第71話 はじめての四ギルド会議。後編
さて、現実だったらニュースになってしまいそうな事故だったが、さすがVRMMOだ何とも無いぜ! 的な、VRMMOを超合金的な何かと勘違いしてしまいそうなほどに何とも無かった。
現実世界なら、まず地面に激突した衝撃でコクピットを覆っているガラスが割れて桜子とシロコにいくつも突き刺さり――てなところで想像はやめておいた。ウサギ伍長よりひでぇよなものはなるべく想像したくない年頃なのだ……
さすがに落ち着いていると言うか何と言うか……別に俺があの時、説教的なことを言わなくてもよかったんじゃ? と思うくらい、倒れてから機体を動かさず、じっと助けを待つ桜子。現実の車の事故なんかでも、ちょっとした衝突事故だったのに驚いてアクセルを踏み込んで……的な二次被害が多いため、桜子の素直に助けを待つという姿勢は大変よろしい。
さて、仲間的な意味合いでもデュラハンを細かく動かせる意味合いでも、俺たちが桜子たちを助けるのが一番良さそうだったので、機体の両脇に手を入れて持ち上げる。持ち上げきったところで、ガラス二つを挟んで桜子とシロコとご対面である。
桜子は申し訳なさそうにぺこりと頭を下げ、シロコも桜子の肩の上で申し訳なさそうに鳴いた。
俺としてはこうなるかもしれないとわかっていたのに、注意しておかなかったうかつさで罪悪感で胸が痛い。まるで、某国の姫様にうっかり銃を向けてしまい、軍曹に不覚を取ってしまうくらいの罪悪感だ。手榴弾を抱えて爆散しなければならないか?
そのままゆっくりと座らせると、ハッチが開いて桜子とシロコは怪我もなく地面へと降り立った。
――さて。奇しくもやろうとしていた実験の一つが終わった――いや、始まってしまったので、当初の予定をちょっと変える……前に桜子とシロコのフォローに行かないと。
さすがに今の時点では高性能な機体を貰ったのに、それを満足に動かせずに転んでしまったと言う事実は彼女らを深く傷つけてしまったのは容易に想像がつく。これはちゃんと説明しにいかないとな。
俺はそれぞれのギルドにちょっと待ってもらうように頼みつつ、桜子とシロコに説明するために機体から降りたのだった。
「なるほど。装備にある『装備適性スキルlv』に変わる『搭乗適正lv』があるかもしれない……と言うわけでしょうか?」
「ああ、そうなんだ。先に説明しておくべきだった……いや、言い訳になるんだが、まさかデュラハンでもあるなんてな」
座らせたデュラハンの足を椅子代わりにして、横に座った桜子にさっき起こった現象についての予想と予測していたことを話す。
搭乗適正lvはあると思っていた――が、それは第一世代型からだと思っていた。まさか試作機の第0世代型で機体性能が良すぎて初心者じゃ動かせないと言うことになるとは思っていなかった。
桜子とシロコには上手くぼかして話していないが、やはり鍵は精霊AIとの絆――言うなれば過ごした時間が重要みたいだ。生まれてから様々なことを凄い勢いで学んでいく精霊AIだが、その時間が短ければ短いほど、機体に操縦者の細かな動作をフィードバックさせるどころか、機体制御すらままならないと言うことになってしまう。
絆にしろ時間にしろ、そんな話を聞かされても面白くないだろうし、どちらにしろシロコが悪いと言う話になりかねないので、うまくぼかせた……と思う。桜子が意味深に微笑んでいるのを深読みしそうになるが、さすがにそこまで読み切れてはいない……はずだ。
さて。俺が絆(マスターと共に過ごした時間等)とほぼ断言してしまったのにはもちろんわけがある。
それは、桜子に渡した機体を今動かしているのが、女子会副ギルドマスターの天音さんだからである。
プレイヤーのスキルlvが関わるのなら、例えば『歩行スキル』が関わるかもしれないと俺は睨んでいた。
ならば、ほとんどマイルームかギルドルーム(ギルドメンバーが気軽に使える専用ルームで、ラムスを使うことで借りる、もしくは買うことができる)から動かず黙々と料理をしたり、農作業をしている天音さんが……
「…………ほいっ」
「よっ! いいよ! 天音! 日本一っ!」
ララナさんの酔っ払いの様な歓声に答えるかのように、Bランクの機体で踊ったりジャンプしたりしている。
彼女の歩行スキルはそこそこのはずなのに、あそこまで機体を自由自在に動かしている所から見て、歩行スキルがハイ・ゴーレムを動かす制限に関わると言う説は消えかかっていると見ていい。断言できないのは、実証データが少なすぎるからだ。
桜子は納得したように頷き、俺たちから少し離れた所でアイリスに慰められているシロコに聞こえないように、小声で言ってきた。
「申し訳ありませんセイチさん。どうやら私たちではあの機体を上手く使うことが出来ないようです……使えれば、明後日のイベントでもお役にたてると思ったのですが……」
「え? ああ、別にうちのギルドはイベントに命を賭けてるってわけじゃ全然ないからいいんだけどさ。でも良かったらもう一度乗ってみてくれないか?」
「? えっと……」
自分はともかくシロコが傷つくのはさすがに嫌だったのだろう。ためらう桜子に俺は今度は自分が支えるから……と頭を下げて頼む。
これは俺のギルメンであり、かつ今の段階でBランクのデュラハンを満足に動かせない桜子にしか頼めないことなのだ。
――そう。それは『専用機化』だ……! あれの説明はぼかされている効果があったはずだ。
専用機化。つまりは乗り手の特性に合わせて機体を改造すること。それにはきっと操縦のし易さも含まれているはずだ。
俺がそう説明すると桜子は真剣な顔で頷き、承諾してくれた。
上手くいかなかったら、二人に申し訳ない……と内心の複雑な葛藤を表には出さずに、俺は自信満々を装った。
お待たせしました。
後編なのに色々終わっていないのは会議であって、実験では無かったからという言い訳を伏せてターン終了! ……はい、申し訳ありません。
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それでは次回で。
誤字脱字修正しました。指摘してくださった方ありがとうございます。




