第66話 これが噂の……Fランク・ハイ・ゴーレム?
用意したのは、クズ鉄、クズ糸(地の森の糸の木から手に入れた)、Eランクの水、Fランクのコアである。
「それではアイリス……これから俺たちが創る二番目の記念すべきハイ・ゴーレム製作に移りたいと思う!!」
「えーと……その……りょ、了解です?」
さすがのアイリスも戸惑っているようだ。無理もない。
伐採と木工のスキルを満足できるほどに上げた俺は、前からやってみたかったことをやりたかった。
すなわち!
Fランクのデュラハンを造ってみよう! と言うことである。無論、伊達や酔狂も含まれちゃっているが、それだけと言うわけでもない。
ランクでしかわからないハイ・ゴーレムの性能について、その最低値を知ってみたいと思ったのだ。なので――
「最近、コラムダさんどうしてる? そろそろ二週間あっていないことになるのか」
「私も最近は会っていません。とても忙しいみたいです」
「チュートリアルエリアはもう落ち着いていると思うんだけどな?」
……と言う雑談をして、一切手を加えないまま作業は流れて行き……
「見事にFランクだな……」
「手を加えていなのに、一応完成したことを逆にほめてあげたいです……」
はい、出来ました。全ての能力が最低値の第0世代型ハイ・ゴーレム『デュラハン』が。
早速乗り込み、草原に移動。
「よし、こけるの覚悟で動かしてみようか!」
「……いえ、むしろこけられるほど動けないかもしれません」
「?」
アイリスの言葉に疑問符を浮かべつつ、俺は操縦桿を動かしてパンチを繰り出してみた。が――
ギギギィ……と言う、関節が軋む音とともにゆっくり動く右腕。悲しいまでに遅い。さすがにこの反応の悪さや動きの悪さでは、いつものパンチの型はアイリスでも出来ないみたいだ。
なるほど。これは一度こけたら、立てないかもしれない。
アイリスがこけるほど動けないと言ったのは、アイリスが生まれたばかりのAIと違って、一度はBランクの機体を動かした経験と俺のことを良くわかっているからだろう。
関節の動きの悪さ等を計算して限界を設定しているから、俺がめいいっぱいアクセルを踏み込もうとも歩こうとしかさせないのだ。お互いのことが良くわかっていないプレイヤーと精霊AIなら、プレイヤーの無茶なペダルの踏み込みだろうと命令をきかないとと機体の限界を超えさせようとするから……
……ッて言うか、参考にならねえぇ!? あまりにも下すぎる。最初に造ったデュラハンのほぼ四ランク下……それだけでここまでの酷さか。
Bランクでも普段の身体より重く感じていたアイリスじゃ、この機体性能を俺よりひどく感じているかもしれない。
これじゃあどうしようもないので、ハンガーへ戻る。
『カスタマイズ』を使って、ワンランク上のEランクに……
「さっきよりはマシか?」
「はい」
ガシャン、ガシャンとゆっくりとならスムーズに歩ける。反応は相変わらず遅いが、その反応の悪さを計算に入れれば動けないほどではない……いや、アイリスが計算した上で俺が計算しないといけないレベルだとすれば、まだ実用に耐えうるレベルじゃないな。実戦に関しては言うまでもない。これが三ランク下。
専用機化して半ランク上の性能も確かめたかったが、誰かにEランクのレベルを肌で感じてもらう必要性があるかもしれないのでこのまま取って置く。
「さあ、三台目からは本気だ……!」
「了解です! マスター!」
まずはただでいくらでも手に入る水だけはCランクに変えておく。後は素材をそのままに――俺たちはハンマーを握った。
「さあ、行くぞ!!」
あれから二体ほど造った。クズシリーズ(命名)はスキルlvを活かしても、半ランクアップが限界だった。
そして次が鉄鉱石、野良クモの糸、スライムの体液、ビックスライムから手に入れたコアを使った言わば、量産体制版とでもいうものだ。
ビックスライムのコアは実はかなり余っている。一体倒せば五枚手に入り、そのカードからコアが出る確率は今のスキルlvなら二分の一には達しているため、部屋の二階を造れる程度には余っている。地のコアは少ないけど、属性に関する項目がないデュラハンのコアに使う分にはどの属性のコアでも関係ない。
全力で生産のミニゲームを終えて……出来たのが、
第0世代型ハイ・ゴーレム『デュラハン・千花繚乱カスタム』
『筋力。ランクD+』
『耐久。ランクD』
『瞬発力。ランクD+』
『俊敏。ランクD+』
『反応。ランクD+』
『器用さ。ランクD』
『居住性。ランクD+』
『魔力。ランクC』
『消費魔力。ランクD+』
これで専用機化を入れれば、Cランク項目が増えるんだけど……
でもランクだけを見れば、鉄鉱石が他のよりレベルが低いみたいだな。『装甲』と『関節』と言う、鉄鉱石だけで作る部分がダイレクトに反応する『耐久』と『器用さ』だけが半ランク低い。
鉄鉱石はEランクのを使ったからな……風岩の黄色い粒子から出るCランクカードからは鉄鉱石Cランクも出るけど……数は圧倒的に少ない。出せるとしてもDランクだな。
――まあ、ひと段落ついた。
三ギルドが出してくる素材も、まさかクズ鉄、クズ糸と言うわけではないだろう。彼らに言った「Dランクの機体なら安定して出せる」は、これでクリアーできた。机上の空論から脱出したわけである。いくら、自分達が持ってくる素材だから文句は言わないと言われても、その機体には千花繚乱と言うもう俺だけのギルドでは無い名前がつくのだ。名が傷つくような仕事はしたくは無い。
「さて。なにはともあれ、動かしみないとな」
安定して動かせる動かせる領域がDランクと聞いた。それがどの程度のものなのかちょっと楽しみだった。
コラリスの部屋などで言っていた、2ランクの差などをまだセイチ達は知っていないための実験回です。やっている本人たちはものすごい楽しいんだろうなー……
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それでは次回で。




