鉄槌をあの時に叩き込んでいた。


 だが……さすがに多対一の状況で、あくまで関節などを狙っての部位破壊は時間がかかり過ぎる。なら……ねえ? 狙うのは……


「くっくっくっく」

「ふう。あなたたちもバカな真似をしましたね……私のマスターを本気で怒らせるなんて」


 三対一と言う状況に気づいて、自分のギルマスだろうと遠慮なくブーイングしていたギャラリーがシン……と静まり返っていた。

 ――誰かが言った。


「あ、青い死神……」


 そう、そんな変なあだ名がついていたっけ……今はどちらかと言うと、関節から出る赤い粒子で赤い死神だろうけど。

 問答無用でコクピットを蹴り、そして踏み潰そうとした機体。赤い夕陽に照らされる鉄色と、赤い粒子が漏れ出る機体が、ゆっくりと近づく光景を彼らがどんなふうに感じ取ったのかはわからない。


「さて、今回の実験は『人はコクピットだけを狙って生き延びることができるか?』に決定しようか、アイリス君」

「イエス、マイ・マスター。マスターと私が丹精込めて造った機体を破壊するのは忍びないですが、致し方ありません」


 もちろん外部スピーカーでこの会話を流している。ガシャン、ガシャンとクロマツさんとララナさんの機体が後ずさる。機体にバックのレバーとか無いので、制御している精霊AIの子たちが無意識にしてしまったのだろう。


 ――そう。別にむかついたから、コクピットを狙ったわけじゃない。多対一で勝つために仕方なくやっただけ……そして、躊躇なくやったのは心理的効果を得るためだ。

 一人を凄惨に殺して相手の軍隊に動揺を仕掛け、士気を下げる……昔は良く使われた手らしい。


 士気と言うのは数と同じくらい重要だ。相手より人数が多いと士気を保てるから、数を揃えている軍隊もあったほどだ。

 そう。それを下げさせた。さすがに大人……か、それなりの年齢に達している二人にVRMMO内でのこんな揺さぶりはたいして効かないだろうが、機体を制御している精霊AIは別である。


 アイリスだって生まれたての頃失敗して、俺に平謝りしていたのは記憶に新しい。冷静沈着に見えたって、人生経験は無いのだ。

 俺はその後退りを見て、作戦が成功したことを確信すると、ペダルを踏み込んで一気にクロマツさんへの機体へと向かっていった。


 ――三人の機体性能は知っている。そして結局武器ももたずに素手で戦うのなら、筋力の数値が重要になる。

 龍角さんの機体だけがC+で、他の二機はC……俺のデュラハンのB+とは1.5ランク差である。


 俺が龍角さんを最初に仕留めた理由でもある。

 ――その後、パワーで圧倒してクロマツさんを仕留めると、ララナさんはどこから出したのか白旗を振っていた……




 勝利後……男子は歓声を上げて俺を迎えてくれたが、女子は半笑いの拍手で迎えてくれた。ええ、女子に好かれる勝ち方じゃありませんでしたね。

 まあ、良いか。少なくとも桜子とシロコは俺とアイリスを拍手と笑顔で迎えてくれたわけだし。




 敵対する者には容赦がなくなるのは、武術一家に生まれたものとして戦いの心得と言うやつを幼いころからたたきこまれて、性格を形成する基礎骨格になっているからです。


 前回は緊張していたのに、一度相手を敵認定すると人が変わったように攻撃的になるのはその教育の賜物と言うやつですね……いいんだろうか?


 ちなみに姉神達は相手がいなくても攻撃的な思考――性格すら戦うために生まれたような二人……子供のころはうまく制御できなくて、セイチさんのトラウマのもとになってしまったり。悪いと思っているので、大人になってからは甘やかしているのは裏設定……なんだろうか?


 優しくはあるけど、甘くないと言われる性格なのはここら辺から来ています。ええ、セイチさんは例えかつての幼馴染が敵パイロットだとしても問答無用で叩き潰すはずです。


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