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超番外編 ロボゲー・アナザーラインへようこそ! 3

 ロボオンと言うVRMMO内で造った俺の機体が、どうして異世界に存在しているのかはわからないが……最高の機体――第4世代型ではないが、それでもこの機体がここにあったのは戦争が始まった今となっては運が良かった方だと思う。


 この機体は実は第4世代型を造ってから製造した言わば趣味の機体である。第4世代型を造れるスキル、素材を使って全ての能力が『SS+ランク』の最高級品の機体を造ってみようと言う思いつきの。


 頭の中で思い浮かべていたのは、ジ○Ⅱとか、ハロ○ィン・プランであるが。

 俗に言うリアル・ロボット系の量産型は、いくら新型が強かろうと、全てのパイロットに配備しようとすればそれだけ金がかかるのである。


 最新型の車を買って、まだ壊れてもいないのに新作が出たからそっちに乗り換えるなんて言うのは、現実世界でも金を持っている人間の特権である。

 そこで出たのが改修とか改造である。今配備されている機体を改修や改造して、新型機を配備するのではなく、今ある機体をパワーアップさせて使おうと言う考え。


 ――まあ、結局は思い浮かべただけで。使っている素材は最高級のものだし、金に糸目をつけずに作ったという時点で俺とアイリスの趣味全開の機体と言うことである。言わば、ロボオタの妄想の産物だと思っていただきたい。


 つまり第1世代型最強の機体と言っても過言ではない。まあ、1世代違うごとに2ランクの能力差が生まれ、さらに第2世代型からは機体に属性付与による能力アップに、第3世代型はオプションパーツ装備と、それ以上の差はあるのだが。


 それでも全てが『SS+ランク』のこいつならば、相手が第2世代型の『A+ランク』でも無い限り、負けることは無い。

 装備している武装も第1世代型が装備できる中でも、最高のもの……しかもSS+ランクだしな。


「火が入ると、コクピットの内装も変わるのかこいつは……」


 ガンジさんの指摘はスルーしておくしかない。技術的な話になっても、VRMMOの機能だったんで……なんて説明できないし。

 全長六メートル程のこいつのコクピットは本来なら狭い。全面ガラス張りの第1世代型も狭いが、そこはガラス張りなので閉鎖感は出なかった。


 ――まあ、こいつは居住性も『SS+ランク』……使用者に合わせて調整してくれるシートにしたし、全周囲モニターにしたし、小アイテム倉庫とか小カードアルバムとか、本来ならアイリスが側にいれば不要なサーチモニター機能やロックオン機能……さらにそれらを俺の命令で使ってくれるコンピューターまで内蔵していたり……


「内装と言うより、広さそのものが変わっていないか?」

「あは、あははははは」


 スルーが厳しくなっても乾いた笑いで受け流し続けるしかない。そう、流し斬りが完全に決まったのにやり続けたあの人のように……!

 ガンジさんが言っているのは、カード化の技術研究によって出来たコクピット拡張機能――まあ、魔法の力で狭い空間を無理矢理広くしたと思っていただければ――と言う機能である。


 その機能のおかげで広くなったコクピットでは、俺のシートの後ろと両横にサブシートも付けれる。これは俺が命令すれば瞬時に展開されるもので、今は後ろの奴を展開してガンジさんに座ってもらっている。


「それに高速で移動しているとは思えん静かさが逆に不気味じゃ」

「あ、それは確かに……」


 よっぽどの衝撃でも無い限り、衝撃吸収してくれる居住性のSS+ランク。歩く時の衝撃も感じないと言うのはちょいさびしいものがある。

 ――まあ、今はそんなことを言っている場合では無い。戦争中だ。いくら、アイリスがいなくても操縦できるように改良してあるとはいえ、やはりアイリスがいるのといないとでは天と地ほどの差がある。


 早くガンジさんを届けて、アイリスに来てもらわないと……と! その前に!


「――伏せてっ!!」


 俺は二人の姉妹? を追いかけている第2世代型をモニターで発見後、さらに加速し、盾を構えてそのまま第2世代型を姉妹から引きはがすように突撃した!

 はね飛ばされる敵はそのまま後方の……あ……家……すんません! 人命優先でお願いします!!


 そのまま半壊した家から立ち上がった第2世代型の反撃をあっさり避けて、右の剣で右腕と肩の関節部分を切り裂いて、返す刀で脚の関節も斬り飛ばす。

 黄色の粒子と液体――魔力供給液を切断部から吹き上げて、敵は行動を停止した。魔力……ハイ・ゴーレムを動かす力が無くなれば行動停止に追い込めるため、二ヶ所ほど一気に切り裂けばこいつらのハイ・ゴーレムは魔力切れ――行動停止に追い込めるようだ。


 ……やっぱり性能は良くないな。Cランクいっているかいって無いか……いや、それ以前の問題だ。

 この世界には何故か『彼女たち』がいないのだ。それが技術の低下につながり、機体の弱さにもつながっている。


 本来なら魔力供給液が漏れだしても、瞬時に傷口を凍結させることはできるのにそれをしないと言うことは……帝国の機体にも『彼女たち』はいない。

 ――それが今は俺の戦闘にプラスに働いているのだから深く考えないで良いだろう。


 俺は姉妹の元へ機体を移動させて、その二人を回収。美少女二人……って、ギルドの美人受付嬢のお二人じゃないですか。


「千一さん!? あなたどうして――と言うかこの機体は!?」

「いやあ、ともかくシートに座ってください。俺は操縦に集中するんで、詳しい事はガンジさんに」

「……そこでわしに丸投げするのかお前さんは……」


 すいません。正直、アイリスがいない操縦はマジで神経磨り減るんです。ここが現実なためにどうしても……いや、交通事故? を起こさないとも限らないし、さっきみたいに戦争中だからと言って人様の家を壊していい訳じゃないしね。


 俺は混乱している大通りを迂回しながらも、驚異的なスピートで孤児院へ機体を走らせた。





「マスター!!」


 俺は姉妹とガンジさんを孤児院の庭に下ろすと、ハッチに身を乗り出していた俺に向かって飛びこんできたのをキャッチする。

 よっぽど心配だったのだろう……よしよしとその背を撫でつつ、下を見下ろすと、そこには……この危機的状況に至って、お互い思い合っているがために疎遠になっていた夫婦の絆がようやく元に戻ったようだ。


 何でも院長先生は孤児院を止めて、最後まで残った三人を養子として家族に迎え入れるのだとか。ガンジさんはバカ正直に子供たちに向かって名前を覚えていないことを告白し、そんなのでも父親でいいのかと言う問いに、あの悪ガキ達は抱きつくと言う直球で返事を返した。


 うん、良い家族だ。

 俺はその新たに生まれた家族と、姉妹が北に逃げると言うので、自分は何とか相手を追い払うために戦うことを告げた。


 止められたが、もめている暇は無いと俺と――そしてガンジさんの声にみんな黙って避難の荷物を持ち始める。


「なあ、センイチ……」

「はい?」

「その機体のマークの意味だけ教えてくれんか? それだけがこの歳になってもずっと気がかりでの……」


 左肩に大きく描かれた――黄色の花を咲かせるアイリスの花と、俺の『千』の字が白い色で描かれている……俺たちのギルドマーク。


「……いや、いい。お前さん達の姿を見てわかった……黄色の花のような少女を両手を広げて守っているマークなんだな……」


 俺と俺の背後にいるアイリスを見て、ガンジさんはそんな言葉を言った。なるほど。『千』が両腕を伸ばして花を守っているマークか……うん、そう言うことにしておこう。


 俺はガンジさんに力強く頷き、アイリスと共に機体に乗り込み、シートに座った。さて、とりあえず街に侵入した奴を倒す……!




 街中に侵入した敵機体は今起動しているのだけで十四機。外にはその倍の数ほどいるらしい。敵味方識別信号が無いので、アイリスの予測ではあるが。

 俺たちは縦横無尽に動き回って、相手を行動不能に追い込んで行った。相手が弱すぎる……相手の攻撃が直撃した所でほとんどノーダメージだろうけど、そもそも相手の動きが悪すぎる。

 パイロットの腕もあるだろう。生産者とはいえ、第一線で戦える俺の腕とスキルには遠く及ばない。そして――


「なあ、アイリス。やっぱり一ヶ月経っても一人も見つからなかったのか?」

「……はい。マスター……」

「そっか」


 そう。ここまで相手を雑魚扱いできるのは、相手に精霊AIがいない……粗末なコンピューターに機体制御を任していると言う一点が果てしなく大きかったのだ……





 街中の敵を蹴散らした俺たちは、南門に辿り着き、一気にその渦中へと飛び込んだ!


「『ギガ・スラッシュ』!!」


 ハイ・スラッシュの上位版のスキルを使って、相手の防御ごと一気に切り裂く。さすがに混戦状態で、相手の横に回り込むとか出来ず、ここまで消費を抑えていた魔力を存分に使う。


 ――まあ、魔力も消費魔力も共に『SS+ランク』なので、スキルを存分に使った所で五時間以上は連続稼働出来るだろうけど。


「アイリス! 警備隊の隊長格の人達に連絡! 俺たちは味方であることと――!?」

「マスター!!」

「『ギガ・ガードッ』!!」


 シールド・スキルを使うと言う完全な防御姿勢で俺たちは……吹っ飛ばされた。

 いや、正確には押され続けていると言う方が正しいか……! カーブを描いて、俺たちは城門から離れた場所まで押されて……相手を蹴り飛ばす!!


 主戦場から結構離れた荒野で俺たちは対峙する。


『――なるほど、お互い考えることは同じだったわけか』 


 相手の機体の外部スピーカーから声が出る。渋い声だ。

 まあ、そうだろう。相手にとっては、街に侵入した自軍を蹴散らしたこの機体さえいなくなれば勝ちだと思ったのだろうし。


 ――俺もこの戦場で『第3世代型』のこいつこそが最大の難敵だと思った。

 ここの勝負で勝てば、戦場の勝敗に影響することを俺たちはお互いに悟ったのだ。そして邪魔が入らない戦場に連れて行こうと思った敵と、その誘いに乗った俺がいた。


 さて……第1世代型と第3世代型の差は果てしなく大きい。何せ全ての能力が4ランク差もあるのだ。俺の機体は全てが『ランクSS+』だとしても、第3世代型はその4ランク下――『C+』で俺の機体と戦闘力はほぼ同じなのだ。


 ――しかも、相手は今やった低空飛行ながらも凶悪な突撃能力を生むオプションパーツ『ブースター』を装備している。

 さらに……この対峙した感覚……間違いない。エースクラスの腕前だ……精霊AIほどで無いにしろ高性能な制御コンピューターを積んでもいそうだ。


『我が軍の目的の一つである古代の第一世代型を操るもの……専用機化された機体を操るその技術も興味深い……どんなハッキング技術なのかな? 素直に投降してくれると助かるのだが?』


 ……自分が上だと思っているな……まあ、無理もない。俺も盾と最高のガード・アーツを使わなければ、大ダメージを負うと理解したからの先ほどの行動だ。念のためとかそういうものじゃない。


 相手の機体性能はB+に届いているかいないか……1ランクほどの差が生まれていて、さらに属性付与とオプションパーツ付き……正直、ぶが悪い。

 だが俺は……俺たちは落ち着いていた。命の危機があるこの状況で、アイリスはともかく、平和ボケの俺が落ち着いていられるのはもちろんわけがある。


 俺は外部スピーカーのスイッチを押して相手と会話することにした。


「あんたたちこそ、今すぐ撤退しないか? あんたじゃ俺は倒せないだろ?」

『ほう? 面白い事を言う。いくら、古代の第1世代型とて、第3世代型に勝てるものか!』


 相手の機体のブースターに火が入り、手に構えたスピアーの先端をこちらに向ける。

 慌てることは無い。確かに向こうの方が機体性能は上だ。他の奴らの第2世代型と比べることすらできないほど、奴の機体は強い。


 だが機体は負けても……他で負けなければいいのだ。


「アイリス……アレを使うぞ!!」

「はい、マイ・マスター!!」

『……!? 少女の声!?』


 500年の間に何が起こったのかわからない。そもそもVRMMOであったロボオンとこの世界のつながりも。

 わかることは俺にはアイリスがいて、あいつにはそれに変わる精霊AIがいないと言うことだけ……!!


「人と……!!」

「精霊と……!!」

「「機体の三位一体!!」」


 そう、これが最後にして究極の『操縦方法』!!――その名を――


「いくぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

『わけのわからん技術なぞぉおおおおおおおおお!!』





 ――後に。

 新大陸からの敵の尖兵に過ぎなかった帝国と連合軍の戦いが始まり、その戦いに多くの異世界人が協力したことが歴史書に綴られることになる……




コラ「え? これで終わりなんですか? 続きは!?」


リス「阻止しようとした人が何を言っているんですか……」


コラ「いえ、中途半端すぎるでしょ!? せめてボスと戦いましょうよ!?」


リス「残念なことに、このボス戦で使う多くの技は本編のラストで習得し使うものなので壮絶なネタバレになってしまうのですよ。詳しいことはこの後にやるコラリスの部屋でということになります」


コラ「ええー……まあ、コラリスの部屋がやるならよしとしましょう! 皆様、お気に入り登録、感想、評価ありがとうございます! 急に見てくれる人が増えて、私たちもうれしい悲鳴を上げております!」


リス「それでは次回もよろしくお願いします」

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