第50話 ハイ・ゴーレム作製計画 前編
食事、買い物、掃除を済ませた後、俺は再ログインした。
今回はアイリスはベットに横になっておらず、俺がいない間に精霊の世界で休まなかったのかな? と思いながら、テーブルに置いてある薬草のカードの束を見つけたので、笑顔で礼を言う。
「いつもありがとう、アイリス」
「イエス、ユアマジェスティ!」
「……せめて、マイロードにランクを落としてくれ……」
何を向こうで見てきたのか一発でわかる返事を聞き、俺は何とかそう返すので精いっぱいだった。
こう……小さな子が騎士の敬礼を取りながら、俺を皇帝扱いするのは何とも言えない背徳感? 申し訳なさ? と言うより罪悪感? みたいなものが襲っていたたまれなくなるぞ。いや、ネタと言うことはわかってますけどね? 人前でやられたら、俺の何かが終わってしまうので、そこら辺は後で注意しとこう……
アイリスが手に入れてくれた薬草のカードを解体し、倉庫にあまりに余りまくったグリーン・スライムの体液と錬金しポーションに変えて行く。
そこで気づいたことがある。どうやらポーションは高ランクになるごとに、量が減って行くようだ。
Fだと1リットル。E、Dだと500ミリリットル。Cは250ミリリットルになっている。それ以上は作れないのでわからない。
これは、設定ミスなんじゃないかな? と思った。だって高ランクになるほど飲む量が減るんだよ? 損な感じじゃないか……だが、ちょっと考えてその謎は解けた。
正直、現実の身体じゃないから一リットルを一気飲みした所で具合が悪くなることは無いため、この良さは気付きにくいが、戦闘中となれば話は別だ。
飲む量が減ると言うことは、飲む時間が減るのと同じだ。そうすれば、敵の攻撃に対してあまり隙をみせずにHP等を回復することができる。
そう考えると、多少苦くても水と薬草で作ったポーションの方が実用性は高いかもしれない。何せスライムの体液は炭酸飲料だ。一気飲みするにはちと辛い。まあ、Eランクの水と薬草のポーションは一気飲みしたら気絶しかねない不味さだったので湿地帯で少しでも良い水を取らないとダメだろうけど。
後、自分のスキルlvを見て気付いたことだが、生産で火属性付与のアイテムを造ると火属性魔法のスキルlvが上がるみたいなのだ。異様に成長が速い炎のスキルlvを見て気付いた。
つまり、魔法は戦闘で使うと上がりやすいのがパイロットで、生産で使うと上がりやすいのが生産者なのだ。
これだけ見ると、MP消費が無いマイ・ルームで生産出来る生産者の方が魔法使いプレイしやすいと思われるだろうが、もっと攻撃的な魔法や回復魔法などを覚えるためには杖スキルを上げなければならないため、そううまくはいかないらしい。杖スキルは言うまでもなく戦闘系スキルだしな。
まあ、そうとわかれば、火以外の属性も上げたいため色々やって置く。後、当然と言えば当然だが、グリーン・スライムの体液が風属性なため、風属性の付与がやりやすくなったのも発見と言えば発見だった。
そんなわけで、かなりの『ポーション。DかCランク。メロン・ソーダ味。風の加護(弱)』が出来た。やはり500ミリペットボトルと250ミリペットボトルじゃ量が全然違うな……普通に考えれば500ミリペットボトルが値段的には高いはずなのに、250ミリペットボトルの方が高い不思議さはVRMMOならではである。
――さて……錬金のlvも40を超え、残りは裁縫スキルである。
糸をもう少し集めてから……と言う考えもあったが、今は裁縫スキルlvを少しでも上げなければならない非常事態なのだ!
「野良クモのカードを解体――ついでにブルー・スライムのカードも解体しよう」
「イエス、マイ・ロード!」
……正直直そうかと思ったけど、マスター(ご主人様)と比べたらずいぶんマシな様な気がしてきましたよ?
それはともかく、夜のうちに倒したブルー・スライムのカードには夢と希望が詰まっているのだ。そして本当にそれらが詰まっているかどうかは――
「でたぁあああああああああああああああああああ!!」
「やりました! マスター!」
ランク・Fだが水のコアが出ましたよ!! すぐさまアイリスを連れて部屋の開いている所で、水属性の魔法を覚えた!! やはり風岩の塊ランク・Cから出たように、ランク・Cから低確率ではあるけど、十枚に一つくらいは出る様だ!
今回の儀式も火じゃなく水だったのでビビらずに済んだ。スキルlvは1だが上げ方も大体わかったし、徐々に上げて行こう。
覚えた魔法は『アクア・アップ』で、『HP・スタミナ・MPの自然回復量小UP』と言う物だった。わお、便利魔法と思ったが提示版で書かれていたのを見たのでそう期待はしていない。曰く、しょぼい……とのこと。まあ、強魔法が1レベルで覚えられるわけもないけど。
さて、お待ちかねの裁縫だ。
40枚ほどあった野良クモのカードを解体し、野良クモの糸を二百個ほど手に入れた。こう考えると解体のレベルが低かった頃は、一枚につき三つの素材しか出なかったのだから、結構な差が出るんだなぁと思う。
「裁縫開始」
今回現れるのは……針であった。初心者用では無く、彫金で作った鉄の裁縫針である。ランクはC。この装備でどこまで楽になるのかは分からないが、少なくとも初心者用の裁縫針より楽になるのは鍛冶と彫金の時に実証済みである。
いつも通りDランクの素材から使用してスキルlvを上げて行く。
野良クモのシャツ、野良クモのズボンがあった。他にも野良ウルフの毛皮を使った装備があったが、装備部位が鉄の装備品と被るので今は放っておく。
デザインは……うわあ、結構ある。色分けも。作る奴のセンスが問われる……と言うほどの量ではないが、人の趣味くらいはわかる量だ。
髪に合わせて青で良いかな。あまり目立つ色は好きじゃないし。
これ売る場合は、露店でサンプルを出して買いたい人の好みを聞いてから作るのがコスト的にもいい感じだよなー……設備造ったらマイルームに戻らないと高性能な品は出来ないだろうけど。
前回、やむを得ず外で錬金したが、生産はそう言うやむを得ない理由が無い限りマイ・ルームの方がいい。生産物のランクに+補正が入る設備を造ったらなおさらである。
まあ、そんな売れっ子デザイナーみたいな悩みとは一生無縁だろうから、俺はさっさと裁縫を開始する。
むむっ……布が現れて針で塗って行くのは予想通りだが、レベルが高い火属性でも結構小さな光なのでそこに通すのが……難しい……ぬぬっ……タイムリミットさえなければ高ランクは難しくないタイプのミニゲームだが……
俺とアイリスはちまちました作業に熱中しながら、裁縫のスキルlvを上げて行った。結構楽になったら、水の魔法lvを上げるために青の光を狙いながら。
そして、野良クモの糸がほとんど無くなり、スキルlvは20を超えた。
――よし。ここからだ。俺が思いついたハイ・ゴーレム作成計画は、この五枚のカードから始まるのだ。
『鎧の鉄蜘蛛。ランクB。土・水属性』から……
はい。いよいよ始まりましたハイ・ゴーレム作製計画が。
主人公の考えはいたって単純なものです。俗に言う狩りゲー好きな方ならおわかりと思いますが、強力なモンスターを楽に狩りたいなら強力なモンスターの素材で造った武器や防具が必要なわけです。さて、今、セイチが手にしているものは……
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