第59話 最後のフィールドへ
「お、本当にあった」
アイリスとともにハンガーへワープした俺は、デュラハンから降りずに鍛冶の生産メニューを呼び出して、今現在造れるもの見てみた。
――するとそこには『ハイ・ゴーレム用の装備』『ハイ・ゴーレム用の生産用装備』の欄が追加されていた。別に龍角さんの意見を疑っていたわけではないが、実際に見ると驚きである。
ふむふむ……本当に、ゴーレム用のつるはしとか、つり竿とかあるらしい……水竜の一本釣りでもできるんだろうか?
「マスター。追加情報が届きました」
「お、トリガーはハイ・ゴーレム用の装備を見るとか、知るとかそんな感じかな? 内容を教えて」
「了解です。巨大なモンスターや、ゴーレム用の道具で採取や採掘を行った場合に出るのは『ハイ・カード』と呼ばれる巨大なカードで、ゴーレム用のカードと言うことになるようです」
なるほど。巨大な敵や、巨大なものから採掘したりすると特別なカードが出ると言う認識で良いのか。
「重さが他のカードとは違うので、私が持つ場合は通常の五倍のスペースを取るため十枚が限界です。マスターが持つ場合も同じく」
「四枚が限界ってことかぁ……合計で十四枚か」
「そのかわり、ゴーレムのカードアルバムに入れられるので」
なんですと?
「ゴーレムにカードアルバムなんてあるの?」
「はい。他にもアイテムBOXがあり、そこにはハイ・ゴーレム用の装備やアイテムが入れられます。アルバム、BOX共にハイ・ゴーレムのステータスによって入れられる量が違うようです」
BOXの方は筋力、アルバムの方は魔力と消費魔力のステータスが関わるらしい。筋力はわかりやすいな、もの持てる力ってことだから。カードは……まあファンタジーの産物みたいなものだし、魔力で保存しているって考えればいいのか?
ものは試しとアイリスにハイ・ゴーレムのBOXとカードアルバムのウインドウを表示してもらう。
「アイテムBOXが……五で……アルバムが十七か」
「計算式はアイテムBOXがFで一、Eで二と言うようにランクアップごとに一ずつもてる量が上がるみたいです。カードアルバムは魔力と消費魔力のランクがFが一として0.5ランクアップごとに一ずつ上がるようです」
えーと、筋力がB+で実質Bと計算して五になるのか。魔力がC+だから、八として魔力消費がBだから九……合計で十七になるってわけだ。
その『ハイ・カード』だけを持つとしたら、アイリスと俺の十四とデュラハンの十七を足して、三十一枚……うん、そのカードがどんな素材をどの程度出すのかは分からないが、良い感じだな。
「マスター。ハイ・ゴーレムは手に装備しているもの以外は、例え生産系の装備アイテムと言えど問答無用でアイテムBOX行きの様です」
「あー……まあ、五個もあれば十分か」
盾と剣で両手を塞いだとしても予備に五個……ハイ・カードを入れる隙間として取っておくかどうかはその時の判断だな。
「っと、クロマツさんも言ってたけどもう夜だ……キノコの森は……まあ、彼らに譲るとして」
「きっと、死ぬぜぇ、クモの姿を見たものはみんな死んじまうぞぉ……的に、あの鎌に一人残らずやられてしまっていると思いますが」
「う……クズ鉄装備だしな……ステルスで一人死んでから、それからどう戦うかが問題だよな……」
うーん……せめて、ステルスを破れるようにカードの一枚でもインストールさせて上げればよかったかな? まあ、手元には今は無いからしょうがないけど。
「それではマスター。どちらへお出かけになりますか?」
「うん。実は決まってるんだ……それは――」
はい! やってきました初めての地の森。初めての地属性のフィールドである。デュラハンを置いてきたのは、何となく全てのフィールドの初めては自分の足で歩いたと言うどうでも良い満足感を得るためだったりする。まあ、今回乗ってきても。どうせ入口あたりで置きっぱなしだったろうし……
森と言う名は付いているだけあって、巨大な木が所々生えている。普通の木も生えているから、巨大化の影響が他のところと一緒で所々来ている感じ。
神秘的……幻想的な感じだ。ヒカリゴケが生えていたり、光る花や、蛍? みたいなものもあっちこっち飛んで、夜でもかなり明るい。
普通に走り回れる広さは確保されているので、一般の森とは少し感じが違う。まあ、ハイ・ゴーレムが動き回れるフィールドがないといけないしな。
……何より、森の中のあの独特な空気が再現されているのが凄い。匂いや、ひんやりした感じや、空気の美味しさ? みたいなものまで。
何だか子供の頃の冒険心みたいなものを思い出させてくれる場所だ。あの木の後ろはどうなってるんだろう……とか、大人になったらどうでも良い事が無性に気になるあの感じ!
さて、現役で子供のアイリスと言えば……その姿は見れずとも、俺の頭の上でわくわくしているのがわかる。微妙にうずうずしている振動が伝わってくるし。
「目的はイエロースライム、ビッグ・イエロースライムを倒していまだ手に入れていない地のコアを手に入れることだ……後はスキルの伐採を試すこと」
夜の間でしか、地のコアは手に入れられないだろうから、伐採――木こりのモノマネは後回しだが。
「――ま、でも、楽しみながら回っても罰は当たらないし。アイリスも効率優先じゃなくて、大きくなって動き回って良いぞ」
「……! いえ、私はそんな子供じみた真似は……」
「頼むよ。実ははじめてきた場所で、若干怖いんだ。アイリスが動き回って安全を確認してくれると助かる」
「……わかりました……ありがとうございます!」
ポンと大きくなって俺の目の前に降り立ったアイリスは丁寧にお辞儀して、嬉しそうに微笑みながら前方へ走って行った。
うーん……さりげなく気をまわしたつもりなんだが、バレバレの様で。ほんと、俺の見ていない間も人や他の精霊AIと関わって成長してるんだなぁ……ちょっとさびしいけどそれ以上に嬉しいからいいか。
巨大な木の巨大根っこを潜ったり、登ったり、木に実っていたリンゴを取って食べたりして、のんびり、けれど獲物を見つけた時は一撃で蹴散らしつつ、俺たちは森の探険を進めて行った。
その時話題に上がったのが、ギルドの話である。いや、別にギルドを創るつもりなど毛頭なかったのだが……このまま俺がカスタマイズしたゴーレムを売っていくとなると『セイチカスタム』と言う名が末永く残ってしまいそうなのだ……
そんな羞恥プレイには耐えられない! そこで考えたのがギルドを創ったらそのギルドネームを代わりにそこに入れられるらしいので、そのためにギルドを創ろうというしょうもない考え。
基本的に、メンバーは俺とアイリスの二人だけのギルドだ。プレイヤー一人でギルドが創れるシステムで良かった。さすがにギルメンになってくれそうなのは、後は香坂くらいだし。
後は名前だなー……人に売るハイ・ゴーレムに~~カスタムと消えない名を刻むのだから、それなりにカッコいい名前じゃないとな。
……さてどうするか。
次回、あらすじに書いてあるキャラの一人がようやく登場。
お気に入り登録、感想、評価ありがとうございます。またおまちしております。感想の返信はコラリスの部屋で行っているのですが……さすがに、本編でコラムダさんを登場させないといい加減まずいので、イベントが終わってからになってしまいますが、ご了承いただけたらなと思っています。
それでは次回で。




