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第6話 ゲームに必要なものはリアルラックという悲しき現実。

――十分後。


「……はい。そんなわけで、セイチ様に絶対服従を誓ってもらいようやく立ち直ったコラムダさんなのでしたー」


 とても良い笑顔で、汚れてもいないお尻をはたきながら立ち上がるコラムダさ――いや、ちょっとまてい!


「欠片たりとも誓って無いよ!? いきなり何言ってんですか!!」

「ええー……世界初のAIの女の子に使われる男の子として名をはせたくは無いのですか?」

「な・い!」


 ……恐ろしい。さっきまで俺は、体育座りでいじけている女の子を慰めているつもりだったのに、いつの間にか悪魔の契約書にサインをしかけていた……何を言っているのかわからないと思うが――以下略。


「もう、照れ屋なんですからセイチ様は」


 困った子供を見るような顔で、こっちのほっぺたを突っついてくるコラムダさん……可愛いと思うより、ウザいと思ってしまったのはもはやしょうがないことなのだろう。

 ため息をつき少し考える。話が進まないので、俺が通じるかどうかわからない手段を取ることにする。思い切り息を吸い込み、青空へと顔を向け、


「サポートAIのラムダさ――」

「マジすいませんでした! ちゃっちゃと話を進めるので、どうかお母様を呼ぶようなまねはしないで―!?」


 こうかはばつぐんだーっ! 全米の俺が今、大喝采を上げる……! そう、今この瞬間、人間がAIに勝利するという歴史的瞬間だったのだ! ……単に相手のお母さんに頼ったとも言うが、そこら辺は気にしない方向で。


 こちらの腰にすがりつく、涙目のコラムダさんを見下ろす。なにやら柔らかいものが足に当たっているが、コラムダ限定魅了耐性スキルを手に入れていた俺に一部の隙もないのはもはや周知の事実!


「ま、まあ、話を進めてくれればいいですから……」


 ……はい、どもり入りましたー……






「では、スライムを倒した場所を見てください」

「……覚えてません」

「ですよねー」


 お仕事モードにようやく入ってくれたコラムダさん。そのコラムダさんに言われたとおりにスライムを倒した場所を見ようとしたが、だだっ広い草原でまともな矢印もない中、長いことコラムダさんに付き合ってコントじみたことをしていた俺にそんなことを言われてもなー……


「まあ、辺りを見回しておいてください……『カード化』」


 その声と共に、ちょっと離れた場所にポンと光り輝くカードが空中に現れた。つまりは、あそこがスライムを倒した場所なのだろう。


「ロボゲー・オンラインでは、モンスターを倒したらアイテムとして『カード』が現れます。カードには低い順からF・E・D・C・B・A・S・SSとランクがあって、もちろんランクが高いほど入手が厳しくなっています」


 説明と共にコラムダさんがカードをどうぞと手で指示してきたので、小走りで空中に浮いているカードを取りに行く。

 大きさはトレーディングカードなどに使われているサイズより大きく、漫画本――新書判サイズの大きさだった。そこには赤いスライムが描かれ、lv1、火属性、レッドスライム……そして最後に大きくAと書かれていた。銀の縁取りが高級感を漂わせているな。


「言っておきますが、今回のスライムはチュートリアルクエストの特別せいですので、攻撃もしてこないし、一撃で死ぬHPに……って、Aですとー!?」

「うおっ!? な、なんですか!?」


 こちらの手元を覗き込んだ瞬間、大声を上げて興奮するコラムダさん。


「いや、Aですよ、A! 北斗とみな――いや、そんな今の大人にすら分からないネタは置いといて――」

「俺はわかりますけど」

「何となくそんな気はしてました! いや、違いますよ! 私が問題にしているのはAランクのカードをいきなり引いたその強運を問題にしてるんですよ!」


 ああ、やっぱりレアなのか。てっきりチュートリアルクエストだから、サービス的なものなのかと。


「あ、でも、俺には『ロボオンの祝福』と言うタレントが――」

「あんなのはぶっちゃけ、スズメの涙程度の威力しかないんですよ!」


 ぶっちゃけやがったぁあああああああ!! 唯一効果が極小じゃないから期待していたのにぃ!


「でも、まだSとSSがあるわけですし……」

「うぐっ……それがどれほどの当選確率なのか……極秘情報じゃ無ければ今すぐゲロッてしまいたい!」

「ゲロっちゃいましょうよ」

「女の子にゲロとか言わないでくださいでアリマス!」


 どっかの軍曹になったコラムダさんの逆ギレ発言。いや、あんたが言い始めたことだったはずなのに……


「まあ、まあ……それで、そのカードどうするんですか?」

「――と。そ、そうでしたね。こほん。話の続きですけど、この『モンスターカード』は『解体』のスキルを使うことで、そのモンスターの素材を手に入れることができるのです」

「モンスターから直接はぎ取りをするタイプじゃないってことですね」

「その通りです。その理由は……解体のスキルレベルが高いほど、手に入る素材の数とレア度が上がり、解体が生産系のスキルと言えばわかりますか?」

「あー……」


 なるほど。パイロットたちは戦闘系スキルが上がりやすいのだろうが、解体のスキルが上がりやすいのが生産者となれば『パーティ』として成立するわけである。もちろん成長率が倍近く違うだけなので、それだけでは絶対組まなければならないと言うことは無いのだろうけど、生産者からして見れば『解体屋』として店を開けることも可能になる。


 特に、今回の様なレアカードならば多少金がかかろうとも高レベルの解体を持つ人間に頼みたいだろう。


「――それで……どうします? 解体のレベルがゼロの状態でレアカードの解体をやってもらうのはチュートリアルクエストの仕様と言えど気が引けるのですが……」

「ん……まあ、いいですよ」


 これが終わったら、ロボットの操縦が待っているわけだし。それに――スライムの素材が、ロボットの素材になる想像がつかない……ならば、別段良いだろう。


「そうですか? なら、今回は私がサポートに回りますね」

「……サポート?」

「これが終わったら説明が入ります。ロボットの操縦にかかわる話なので」

「おおっ」


 それはすごく楽しそうな話である。ではちゃっちゃと終わらせてしまおう。

 コラムダさんが両手を広げると、カードが俺の手を離れて俺とコラムダさんの間に浮く。


「それでは、セイチ様。ボイスコマンドをお願いします」

「了解です……『解体』!」


 カードが赤い光を放つと、ポンっと言う音と共に足元に素材が転がった。バスケットボールくらいの大きさの赤い水晶と、一リットルペットボトル(?)に入った赤い液体が三つほど。


「あー……やっぱり出ちゃいましたか」

「?」


 俺が出てきたアイテムの中でも高価そうな水晶を手に持って見ていると、コラムダさんは困った顔をする。この水晶が何だと言うのだろうか?


「いや、後で説明する予定だったんですけど……それ『ハイ・ゴーレム』を作る上で最も重要なパーツ……『コア』なんですよ」


 ……なんですと!?




 次回、ロボットと〇〇〇〇のお話。まあ、主人公がすでに名前だけは公表しちゃっていますけど。

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