第67話 ハイ・ゴーレムのつるはし
「うーん……安定して動かせると言えば、安定しているけど」
「それでも鈍いですね」
「パワーもなー」
一号機のパワーとスピードに反応と器用さなら、野良ウルフにたやすく追いつき、そのすばしっこい動きにもあっさり対応できたが……まだDランクの機体に慣れていないとはいえ、数回は外す羽目になってしまった。
そしてパワー……地面に打ち下ろしたパンチがどうも威力に欠けている気がした。そりゃあ、地面はへこむが、へこみ方がぬるいと言うか……
まあ、それはBランクの一号機と比べたらと言う話だ。この四号機は確かに実用に耐えうるものだろう。ハイ・ゴーレムと巨大モンスターとの戦いと言う実戦を経験していないから、実戦に耐えうるものかどうかはわからないが。
後は……これと同じものを造って、パイロットのスキルlvがどのくらい影響するかの調査もしたいけど……それは他のギルドに任せるしかないかな。桜子はパイロットらしく戦闘系スキルをメキメキと上げているみたいだし、もういくつかのスキルは俺に追いつく……まあ、生産系スキルは手をつけていないので、ステータス的には俺の方がまだまだ上みたいだけど。しかし、そこまで計算に入れるとなると大体の憶測すらもし辛い。
低レベルのプレイヤーも高レベルのプレイヤーもいそうなギルドに頼むしかない……と結論をづけた所で、機体とともにハンガーに戻る。
「最初造った時には広々としていたハンガーも、四体並ぶと狭く感じるな」
「私は壮観だと思います」
「まあ、それもあるかな」
アイリスの意見もわかると言えばわかる。だが、売るとなると在庫の場所がどうしても必要になるからなー……
そんなわけで、
「『ハンガーの増築』をやってみよう」
「了解です。lv1にはFランク以上の全属性のコアが十ずつ必要です」
「地属性がギリギリだな……まあ、しょうがないか」
そしてハンガールーム全体が光り輝くと、今までのハンガーと向かい合うように反対側にハンガーが二つほど増えていた……って、二つかい!?
「ちなみに、lv2に必要なのは?」
「Cランク以上の全属性のコアが5つずつです」
うぐっ……今のところ、第一号機にすら使っているコアを二十個……いや、ビックスライムを倒せばすぐさま補給できるし……
結局使うことにした。
今度は三つ増えて、合計でハンガーは十になった。うん、これなら……
「売れ行きが悪かったら、まあ、しょうがないで済ませるんだけど、売れ行きが良かったら……」
「最低の素材ならまだしも、鉄鉱石とかとなると……材料が少し心配ですね」
風岩の塊から出る素材はクズ鉄、鉄、そして極稀に風のコアである。一枚で二つほどしか出ないのがネックだ。
だが、伐採と木工のスキルlvは満足いくまで上がった……
さて、ハイ・ゴーレム用の装備アイテム第一号のつるはし造りに取り掛かるとするか。あれ? 剣とかの方が良かったか?
まあ、そんな些細なことは置いておいて、俺は『鉄蜘蛛のノコギリ』を装備した。木工用生産アイテムはプレイヤーがノコギリ、精霊AIが金づちと釘の様だ。
さて……まずは木工からだな。スキルlv上げで何度も経験した木の板の光るラインを丁寧に素早く両断する作業。白い所は太めで、属性の光は細めだ……が、生産系アイテムに属性は無いので白い所を的確かつ早めに両断する。
次々に現れる木の板を両断していき、タイムリミット。次は鉄蜘蛛の外殻と鎌を使用しての鍛冶だ。基本に忠実かつ、素早く、力強く。
そして……ハンガーの機能で俺の技術の模範で造り上げた巨大なつるはしがハンガーに現れ……そしてアイテム倉庫へと消えた。
すぐさま第一号機に乗って、アイテムを確認する……使った素材は割と簡単に手に入る地の木材だが、鉄の部分は鉄蜘蛛の素材……『鉄蜘蛛のつるはし。ランクC』か。
さて、これで手に入る素材はどんなものなのか……トか考えている間に取りに行こう。実はもう何度か見てるんだ。ハイ・ゴーレムに乗った時から見えるようになっていた。巨大な白い光の粒子。
「風岩の所に行こう」
「はい。初めてのハイ・ゴーレムでの採掘ですね!」
「ああ!」
ハッチが閉まり、右手につるはしをもったハイ・ゴーレムが今、出撃する……!
……うん、しまらない。昔はつるはし一本で戦艦の装甲を破壊したり、ロボット撃破したすごい親父がいたと聞くが……俺はその領域にたどり着けそうもないらしい……いや、たどり着きたくはないけど。
次回、ようやく、ハイ・カードを手に入れることに。
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それでは次回で。




