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第75話 筋力比べ。圧倒的じゃないか編

 まあ、大方の予想通り生贄に選ばれたのは……


『ちっくしょぉおおおおおお!!』


 クロマツさんであった。

 ――やる人がいなかったので、桜子が「なら、私が……」と手を上げた所、なら俺が、私が、と次々に手を上げて行き……最後にクロマツさんが手を上げた所で「どーぞ、どーぞ」と言うお約束のアレに見事引っかかったのである。


 桜子相手ならさすがに対応に困ったが、クロマツさん相手なら大人げなく本気で叩きつぶせる。君は良いギルマスであったが、そのいじられキャラがいけないのだよ……と仮面の赤い人が俺の脳裏をよぎって行った。


 機体同士の手を組み、腰を低く、中に入っている俺はスタートの合図とともに一気に押せるように操縦桿を軽く握る。人間の構造的に筋肉に力が入っているとスピードは出せないようになっているので、あくまで軽く……VRMMOの肉体でそこまで気にする必要はあるかどうかは疑問であるが。


 冷や汗ダラダラのクロマツさんに、ガラス越しににっこりと笑いかける俺とアイリス。可愛いオオカミの精霊AIには悪いが、君のマスターがいけないのだよ……!

 めちゃくちゃ良い笑顔のララナさんがカウントダウンを始め――


「スタート!!」


 グンッ!! 操縦桿を一気に前方へ押し込み……ガシッ!! と力の均衡が一瞬だけ訪れ、その後――また一瞬で俺たちの一号機はクロマツさんの機体を倒していた。

 ……目を回しているクロマツさん達を見下ろしながら、押し倒した姿勢の機体を立たせる。


 う、うーん……勝利の余韻とか全くないな……量産化の暁には敵を蹴散らしてしまいそうだ。

 実験結果。2ランク差だと相手にならない……ってところか。


 その後、C+の筋力を唯一持つ龍角さんの機体とやってみたが、終始こちらが押したが、押し倒すには少々時間がかかったと言う所。

 全ての実験が終わった。


「2ランク差は相手にならない。1ランク差は勝負になるけど、抵抗は難しい。0.5ランク差は決着が中々つかないけど、上のランクが勝つ……てところか」

「有意義な時間でしたね。マスター」

「だな」


 アイリスと今回の実験結果を話しあって、とても有意義な時間だったと言うことを再確認した。


「アイリスの味の好みが中華と言うことが分かったのが一番良かったな」

「マスター!?」


 顔を真っ赤にして抗議するアイリスに笑いながら、冗談でなく本心だったことは隠しておく。うん、イベント戦が終わったら料理スキルと農業スキルに手を出してみようと思う。


 さて、今回わかって良かった最大のポイントはランク差……0.5ランクと言えど無視できないってところだな。専用機化は確かに修理できる人間が限られたり、搭乗者が限られたりするが、全てのステータスが0.5ランクアップは結構大きなポイントであろう。それに搭乗制限も緩和されるみたいだし。


 心残りがあるとすれば、装甲――防御能力についてだろうか? 今回はPVPモードで実験はしておらず、どんなに攻撃しても傷つかないが、もしそのモードでやっていたら、手を握りつぶせたりしたのだろうか?


 うーん……今回の共同実験でさらに仲間意識が芽生えたからな……それに、私のデュラハンがー!? とまではいかないが、売った機体も一応俺とアイリスの造った機体として愛着がある。別に進んで壊したくは無い。


「セイチさん。アイリスちゃん。お疲れさまでした。頂き物ですが、どうぞ」

「お、ありがとう」

「ありがとうございます」


 桜子が持ってきてくれたオレンジジュースでのどを潤していると、三ギルドのマスターが近寄って来た。

 手を上げて迎えると、向こうも疲れた顔を少しほころばせて手を上げてくれた。


「お疲れさまでした」

「お疲れ様っす」

「お疲れ様ー」

「お疲れ様」


 四者四様のお疲れ様をしながら四人のギルマスが集まった。今回の実験はそれぞれに利があるが、提案したのは俺なので深く頭を下げつつ礼を言う。


「今日は本当にありがとうございました。うちはまだ三人しかギルメンがいなくて、一人はリアルが忙しくてなかなかログインできないから本当に助かりました」

「いやいや、今日は有意義でしたし、楽しかったっすよ」

「ほんとにね―。まだネットに流れていない情報を探り探り探せる楽しみがあるのも初期組の特権みたいなもんだしね」

「ああ、この合同ギルドの実験は楽しかったな。第一ワールドの攻略組は、効率優先でそれもまた楽しいと言えば楽しいんだが……うむ、俺はこちらの方が好きだな」


 全員満足げに頷く。

 楽しくて気付かなかったが、既に夕日が草原をオレンジ色に染め上げつつあった。一時間半くらい過ぎていたのか?


 夜までもう間もなくだ。俺はこの実験の閉めに『量産化』について話そうとして、


「『千花繚乱』のギルドマスター。最後に一勝負いかが?」


 ララナさんのにやりと笑って言った言葉に機先を制されるのであった。




 次回『戦闘起動』。


 お気に入り登録、感想、評価ありがとうございます。またお待ちしております。


 それでは次回で。

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