第55話 〇〇〇いっきまーす! は男の夢
出撃と言ったら、ハンガーからカタパルトデッキに――と言うことにはなりませんでした。
やはり人間の時と同じようにワープポイントに瞬間移動するという感じらしい。
……男の……いや漢の子の夢である所の「○○いっきまーす!」とかやりたかったなぁ……やりたかったなぁ……やりたかったなぁ……以下エンドレスワルツ。
俺の出撃パターンは108式まであるぞ! とまでは言わないけど、有名どころは全てやってみたかったのにこの仕打ち。俺の頬に一筋の涙が通過したとして、誰が俺を笑うことができるだろうか?
アイリスも――ふわふわ楽しそうに浮いていたのに、今は俺の膝の上で倒れている。ヤ○チャのポーズで倒れているということは、よほどの無念だったらしい……ヤ○チャしやがって……
まあ、ハンガーでずっと二人で泣いているわけにもいかないので、目の前に現れたウインドウから目的通り草原の入口を選択した。
いつものワープの様な浮遊感――不安定な感覚はあまりなく、それは座っているシートの安定感と握りしめている操縦桿のおかげなんだろうな……と思いつつ、光に包まれた。
――さて、ここでデュラハンのことについて話そうか。
歌姫がもたらしたハイ・ゴーレムの製作技術。それを持って最初にハイ・ゴーレムの名を冠するレベルギリギリで生まれたのがこのデュラハンである。
試作機――と言うよりは実験機と言う方が正しく、実戦をあまり想定していないため、コクピットは外からモニタリングしやすいように見ての通りガラス張りで、カメラやモニターなどの別にハイ・ゴーレムに積まずとも実験出来るものはなるべく排除されている。
装甲も第一世代型から超軽、軽、中、重、超重とか色々あるようだが、第0世代型のデュラハンにはそんな選択肢は最初から存在せず。問答無用で中のようである。まあ、ここは最初は平均を取っただろうから、文句は無い。
本来なら居住性のランクにあわせてコクピット積むことができるレーダーのモニターや、狙撃用スコープなどはどうやっても積むことはできない。
操縦方法も色々細部に渡って変更――簡単な所では、横握りの操縦桿を縦握りに変えたりできる――も第0世代型ではできない。
そのかわりと言っては何だが試作機らしく、操縦形態は基本的な三つを全て搭載しているらしい。
『通常操縦』――操縦桿やペダルなどで操縦者が大まかな動きを担当し、精霊AIが細かい所の動きを担当する操縦形態である。チュートリアルでコラムダさんとやったのがこれである。
『半思考操縦』――操縦桿やペダルを使うのは変わらないが、細かい所の動きを自らの思考で動かす操縦形態である。精霊AIいらずと思われるだろうが、思考を読み取るのが精霊AIなので、心がある程度通じあっていないと思う用には動かせない。
通常操縦は息が合っていないと、半思考操縦は心が通じ合っていないと土壇場の状況や細かい部分でズレを生んでしまうだろう。
そして最後が――
『思考操縦』――操縦桿もペダルも使わない操縦法であり、己の思考のみで動かす操縦方法だ。精霊AIと心が通じ合うのはもちろんこと、自らが乗っているハイ・ゴーレムのことを良く知っていないと歩くことすらままならない操縦方法の用だ。
コントローラで操作するロボゲーに一番操縦方法に近いのが通常操縦だろうな。あれだって、移動する方向にキーを押して攻撃ボタンを押すだけで、銃の撃ち方、歩き方にまで口出しできるものじゃないし。そう考えると、精霊AIに口頭で指示できる分自由度ははるかに高いくらいだ。
まあ、ロマンは思考操縦ですけどね! エ○ァとかユニコーンとかが脳裏によぎりますよね!?
まあ――そう言うのは、かなり難しくてすんなり出来ないものだけど……
「あれ? 結構うまく出来るぞ?」
そう。草原に出て、モンスターと戦っている人達の邪魔にならないように遠くまで移動した俺たちは、三つの操縦法を試していたのだが、きっと出来ないだろうと思っていた思考操縦もわりとあっさりと出来てしまった。
遠くに移動出来たことからもわかる通り、通常操縦には全く違和感が無かった。アイリス曰く、
「この身体より結構重たいですけど、関節もスムーズに動いてくれますし、全く問題はありません。マスターが高ランク機体になるように頑張ってくれたおかげです!」
とのこと。最近、この子は親を泣かせるような言動ばっかり……泣けるぜ。まあ、そんなことを言ってると、アウトブレイクに巻き込まれかねないのでここら辺で辞めておこうか。
そんなこんなで、半操縦形態の時も「マスターと私は一心同体。この程度造作もありません」とか……ぐっすん。嘘ついてるんじゃないかと、シャイ○ングガン○ムの登場の一通りの動きをやってしまってすいませんでした!
そして思考操縦――いや、結構楽にできた。さすがに最初は一回こけそうになったが、ゆっくり歩いたり、拳を突き出しているうちに機体の感覚? と言う物に慣れて行き、意外とすんなり動かせるようになって行った。重心が自分の体と違うことに気づければ、歩くのに苦労はしなくなるな。
他の操縦方法じゃアイリスに頼まないと出来ない――スペ○ウム光線のポーズとか一通りやって、操縦方法を通常に戻してもらう。
「さすがはマスターです。思考操縦にはかなりの集中力が必要だとのことですが……」
「うーん? 別に集中力がある方だと思ったことは無いけどなー……」
長女は1回読んだら全て暗記できる集中力の持ち主……いや、あれは集中うんぬんより頭の出来が違うんだろうけど。
「まあ、普段は通常操縦で良いんじゃないか? 他の二つは、紙一重の戦いをする時とか意外に出番は無さそうだ。うちはアイリスが優秀だからな」
「マスター……」
泣かせる発言返しでアイリスの涙腺にかなりのダメージ! まあ、泣かせるつもりは無いので追撃はしかけないけど。
さて……後やって置くべきことは……戦闘……かな。武器を持っていないから、ハイ・ゴーレムで戦うべき巨大モンスターとは戦わないけど。
そんなわけで近場に居た、野良ウルフをターゲッティング。
「くっくっくっく……モンスターがゴミのようだ!!」
「マスター、バ○スにはお気をつけください」
「ここ天空の城だったの!?」
アイリスの忠告に驚愕しながら、俺たちはあの足の速い野良ウルフにあっさり追いついて拳を振り下ろした。見事なオーバーキルであろう。ぺしゃんこになった地面に1枚のカードが遺された。
そのままカードはコクピット内に瞬間移動してきて、そのカードは――
「は、初めてのランクFのカード……?」
ど、どういうことだ?
セイチの集中力に関しては四回目のコラリスを読んでくれた人ならわかっていただけるかと。ものすごい集中力があるわけではなく、普通の人より普段の状態で集中力がわりと高いのです。
お気に入り登録、感想、評価、ありがとうございます。またお待ちしております。
それでは次回で。




