第73話 走りの実験。色々考えて走れ!編
『セイチ専用デュラハン・千花繚乱カスタム』つまりは記念すべき一号機に乗り込み、操縦桿を握り、足をペダルに添える。
「起動!」
「はいっ!」
背後――火のコアが輝き、デュラハンに火が入る。少しすると光は落ち着き、デュラハンはアイリスの意志のまま起き上がった。
さて――生産者である天音さんがあそこまでやれたんだから、ランクが一段高い俺が負けるわけにはいかない……なにせ、彼らがデュラハンを操ったのはついさっきなわけだし……負けフラグっぽいな、これ。
少し離れた所にいる桜子に手を振ると、
「がんばってくださーい!」
とのお声が。頑張れなんて女子に言われたの何年ぶりだ?
よし、頑張ろう。空中に浮いているアイリスと顔を見合わせ、力強く頷き合う。
三機のデュラハンが一直線に並ぶ。俺とクロマツさんはデフォルトの鉄色。その間に輝く黄金のデュラハン。光の反射に目を細めると、コクピットからララナさんがドヤ顔してきた。なんでだ?
「さーん、にーい、いーち!」
桜子の柔らかくも良く通る声が、草原の風に乗ってくる。
「スタート!!」
ギッ!! 両足で一気にペダルを押しこんだ音が耳に入ったと思ったら、ドッッバァン!! と言う地面を踏み抜く音がそれをかき消して響いた。
断続的にコクピットが揺れる。景色が流れて行く――いや、断続的に飛ぶ。
それはもうあっさりと、他の二機をぶっちぎり俺はゴールを果たした。
一分後くらい後にララナさん。それにそこから一分後くらいにクロマツさん。
「えーと、アイリス? 俺たちのタイムってどのくらいだった? 後、走った距離を大体で良いからわかるか?」
「四キロ程度の距離を走りました。私たちのタイムは三分十二秒ほどでした」
ああ、龍角さんが走った時も五分かからなかったくらいだから、俺のタイムにプラス二分程度のクロマツさんのタイムはおかしくないと言うことになるんだな。
えーと? すると2ランク差――じゃないな。俊敏と瞬発力ともにはD+とBで1.5ランク差だから……
「大雑把に時速に直すと……俺たちが時速75キロくらいで、クロマツさんたちが50キロ程度か?」
「はい、そのようになると思います」
20キロの差……か。ちょうど1ランク差の俺とララナさんとの時速の差は計算したら約15キロほどだった。
「でも50キロかー……外から見たら偉い早く見えたんだけどな?」
機体を他の実験の邪魔にならないようにはじに座らせて、俺はシートベルトを外しながら、頭の上に乗ったアイリスに意見を求めた。
「地響きや、草と地面がはじけ飛ぶ迫力が凄かったですから」
「ふむ」
迫力に飲まれて冷静な判断が出来なかったということか。ちょっと広い道を走る車並みの速度――そう考えれば別に遅くは無いしな。
そして、高速道路とかでも無ければ出せない速度を出したのが、俺のデュラハンと言うことか。
「いやーまいったまいった! 全然追いつけなかった!」
「俺なんて周回遅れの気分すよー……」
「いやあ、はっはっは」
同じように降りてきたララナさんとクロマツさんの称賛の声に俺とアイリスは二人で頭を掻いて照れ隠しする。
二人で死ぬような思いまでして造り上げた一号機。それをほめられるのは俺たちにとっては何よりうれしいことだ。
ランクの差は大きい。それが良く分かった。1ランク差で時速10~15キロ程度の差が生まれたんだ。これはかなりの大きさだろう。
さて、敏捷と瞬発力のランク差は調べ終わった。残すのは筋力比べである。
こちらに駆け寄ってくる桜子とシロコに手を振ってこたえつつ、機体の性能が走力の決定的差と言うことを見せつけた俺とアイリスは満足げに笑ったのだった。
短いのは仕方ないのです……矛盾を生まないために、敏捷と瞬発力のランク分けの速度表を作ったりしていたので……
速度インフレが起きないように、人の歩く速度、人の走る速度、世界最速の男のタイム、ガン〇ムの最高時速、F1などの速度、果てにはスペースシャトルの速度まで調べたりしました……
ハイ・ゴーレムの敏捷ランクによる時速を決めて、さらにプラス補正の瞬発力のランク補正を決めて、さらに4キロを時速~~で走った場合の時間を求めて……あれ? 文章書いてたのに、なぜ算数や数学をやっているんだろうとふと我に返ったり……
需要があるかどうかは分かりませんが、その速度の表も作りなおして今日中に出したいと思います。
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それでは次回で。




