表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/108

第77話 戦闘起動。先手必勝編

 ――先手必勝。

 今となっては負けフラグっぽい四字熟語と化しているが、少なくともうちの姉神二人は、ほぼ完全に正しいと信じている。


 うちの実家は武術道場をやっているのだが、二人はタイプの違いこそあれど免許皆伝の腕前だ。

 姉神一号は技を持って相手の身体を破壊することに長け、姉神二号は常人離れした肉体を駆使して防御ごと相手を砕く。わかりやすく言えば柔と剛の格闘家だった。


 そのタイプの違う二人が、先手必勝は正しいと言うのにはもちろんわけがある。二人曰く『現実にHPは無いから』とのこと。

 HPが減る……ダメージを喰らってもゲームのキャラはHPが無くなるまで普通に攻撃や防御が出来るが、現実はもちろんそんなわけにはいかない。


 ダメージを喰らえば、喰らった分だけ人は普段の攻撃や防御の動作が出来なくなる。左腕一本折れたから、右腕で殴るなんて言うのは漫画やアニメだけの世界だ。人間の身体は言うまでもなく、どこもかしこも骨と肉で繋がっている。右腕で殴った振動はもれなく左腕の骨折部に直撃する。だからこそ、骨が折れた場合の治療として、ギプスなどで固定して、普段の生活程度の動作の振動ならば伝わらないようにするのだが。


 戦いも長引いていれば、アドレナリンなどの脳内麻薬が痛みを和らげるだろうが……最初の一撃で骨を砕かれれば、その痛みで人は戦うことなど出来なくなる。戦うことができたとしても、完全な状態より戦闘力は下がるわけだから、こんどこそ戦えなくなるダメージを安全に与えればいい。


 うちの姉たちが先手必勝にこだわるのはそう言うためらしい。お分かりの通り、一撃で骨を砕く自信のある二人だからこその理論である。

 ちなみに二人が戦うと、最初の一撃をどちらが正しく直撃させることに専心するためか、達人同士の戦いのようにピクリとも動かない。あ、達人でしたね。


 俺が今回先手にこだわったのは、二人の様な達人視点からのものではない。単純に機体性能が上回っていたからである。

 相手より力が強く、相手より素早く、相手より堅い。ここまで揃えば先に手を出さない方が嘘である。


 さてさて……お決まりのパターンだと、龍角さんが狙うのはカウンターだ。先手必勝が負けフラグと化しているのは、この後の先があるからだ。相手の攻撃を避けて、避ける動作を攻撃の動作として一撃を相手に叩き込む……言うのは簡単だが、そんなに簡単なもんじゃない。


 俺は姉神に一矢報いるために、子供の頃カウンターを狙ったが、そもそも一撃目が速すぎて避けられない。まぐれで避けられた時に勝ちを確信して――次の瞬間に眠っていた。まさかね……カウンターよりも姉神の二撃目の方が速いってどうしようもないね。俺が色々諦めた瞬間でもあった。


 そんな経験からカウンター封じには自信がある。

 一、相手のカウンターより二撃目を先にあてること。相手より速いとはいえそこまでの性能差は無いと思うので却下。

 

 そして大本命の二。カウンターとは読みだ。相手の攻撃パターンを予測して、その攻撃に自分の攻撃を合わせなければならない。ならその予測の上を行けばいい。

 現実に意識を引き戻す。


 ガン、ガン、ガン!! 

 機体が揺れるたびに龍角さんのデュラハンへ近づく。これはかなり怖い。武器もった犯人に突撃する機動隊の気持ちはこんなんだろうか? 血の気が多くないとストレスで胃に穴が開きそうだ。


 現実じゃないと念じてみても、リアリティがあり過ぎる。口の中が緊張で粘つく感覚まで再現せずとも良いだろうに……!

 ペダルを踏み込む強さを弱めそうになる。一度止まって歩いて近寄ってのインファイトで良いじゃないか……弱気が顔を出す。


 だが、正面を見ながらコクピットの中でふわふわ浮いているアイリスの背が視界に入る度に……勇気が顔を出す!!


「アイリス! 跳ぶぞ!!」

「はい!!」


 龍角さんとの距離が数歩の距離に近づいた時――アイリスにボイスコマンドを叫び、同時に頭の中でどう跳ぶかイメージする。

 ダン!! 跳ぶ。この脚力――戦闘起動の瞬発力の補正さえあれば――


『――ず、頭上!?』

『グオ!?』


 ――そう、俺のデュラハンは頭――は無いけど――を下にして、龍角さんの頭上を舞っていた。赤い粒子が描く軌道は、彼らの眼にはどう映ったか?

 そう。先ほどは出さなかった俺が先手を選んだ最大の理由――それは経験値の差だ。


 彼らの起動時間は三十分にも満たない。しかも実験だけで、自由自在に動かしたのなんてほんの数分だ。

 つまり、とっさの対応なんてほとんど出来ない。頭上への対応なんて、精霊AI頼みか、思考操作じゃないと不可能だ。


 アイリスなら対応しただろう。頭上からの攻撃なんてアニメの世界じゃありきたりだしな。

 だが――龍角さん。あんたの飛龍は今日動かしたばかりの機体で、


「頭上への対応なんて出来ますか!?」


 引いた操縦桿を一気に前方へと押し出す。イメージ通りに、跳んだ勢いすら上乗せした両手の手刀を両肩の関節へと叩きつけた!!

 ガキィン!!


 衝撃。一刀両断できればそのまま相手の後方に着地できただろうが、そううまくも行かず、地面に頭から落ち――アイリスがデュラハンの手から着地させ、ぐるりと横に一回転させその勢いでカッコよく――立ち上がった。


 うわーい。カッコいい機体の動かし方だと思うけど、結構目が回るよその軌道。

 と。戦いの最中だ。相手に視線を戻す。関節から噴き出す青い粒子が増えてる? いや両肩の部分だけだ。魔力漏れ――どうやら両肩を破壊すると言う目的は半分ほど果たせたようだ。


『ぬう、やってくれるな……』


 攻撃されて、一瞬宙に浮いた機体を転ばせなかったのは見事だけど、操縦桿を動かして腕の様子を見ているからして腕の調子は大分良くないようだ。

 先手――と言うよりは奇襲は上手く成功したようだ。


 これで相手の攻撃力は大幅ダウン。今回の戦いの決着は『負け』を宣言するか、『機体が動かない、もしくは四肢のどれかが完全破壊されるか』で決着となる。

 ロボオンの世界ではHPが無い。もしくは見えない。そして、腕を鉄蜘蛛に切り裂かれた時にわかったことだが、ちゃんと腕などへの部位ダメージもちゃんとあるようなのだ。


 あの時は興奮(した理由は恥ずかしいので思い出したくない)していたので気付かなかったのだが、握力とかパンチ力とか下がっていたように……思う。あくまで冷静になった後、思い返してみての感想になってしまうのだが。


 ハイ・ゴーレムは部位破壊されることはマニュアルにあったが、なるほど、こんな感じに壊れて行くのか。


「あれ? 戦闘起動を止めた?」


 悪い癖で、相手にとどめをさすより、ハイ・ゴーレムがどんなふうに傷を負うのかとかに着目してしまい、手を休めてしまっていた俺は龍角さんのデュラハンの関節から漏れていた戦闘起動特有の光の粒子が止まってしまったことに気づいた。


「マスター。精霊AIにハイ・ゴーレムの損傷をコクピットから直すことはできませんが魔力漏れを止めるくらいのことは出来ます。それには一度全身を通している魔力を通常状態に戻さなければなりません」


 アイリスの先生モードでの解説に聞き入って……ハッと気付く。つまり、それは……応急修理をしているってことか?

 ――おいおい! トドメを刺しに行かないと! 相手の準備が整うまで待つなんて言うのは騎士道精神にあふれた奴しかいない! そして日本に騎士はいない! 相手の隙を正々堂々突くのがサムライだ!!


 俺は一気に加速させようとして……止まった。


『ふふん! 私は負けるのが嫌いなのよね!』

『すいませんっすけど……一対一じゃ勝ち目の無さそうなセイチさんの機体からやらせていただくっす!!』


 行く手を遮ったのは二体の巨人――第0世代型ハイ・ゴーレム・デュラハン。金色と緑の機体は黒の機体を守るように立っている。

 ――さ、三対一!?




 先手必勝のくだりはあくまで姉神たちや主人公の主観です。


 お気に入り登録、感想、評価ありがとうございます。お気に入り登録が2000人超えました。登録してくれた皆様ありがとうございます!


 それでは次回で。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ